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記念日
「あともう少しで日付がかわっちゃうけど」
こたつに入って大好きな作家さんの最新話を読んでいたら、向かいに座った彼が、ひょいと体を動かして、パソコンの向こうから顔を覗かせて言った。
画面の右下の表示を確かめると、午前零時まで、あと二十分余り。
「うん、なに?」
「今日、結婚記念日」
「えっ。あ、あれ?」
慌ててカレンダーを調べれば、まさしくその日。
すぐにこたつを這い出て、彼の傍まで行く。
「えーと、これからも、よろしくね」
すっかり忘れていたことをごまかすために、にこーっと笑ってしおらしく言ってみる。
すると彼も、にこ、と笑って、手を伸ばして、さすさすと私の腰をさすった。
「じゃあ、はやく寝る用意して。お祝いは、日付が変わる前にしようか」
新婚〇年目の夫婦には、お気に入りネットノベルの最新話を読むより、優先しなければならないことがある夜がある。