第6話:特級免状の威力と、六つの瞳を持つ男
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禁書庫の守護リクドウ。
圧倒的な格上を前に、エイトの唯一の武器である「賭場」が展開されます。
「……ちょっと、おじさん。それ、本当に使っちゃうわけ?」
ギルドを出て数分。三奈が、俺の手元にある銀色のプレートを指差して、引きつった声を上げた。
「当たり前だろ。賭けで勝ち取った正当な報酬だ。有効活用しなきゃ損だろ」
俺たちが向かっているのは、この街の北側に位置する「貴族街」のさらに奥。一般人の立ち入りが厳しく制限された、王立図書館の『禁書庫分室』だ。
ここには、この世界の成り立ちや、異世界からの『転移者』に関する古い記録が眠っているという噂がある。
「いやいや! それ、特級監査官の権限じゃない! 街の検問をスルーするどころか、王国の機密に触れるレベルの代物よ!? バレたら即、死刑よぉ!」
「バレなきゃいいんだよ。それに、今は俺が『監査官代理』だ。文句があるならメリッサに言え」
俺は、門の前で槍を交差させた重装騎士たちに、無造作に免状を突きつけた。
騎士たちは一瞬、俺のあまりに貧相なオーラに鼻で笑おうとしたが……免状の刻印を確認した瞬間、直立不動の姿勢で敬礼した。
「失礼いたしました! 特級監査官殿! どうぞ、お通りください!」
「……ご苦労」
俺は、呆然とするイチカと三奈を引き連れて、重厚な石造りの門を潜った。
「……すご。あの怖そうな騎士さんたちが、一瞬で道を開けたわ」
イチカが感心したように呟く。
「権力ってのは、暴力よりも効率がいいんだよ。……さて、問題はここからだ」
図書館の奥、カビと古い紙の匂いが充満する回廊を進むと、一人の男が椅子に深く腰掛けて本を読んでいた。
男は、俺たちが近づいても顔を上げない。ただ、その周囲には、これまでの兵士たちとは一線を画す「密度の濃い殺気」が漂っていた。
「……免状は本物。だが、持ち主は偽物。面白い冗談だ」
男が本を閉じ、ゆっくりと立ち上がる。
身の丈は二メートル近い大男。だが、その動きは驚くほどしなやかだ。
右目には、六つの点が刻まれた特殊な魔道具のモノクル――『六道眼』が嵌められていた。
「俺の名はリクドウ。この禁書庫の守護を任されている。……さて、貧弱なネズミが、何の用だ?」
【個体名:リクドウ】
【職業:禁書庫番(元・処刑執行人)】
【戦闘力:1800】
【特記事項:対象の嘘を見抜く『六道眼』を所持。圧倒的な武力により、侵入者を文字通り『塵』に変える】
「天の声、サンキュ。……1800か。化け物だな」
俺は苦笑いしながら、免状をポケットにしまった。
この男には、権威は通じない。本能で「格下」だと見抜かれている。
「用件は一つだ。ここにある『転移者名簿』を見せろ。それだけでいい」
「……断る。それは王の血を引く者のみが閲覧を許されるものだ。……例え、その免状が本物であってもな」
リクドウの手が、腰に下げられた巨大な『断罪刀』へと伸びる。
「……なら、相談だ」
俺は、だらしない笑みを浮かべ、リクドウの『六道眼』を真っ向から見つめた。
「アンタ、その眼で俺が『勝てる』と思ってるか?」
「……。貴様の死相しか見えん。確率は、百対〇だ」
「いい数字だ。……じゃあ、その『〇』に賭けようぜ。俺が勝てば名簿を見せろ。アンタが勝てば、俺の首でもなんでもくれてやる」
俺が指をパチンと鳴らす。
【警告:固有権能『因果律の賭場』が発動しました】
【遊戯種目:『死線・ルーレット』を開始します】
世界の色彩が抜け、リクドウの背後の書架が、巨大な円形の回転盤へと変貌した。
「……ほう。空間そのものを書き換えたか」
リクドウの瞳が、初めて好奇心に揺れた。
「いいだろう。その命、ここで『断つ』としよう」
第6話、いかがでしたでしょうか?
新ゲーム『死線・ルーレット』。
リクドウの持つ『六道眼』がどう勝負に関わってくるのか。
次回、第7話。エイトの「運」と「ハッタリ」が、最強の守護者を翻弄します。
お楽しみください!




