「さようなら」ではなく、「またね」。
「私は……私は……」
ひなは、初めて騎士の前で泣いた。
悪い子狩りの時は心の中だったので、騎士は見ていないのだ。
「ど、どうした!?」
「嬉しくて……騎士君、本当にありがとう。私、こんなに幸せな事ないよ……」
「じゃあ、一緒にサンタ見習いやってくれるのか!」
騎士の顔が笑顔になった。
だが、ひなは首を振った。
「……? ひな?」
「とっても嬉しいけど……」
―私ね、騎士君と一緒にいたことで、気付いたの。私、臆病だった。自分で勝手な考えをしていた。私だけが、不幸だったわけじゃない。皆、平等なんだ、って。皆が私の所を離れるんじゃなくて、もしかしたら私から皆の事を避けていたんじゃないかって。そう思ったの。
騎士君が私の事を考えてくれて、こうやって誘ってくれたことはとても嬉しい。でも私ね、もう少し、自分の力で頑張ってみようと思うの。少しでも皆と同じ生活を送ってみようって―
「そうか……ひなは、そう思ったんだな?」
「うん」
「ひなは、臆病じゃないよ」
「?」
騎士は、さし出していた手をひなの頭の上にポンと乗せ、やさしい顔で言った。
「ひなは、頑張るってちゃんと決断を出来たじゃないか。しかも、自分の気持ちを俺に言ってくれた。こんな「いい子」には、俺初めて会ったよ!」
「騎士君……」
「でも、俺はいつでもひなを見ているからな。ちょっとでも悲しい顔をしたら、俺がすぐ駆けつけるからな? さみしかったら、俺を呼べよ?」
「……有難う!」
そして、窓から見えた満月を見ながらこう言った。
「それじゃあ、帰らないと。じいちゃんに怒られちゃうしな」
「そっか」
ひなは、もうさみしいという気持ちはなかった。とても、すがすがしい気持ち。
「神楽坂ひな!」
いきなり騎士は、叫んだ。
「俺と、約束してくれ!」
「? 何を?」
「来年、また来る。ひなの事だから、絶対に「いい子」のままだと思う。だから、また悪い子狩りとプレゼント配り、一緒にしような!」
ひなは、大きくうなずいた。
「メリークリスマス!!」
そう言った後、騎士はサンタクロースと同じ一瞬で消えた。
「ばいばい!」
騎士が消えた所から、一枚の紙が落ちてきた。
ひなへ
俺と、約束したことを忘れないように、書いておく!
『絶対に来年また俺と仕事をする!』
それまで、サンタの服と帽子、失くすなよ!
騎士。
ひなは、今までで一番大きな声で、こう言った。ちょうど時刻は12時をまわり、部屋の時計がなった。
「騎士君!! メリークリスマス!」
私、神楽坂ひなは楽しい生活を送っています。
冬休みが終わり、学校に行って皆とちゃんと話しました。
原因は、言葉の行き違いでした。みんな私の事を受け入れてくれて、楽しい学校生活を送ることが出来ました。
騎士君とのお別れは少し辛かったですが、来年また会いに来ると約束してくれたので、もうさみしくはないです。
すべて、あの日の出会いが私の事を変えてくれました。それが、今年のクリスマスプレゼントだったのだと、私は思います。
私は空に向かって言いました。
「また、絶対に……会おうね!」
皆さんは、クリスマスに素敵な出来事がありましたか?
「贈り物」どうでしたでしょうか?これにて本編は終わりました。番外編は、後ほど更新します。
感想、意見などを書いて頂けると嬉しいです。
それでは1日遅れですが、メリークリスマス!