第7話:確定した死を、勝利へ書き換えろ
第7話をお読みいただきありがとうございます。
最強の守護者・リクドウとの決着。
「外れた数字が死に変わる」という恐怖のルール。
しかし、エイトはその恐怖すらも利用し、相手の「確信」を逆手に取り勝負します。
「……ふん。面白い空間だな。だが、小細工は私の眼には通じない」
リクドウが右目のモノクル――『六道眼』を静かに発光させた。
俺たちの背後にそびえ立つ巨大な回転盤には、1から36までの数字、そして唯一つの『髑髏』のマークが刻まれている。
【遊戯種目:『死線・ルーレット』】
【ルール1:交互に数字を一つ宣言する。回転盤が止まった際、選んだ数字に球が落ちれば勝利】
【ルール2:外れた場合、その数字の溝は『髑髏』へと上書きされる。以降、そこに落ちたプレイヤーは敗北(即死)となる】
「……ほう。外せば外すほど、死の確率が上がるというわけか」
リクドウが断罪刀の柄を弄びながら、冷酷に目を細めた。
(どのマスに止まる……? ……ほう、『髑髏』か。くくっ、最初から詰んでいるとはな)
リクドウの『六道眼』には、すでに静止した未来の盤面が視えていた。
運命の女神は、最初からこの不遜な三十路男を見放している。
「……いいだろう。先攻は譲ってやる。一投目で死ぬか、それとも無様に外して死の影に怯えるか。好きな方を選べ」
リクドウが余裕たっぷりに手招きする。
(勝った。止まるのは『髑髏』だ。……貴様の死は、今この瞬間に確定した)
俺は一歩前に出ると、巨大な回転盤を見上げ、小さく吐息をついた。
隣でイチカが「ねえ、おじさん、顔色が悪いわよ!? 無理なら逃げようよぉ!」と喚いているが、耳に入らない。
俺はゆっくりと右手を上げ、迷いなくその場所を指差した。
「……宣言するぜ。俺の選ぶのは、『髑髏』だ」
「……は?」
リクドウの思考が、一瞬停止した。
「……貴様、今なんと言った?」
「聞こえなかったか? 『髑髏』に落ちる方に全額だ。……さあ、回せよ」
俺が不敵に笑った瞬間、空間に轟音が響き、巨大な鉄球が回転盤の中へと解き放たれた。
リクドウのモノクルが激しく明滅する。
(ありえん……! 死のマスを自ら選ぶだと!? ……いや、待て。このゲームの勝利条件は……!)
リクドウの顔から血の気が引いていく。
鉄球は凄まじい速度で弾け、吸い込まれるように――最初から盤面に存在していた唯一の『髑髏』の溝へと突き刺さった。
【判定:命中。プレイヤー・エイトの宣言通り『髑髏』に落下】
【確定:宣言的中により、勝者・エイト】
「な……が、ははははっ! 負けだ! 俺の完敗だよ!」
リクドウが、力なく椅子に背中を預け、天を仰いで爆笑した。
「『当たれば勝利』。……例えそれが、本来なら死を意味するハズレくじであっても、当てちまえば『正解』になるのか! 盲点だったな……因果を視るこの眼さえ、貴様の狂気の前ではただの負け札だ」
「……ギャンブルの鉄則だぜ、守護者さん。配られたカードがゴミなら、ルールの方をねじ曲げる。……悪いな、アンタの『眼』が良すぎたのが敗因だ」
俺は、動けないリクドウの胸元から、静かに禁書庫の鍵を抜き取った。
「ひ、ひえぇぇ……死ぬかと思った……。おじさん、心臓に悪すぎるわよぉ!」
「やっぱりおじさん、最高にクレイジーね! 私の愛人候補、筆頭に格上げよ!」
背後で騒ぐ二人を無視して、俺は埃を被った書架へと足を進める。
そこには、この世界の真実――『転移者名簿』が眠っている。
俺は、一冊の黒い書物を手に取り、その重みを感じながらゆっくりと表紙を開いた。
「……さて。アンタは何者なんだ、イチカ」
そこには、俺の予想を遥かに超える、最悪で最高な真実が記されていた。
第7話、いかがでしたでしょうか?
相手の完璧な予知を逆利用し、「死の的中」を「勝利」に書き換える。
ギャンブラー・エイトの本領発揮です。
そしてついに開かれた『転移者名簿』。
イチカの正体、そしてエイトをこの世界に呼んだ「システム」の正体とは。
次回、第8話。物語の歯車が大きく加速します!




