表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/29

7

 Q:神に頼れないときは誰に頼るべきか?

 A:可愛い妹。

 そう言うわけで、可愛い妹にバスティア攻略法を伝授してもらおう。機嫌を取る為に今日の夕飯はロリスの好きなハンバーグにしてある。

 俺の出来るバスティア対策はすでにやり尽くした。後は運を天に任せよう(ネージュ以外でお願いします)。

 俺とネージュとロリス三人の夕食を食べた後、さりげなくバスティアの話題を出した。

「無理です。不可能です。あきらめてください。でも、大丈夫です。私は最後まで兄さんの味方です。そうしないとトドメを刺す役にはなれませんので」

 ロリスのおなじみ罵詈雑言も、まぁそうだよな。って感想が先に来たのであんまり罵詈雑言には思えない。

 勉強教えてくれるって言っても、一週間で学年トップクラスの魔法使いと決闘で勝てるようにしてください。なんて言われると思って無かっただろうからね。俺だってこんなこと頼むとは思わなかったよ。

「これではブラコン失格です。責任を取って、私も賭けの対象にしてもらいましょう……冗談です。私が死ぬと誰がお墓の管理をするのですか?」

「あたしと入れ替わりで賭の対象にしてもらう? そうしたらあたしがお墓の管理するよ」

「それは良いですね。兄さんと一緒に眠れます。……本当に冗談です。変な顔しないでください」

「お前のはたまに冗談に聞こえないから怖い」

「ネージュさんに頼むのは……すでにやったから私に頼むのですよね。どうせ女神以下の頼りにならない妹で申し訳ないです」

「なんか無いのか? どうやったらバスティアに勝てるだけ強くなれるんだ?」

「まずバスティア先輩に実力で勝つ必要は無いはずです」

 決闘に勝てば良いのだから勝ち方は何でも良いのか。極論を言ってしまえば、バスティアを時間内にアリーナに来させなければその時点で俺の勝利が確定する。

 もっともバスティアを拉致監禁する方がよっぽど難しそうに見えるけど。

「兄さんが考える犯罪的な行為で無くても良いのです。兄さんを強くするのではなくて、バスティア先輩の弱点を突いた戦いをすれば良いのです」

「つまり弱点を探すのか」

「そうなりますね。それぐらいなら私にも手伝えます」

「そういや弱点みたいなのあったな」

 ネージュが仮面を外して素顔を見せた時、明らかに動揺していたな。

 もしかして……

「バスティアは同性愛者か?」

 ネージュ見た目は美人だもんなぁ。そりゃドキマギしちゃうのはしょうがないよね!

「どうしてそうなるのぉ お姉さん悲しい」

 ネージュめ、わざわざ口で「しくしく」などとわざとらしく嘘泣きをしやがる。

「違うのか」

 考えてみればネージュはあの時だけ、仮面をつけていたんだよな。普段から変な衣装を着けているから違和感が一切無かったけど、他の衣装と違って仮面には顔を隠すって機能がある。

 んで今まで言動から考えると、仮面をつける必要があったんだよな……

「やはり同性愛者じゃないのか!?」

「同性愛から頭を外すべきです。そんなに同性愛が好きでしたらネージュさんと私が抱き合ったりするです。それで我慢してください」

 別に好きじゃないんだけどな。それに要望するまでもなくネージュは頻繁にロリスに抱きついている。

「まずはバスティア先輩の行動を調べるべきです」




 アリーナの壁面に男子生徒が吹っ飛ばされる。。

「これでは生徒を守れないぞ! ビチグソまき散らすコウモリの方がまだ強い。聞いているのか! 生ゴミ!」

 ぶっ倒れている男子生徒にバスティアは槍を突きつけて大声で罵倒する。

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

 バスティアに蹴り飛ばされながらな男は喋る。なおSMプレイではありません。

「聞こえ無いぞ。お前の口にケツでも詰まってるのか?」

「訓練ありがとうございます! バスティア様!」

 もう一度いいますがこれはSMプレイではありません。ところでこのサービスを受けるのにいくらの料金を払えばいいのでしょうか?

「噂には聞いていましたが本当に凄い訓練ですね」

 ロリスは台詞をメモっていた。俺に使う気ですか。使う気ですね。ご褒美です。

「そうだな」

 これは学園の治安維持を目的として作られた組織ノブレスの早朝訓練の光景だ。

 つまりお金を払わなくてもこのサービスを受けることができます。基本的には貴族じゃないと入隊できませんけどね。

 男子生徒の周りに何人かの生徒があつまり、治癒魔法をかけている。

「次のゴミ屑はどいつだ。バスティア リュシェールがゴミ屑をより良いゴミ屑にするためにシゴいてやる」

 その後十連戦ほど稽古をつけていたのだが、その合間一切攻撃を食らうこと無く圧倒していった。魔法の種類もまんべんなく使っており、弱点など全くなかった。

「内蔵を引き裂いてから文句を言え!」「魔法不能者の方がマシだ!」「お前の眼球は金玉か!」「年老いた売女みたいな声を出すな!」

 男も女も先輩も有りとあらゆる物事に対して、ありがたいお言葉の数々。ロリスのメモが止まらない。俺の興奮も止まらない(武者震いです)

「いいか! 今日こそは襲撃犯を捕まえる! 解散!」

 その一言で朝の訓練はようやく終了した。


 これだけ言葉遣いがきついと人がよりつかない……と言うことは無く、むしろ人が寄りつく原因とも言える。

 バスティアがクラスに戻るとクラスの女子がバスティアの周りを囲み出す。

「おはようございます。バスティア様」

 腰を九十度キッチリと曲げて挨拶をする女子生徒達。彼らの胸についているバッジを見ると、どの生徒も貴族であることが解る。中にはバスティアと比べて劣らないような貴族も頭を下げている。

「バスティア様この問題を教えてもらえませんか

「こんな事も解らないのか。授業をきちんと聞いているのか?」

 ため息交じりに語りながらもバスティアはペンを取り、問題を懇切丁寧に説明し始めた。

「俺もバスティアと同じ授業取って教えてもらうべきだったか?」

「ロリスの教え方が下手と言うのですか? それとも体にたたき込まれたいのですか? 勉強するたびに、トラウマを思い出すようになりたいのですか?」

「すみませんでした」


 授業中はノブリスの時とは対照的に行儀が良かった。言葉遣いがキツいと言う共通点はあるけれども、女の子が口にしてはいけない単語は無い。

 授業の休み時間にも人々がひっきりなしに尋ねてくる。

「バスティア様は今度の決闘でどのような戦いをなさるのですか?」

「いつも通りだ」

 でも一言二言交わすだけですぐに途切れてしまう。バスティアが自分から壁を作りあげているように見えた。

「やっぱりバスティア様はクールで素敵よね」

「えぇ、さすがリュシエール家ね」

 去って行く女子生徒達がひそひそと言葉を交わしていた。


 昼食は書類に目を通しながら一人で食べる。この時に誘いに来るような生徒も居なければ、自分から誘うような事もしない。

 すたすたと早足で生徒会室に入っていく。生徒会室は基本的に生徒会役員以外は立ち入り禁止になっており、昼食を食べるのにはもってこいだ。

「では私も監視の為に昼食を生徒会室で食べます。大丈夫です私も仕事が立て込んでいるときは生徒会室で食べます」

 そう言ってロリスは俺を置いて生徒会室に入っていった。


『ロリス、君の兄さんを決闘で殺す事になるかも知れないが許してくれ』

『いえいえ、兄さんがクズなのが全ての原因です。私に謝るぐらいでしたら私に殺させてください。それぐらいしか世間に謝る方法が思いつかないのです』

『考えておこう』

 以上ロリスの口から出てきた生徒会室での会話でした。

「本当は俺の事嫌いだろ……」

「兄さんは可愛い妹を信じてはくれないのですか?」

「信じたら殺されるんだけど!?」


 放課後になってもバスティアの忙しさは変わらない。

 放課後最初の仕事は会議だ。

 ネージュ派閥、正式名称はプレクス魔法学園レフォルム教ネージュ信仰委員会。それの定例会議である。

 そこでバスティアは議長として会議をまとめていく。

 バスティアの仕事はそれだけでは無い。生徒会では副会長だし、ノブレスの放課後特訓にだって顔を出さなければならない。

 日がそろそろ傾く頃にようやくバスティアの仕事が終わる。

 全ての用事が終わるとバスティアは他の生徒に凜とした態度でさよならを告げる。早足で歩いて行く姿は、こんな場所から今すぐ消え去りたいといっているように見えた。

「なぁこれ意味があったのか?」

 バスティアが皆から恐れられつつも慕われている事と、弱点なんてなさそうな事ぐらいしか解ってないぞ。

 あえて言うなら一日中仕事で時間がなさそうだなって事ぐらいだ。仕事が終わると言っても学内での仕事が終わるだけで、家にいくらか持って帰るみたいだし。

「ロリスの魔法の素晴らしさが解ったはずです」

 ロリスの魔法は確かに凄かった。最初から諜報活動する気だったとしか思えないラインナップだ。気配を消すのは当然で、足音を消したり、逆にそういった気配を作り出したり、嗅覚の強化や視覚の強化などなど、これなら何時でもスパイになれる。

「確かに凄いけど、何でそんなの覚えてるの?」

「兄さんを監視するためです」

「……」

「冗談です。それよりもバスティア先輩が動きましたよ」

 ……本当に冗談だよね!?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ