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 バスティア リュシェール 貴族院で議長を務めたフランツ リュシェールの長女であり現リュシェール家の当主でもある。魔法使いとしても非常に優秀であり学年成績七位だ。プレクス学園のネージュ派閥の党首であり、生徒会副会長でもある。

 もっと詳しいことをアンジェは語ってくれたけど、全然覚えられない。頭が悪いのもあるし、そんなことを聞き続けるほど俺の心は頑丈じゃ無い。退屈です。

 どうやったって勝てるわけが無い。決闘方法を今から大食い競争に変えてもらえたりしませんかねぇ?

 昼休み、情報どころか顔まで完全に割れていて、どこに行っても衆目を浴びてしまう。衆目に浴びずにどうすれば良いか考える事が出来てさらに、文句まで言うことの出来る場所。

 そうコルテさんの研究室だ。

 俺がノックをしようと思ったら、ドアが開き、コルテさんが顔を出してきた。

「来ると思っていたよ。さぁ入れ。そう怖い顔をするなよ」

 部屋は以前来たときと同じだ。部屋の汚さも同じだし。

「待ってたよ」

 ネージュが居るのも一緒だ。

「どうして自分が女神だって事を広めたんだよ」

「そんな怒った顔しないでよ~ あたし知恵の女神だよ! 聡明なんだよ! 超凄いんだよ!」

 何を考えると自分から正体をバラして皆を混乱させたあげくに、命がけの決闘まですることになるんだよ。

「もぅ、オーシュってば信用してくれなくて、お姉さん悲しい。

 説明するとね。ネージュ派閥からしてみれば、女神ネージュが存在しちゃうと権力が二つに分散しかねないの。今までの派閥のグループと、あたしを信奉する新しいグループ。だから噂だけ流して、あたしを信奉するような人間が出てくる前に、倒しておかなくちゃいけないの」

「決闘以外の可能性は考えなかったのか?」

 噂をもみ消したり、俺を暗殺したりとやりたい放題できる。噂を流しただけで、決闘に持ち込むなんてバスティア頼りの運任せだ。

「そこはバスティアちゃんの性格的な問題だよ。

 バスティアちゃんはここで功績をあげて起きたいって思ってるはずだよ。だから目立つ決闘ってスタイルを取るのは想定できるの。これで派閥の団結力も高まるからね。唯一の問題点は聖杯を賭けとして引っ張り出せるかどうかだったけど、案外うまくいってちょっとホッとしてる。さすがルブルちゃんね。言った通りの展開だったよ」

 ふぁさっと髪を手でもてあそびながらドヤ顔を決めていた。

 思いっきり墓穴を掘っていることにも気づかずにな!

「……今回の事ルブルが考えたのか」

 知恵の女神なのに作戦の立案他人任せかよ。

「ちがうもん! あたしも考えたんだから! ほら企画書だって!」

 空中から飛び出てきた紙の束、表紙には聖杯計画と言う文字とルブルの名前が書かれている。

「あぁルブルって書いてあるぞそれ」

「ち、ちがうの! これはパーティの企画書で」

 空中に次々といろいろな紙を取り出している。伝票から、ポストカードみたいなのまで、ついでにポストカードに書かれている人物は、コスプレ衣装と同じぐらい過激な服を着ていた。

「つまりルブルが考えたんだろ」

 知恵の女神が知恵の女神(笑)なのはこの数日間で知っているからな。他の女神が考えたって言う方がよほど話が通る。

「ひーどーいー! あたし神様だよ! 女神様だよ! 美人だよ! あたしだもん!」

 ちょっと涙目入ってる……

「大丈夫だよ。俺はお前を信じている」

「へ?」

 ぽかーんと口を開けられた。

「そ、そんな真剣に言われると、照れちゃう、かな?」

 俺が信じているのはこの女神様の駄目さ加減で有って有能さでは無い。

「でも、あたしってば凄いんだから信頼されて当然だよね♪」

 ネージュはふふんと笑顔を実験室に振りまく。本意は一切伝わって無いけど機嫌が直って何よりだ。

「今のところは予定通りなのか」

「うん。予定通りだよ。この決闘はオーシュを勇者にするためには必要なことなの。伝承は知ってるんでしょ」

 四大女神と契約した勇者は、聖杯の力を使い魔王を滅ぼし平和を取り戻し、東へと旅に出た。

 聖杯が必要って事か?

「聖杯が欲しいなら、ネージュが直接バスティアと決闘すれば良いじゃ無いか」

「それじゃあオーシュが強くならないでしょ。あたしはあくまでお助けなの、魔法少女に出てくるお供の獣みたいなのが私の立ち位置だから」

「思いっきり手を出してるように見えるけどな」

「先代の勇者君は、『お前が手を出すと面倒だから絶対に何もするな』なんて言っちゃうぐらい自立心高かったのになぁ……今回の事は神が与えた試練だと思って、試合応援するから頑張ってね」

 どうやら勇者様もこの女神様には手を焼いていたみたいだ。

「んな事言ったってどうやって勝つんだよ」

「あたしはすでにヒントを言ってるよ。あるいは言ってないことがヒント」

「んな回りくどい事言ってる場合か! お前だって命賭けてるんだろ! 人ごとじゃ無いだろ!」

「大丈夫オーシュなら解るよ」

 一週間後死亡が確定していると言うのに、どうしてそんなに晴れやかな顔が出来るのだか。ルブルに秘策を聞いているのなら、俺にも教えてくれよ。

「安心したまえ、オーシュ君にも勝ち目はある」

 コルテさんが俺に紙を飛ばしてきた。この間の簡易テストの時に使った物と同一の紙だ。

 バスティア リュシェール

 魔力C 魔力伝導性D 魔力耐久性D 魔力範囲性E 魔力凝縮性B 長距離魔力B

 どの部分でも俺の方が上だ。

「アンジェは学年七位と言っていたけど」

「この成績だけなら下から数えた方が早いだろうね。これはあくまで簡易的な判別方法だ。実際の実力とはまた変わってくるさ。それでもバスティア君はかなり差異があってね、ここまで差異があるのは珍しい」

「成績上なら俺の方が上って事か」

 確かにこれなら俺にも勝機があるのか?

「逆に言えばバスティア君は一切手加減をしないだろうね。彼女だって君の成績ぐらいは調べるだろうからね。固有魔法しか使えない素人と知っていてもこの成績では手を抜いてくるとは思えない。まぁ、私はオーシュ君に協力するつもりだ」

「本当か?」

「代わりに聖杯を貸して欲しい。私とアンジェは聖杯の研究をしていてね是非実物を触りたい」

 俺はネージュを見る。部屋の中にある本を手当たり次第につかんで表紙を見ている。

 聖杯をほしがっている割には反応が淡泊だな。まぁ良いか。つまり貸すぐらいならしても良いって事だろ。

「解った。でもネージュから借りてくれよ。ネージュも別にいいんだろ?」

「うん」

「じゃあオーシュ君頑張ってくれたまえ」

 コルテさんはもう興味が無いのか本に顔を向けた。

 結論。困ったときに神は役に立たない。むしろ困った事を持ってくる。


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