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彼女と賭けとお菓子
「ポ・ツ・キ・イ」
夕暮れ時の住宅街の道を、歌うように一音ごと飛びはねて進む。彼女は最後にくるりと回って、こちらを向いた。
一緒にひらりとふくらんでは、見えそうで見えないところまでめくれあがっていた制服のスカートの裾も、ようやく重力に従って、すんなりとした足を隠す。
「それ、短すぎない?」
俺は思わず頭に浮かんだままを口にしていた。
「なーにー? 聞こえなーい! ま、いーや! 次! じゃーんけーん、ぽん!」
掛け声につられて慌ててグーを出せば、またもや俺は負けた。彼女はぴょんぴょんと四歩進んで、とうとう交差点の止まれラインまでたどりついてしまった。
「やった! 勝った! ポッキー独り占めー!!」
さっそくブレザーのポケットから、小銭を出し合って半分こにした一袋を取り出して、開けて食べ始める。
俺も彼女に自分の分を渡すべく歩み寄った。
「おー、さんきゅー! かわいそーな君には、私からの愛!」
彼女は一本だけ俺の口に差し入れて、満面の笑みを浮かべた。