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 上から薄ぼんやりとした明かりが差し込んでいる。水の中に居るけれども息苦しさは無い。家族と一緒に居るときのような安心感と、ネージュに魔法をもらった時のように、活力が溢れていた。

 どうしてかは知らないが、ここが有りとあらゆる物を内包した原始の海である事を俺は知っていた。

 自分を認識するために自分の手を見ようとしたが、手は存在していなかった。

 そういや俺は皆と同じように液体なのか。解ってるつもりだったんだけどな。実感というのは認識とセットでは無いみたいだ。

 そこにある液体が父さんである事についても当然理解しているつもりだ。肉体は無いけれど、それは間違いなく父さんで、今も俺にほほえみかけている。

「父さん、ロリスが会いたがっている早く帰ろう。母さんも近くに居るんだろ?」

 父さんは首を横に振る。首なんて物は無いけれど、首という概念は原始の海でも存在している。

 父さんは俺に聖杯を見せる。

 聖杯は深紅に輝いていて、俺の知っているどの聖杯とも違っていた。

「俺はこんなの要らない! 父さん戻ってきてよ! 父さんが居ないおかげでロリスの性格がねじ曲がっちまったんだよ。今なんか俺を管理するなんて言ってるんだぞ! 昔は俺の後をついてくるぐらいだったのにさ! あんたの娘だろ! めちゃくちゃ可愛く育ってんだからな! 後、女神も居候していてこいつも美人だぜ! 帰ってきてくれよ寂しいんだよ!! 糞親父!!!!」

 自分でも何言ってんだか解らなかった。たぶん何を言っても今の心境を言い表すことはできなかったと思う。

 父さんは俺の心臓に聖杯を当てる。

 聖杯と自分が混ざり合っていく。俺は原始の海の中肉体を手に入れていく。骨が埋まれ、骨を取り囲むように筋肉のひもができあがっていく、それと共に各種の臓器が体に埋め込まれ、最後に、心臓の代わりに聖杯が埋め込まれた。

 体なんて欲しくない。

 父さん……

 徐々に息が苦しくなっていく。生まれるためには呼吸をしなければならない。

 世界を目指して俺は光へ泳いでいく。


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