騎士のおじいちゃん登場!
クリスマスの前の日。
「よしっ! なんとか終わったな!!」
お疲れ~と伸びをして言う騎士。
「うん!」
嬉しそうにうなずいたのはひなだった。
悪い子狩りが終わり、一安心してひなの家でまったりしている。
「もう少しで、クッキー焼けるからね!」
オーブンからはいいにおいがしている。
「クッキー? なにそれ? おいしいの?」
不思議な顔で騎士が聞く。
「お菓子だよ。サンタさんが来る前には、こうやってお菓子を焼いてプレゼントを配っているサンタさんに差し入れを渡すの!」
「あぁ、それでおじいちゃんはクリスマスになると太るんだ」
はっはっは! とばかにするように笑った。
オーブンでクッキーが焼けたチン! という音と同時に窓ガラスからドタン! と音がして、誰か入ってきた。
「げっ! ウソだろ!!」
騎士はとても驚いて机の下に隠れようとした。だが、その時あまりに急いだせいで足を椅子にぶつけてしまった。
「いててて……! じ、じいちゃん!」
「お前は、こんな所でなにをしているんじゃ! と、言うより笑うな!」
赤い服に赤い帽子。
そこには、真っ白なひげをしたおじいさん―サンタクロースがいた。
ひなが思っていたより、痩せていた。
「あ!」
「君がひなちゃんだな。騎士と一緒に悪い子狩りをしてくれたそうじゃないか。有難う。君がいい子で本当によかった」
「は、はい!」
初めて見たサンタクロース。
―本物だぁ……
「それより騎士、ここでゆっくりしている暇はないぞ!」
「なんでだよ~! じいちゃん。俺、仕事頑張って疲れているんだよ~」
俺はもう、仕事はしないからな! 少なくても今年は! そう言う目をしている。
クッキーを皿にのせてひなは言った。
「まぁまぁ、サンタさんも騎士君もまずは私のクッキー食べてください! これから仕事なんでしょう?」
「お! そうだった! ほら、じいちゃん、食べようぜ! せっかくのひなが作ったクッキーって言うのが冷めちまう!」
―話を上手くそらせたな。
サンタクロースは思った。
「これから、いい子の所にプレゼントを配ってくる」
「ふぅん。で? どうせ、今年も連れてってくれないんだろ」
興味なさそうに言った。それより、クッキーの方に興味があるようだ。
「お前も来い」
騎士はクッキーと一緒に出てきた紅茶を飲んでいた所だった。
驚いて、子供みたいにふきだした。
「ゲホっ! ……冗談だろ?」
「本当だ。初めての仕事にしては、上出来だ。「いい子」も見つけ、ちゃんと悪い子狩りを成功させた。だから、連れてやってもいいぞと言っているのじゃ」
おいしそうにクッキーをほおばって言った。
「お、俺がプレゼントを配る……」
声が、少しふるえている。
「本当に、本当なのか!」
なぜ、こんなに騎士が興奮しているのか―それは、見習いサンタの夢だからだ。
見習いサンタはサンタクロースを目指す理由の大半は、「プレゼントを自分で配り、次の日に喜ぶ笑顔をみる」だからだ。
騎士も、その1人だ。
「だからそうじゃと言っているではないか! しつこいと連れて行かないぞ」
「行く! 絶対だぞ!」
―それじゃあ、騎士君とはこれでお別れなんだ。また、1人の生活に逆戻りかぁ……
騎士と一緒にいた3日間はとても楽しかった。誰かの為に料理を作るなんて、久しぶりだったからだ。
「よし。そろそろ行こうかの」
空は少しずつ暗くなってきている。
クッキーをひとつ残らず食べた後、「ごちそうさま」と言って立ちあがった。
「それじゃあね。騎士君……」
ひなは泣きそうだったが、困らせてはいけないと思い、笑って言った。
―さようなら……
すると騎士は首をひねり、こう言った。
「何言ってるんだよ」
そして、騎士は笑って答えた。
「これからプレゼントを配りに行く。聞いていただろ?」
「う……うん」
「ひなは、どうするんだ?」
今回の話はどうでしたでしょうか?感想、意見など、書いて下さいると嬉しいです。
さて、騎士のおじいちゃんこと、サンタクロースの登場です。
今日までに終わらせたかったのですが、騎士が「もう少し出るからな!」と私の頭の中で叫んでいますので、明日か明後日に終わらせることにします!