表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『戦闘力5の三十路ギャンブラー、異世界で「命の代償」を強いる――最強の騎士も魔王も、俺の賭場からは逃げられない』  作者: 仁胡 黒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/9

第8話:名前を呼ぶ声、過ぎ去りし日の幻影

第8話をお読みいただきありがとうございます。

ついに明かされた本名と、イチカの残酷な正体。

そして、名呼び一つで崩れるエイトの鉄のポーカーフェイス。

おじさんと少女の絆が、単なる「迷い人同士」から一歩踏み込む回となりました。

カビ臭い禁書庫の静寂の中、俺は震える指先でそのページを捲った。

そこには、この世界の『天の声』が刻み込んだ、残酷なまでの真実が並んでいた。

【転移者登録:NO.000008】

氏名:黒田クロダ 栄人エイト

適性:賭博師イレギュラー

戦闘力:5

備考:システム外の論理による因果律改変を確認。修復不能のバグ個体。

「……バグ、か。三十路を過ぎて異世界にまで来て、不良品扱いとは泣けてくるぜ」

自嘲気味に呟き、俺は先頭の行に視線を落とした。

……そして、心臓が凍りついた。

【転移者登録:NO.000001】

氏名:八嶋ヤシマ 一美カズミ

適性:界境の生贄インターフェース

備考:『いち』から『きゅう』の数字を持つ者を束ねる楔。魂の磨耗率……限界。

「……生贄? 魂の磨耗……?」

最悪な言葉が並んでいる。イチカ――八嶋一美が、単なる迷い人ではなく、この世界のシステムを維持するための「消耗品」として呼ばれたことを示唆していた。

「ねえ、おじさん! いつまでその古本に齧り付いてるのよ。早く行こうよ、リクドウが起きちゃう前に!」

背後から、聞き慣れた明るい声が響く。

俺は慌てて名簿を閉じ、何でもないふりをして振り返ろうとした。

だが、その時。

「……エイト! 大丈夫だった?」

いつも「おじさん」と呼んでいた彼女が、不意に俺の名前を呼んだ。

その瞬間、俺の視界が歪んだ。

(……エイト! 大丈夫だった?)

目の前にいるイチカの声と、元の世界……現代の日本で、同じように俺を気遣ってくれた『一美』の声が、完璧に重なった。

街の喧騒、コンビニの明かり、そして隣で笑っていた彼女の体温。

失われていたはずの記憶の濁流が、胸の奥を突き上げてくる。

気づけば、俺の頬を熱いものが伝っていた。

「……えっ? ちょっと、おじさん……エイト? な、なんで泣いてるのよ!?」

イチカが、弾かれたように俺の顔を覗き込んできた。

彼女は自分の失言を必死に探すように、あたふたと手を動かす。

「ほら、いつまでもおじさん呼びもなんだからさ、ちょっと名前で呼んでみようかなって思っただけなのに! まさか、泣くほど名前呼びが嬉しかったの!? それとも、そんなに気持ち悪かった!?」

「……いや。……ああ、そうだな」

俺は袖で乱暴に目元を拭い、無理やり口角を上げた。

「……嬉しかったよ。最高に、な」

「も、もう! 30過ぎて泣かないでよ、びっくりするじゃない! 変なエイト!」

イチカは顔を真っ赤にしてぷいっと横を向いたが、その耳たぶまで赤くなっているのが見えた。

俺は、隠し持った名簿の重みを感じながら、彼女の背中を見つめる。

八嶋一美。

システムに定められた「生贄」の運命なんて、俺が全部ぶち壊してやる。

相手が世界だろうが神様だろうが関係ねえ。

俺は賭博師ギャンブラーだ。

絶望的な確率であればあるほど、逆転の配当オッズは高くなる。

「……行こうぜ、イチカ。次の勝負が待ってる」

俺は、決意を込めて歩き出した。

第8話、いかがでしたでしょうか?

一美イチカが抱える「生贄」としての宿命。

エイトが流した涙は、再会の喜びか、それとも彼女の運命を知った悲しみか。

名簿を手に入れ、王国の闇に触れた一行。

次回、第9話。監査免状の権限をフルに使い、エイトはイチカを救うための「禁じ手」を打ちに行きます。

新たな「数字」を持つ者も登場……? お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ