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『戦闘力5の三十路ギャンブラー、異世界で「命の代償」を強いる――最強の騎士も魔王も、俺の賭場からは逃げられない』  作者: 仁胡 黒


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第2話:寿命をチップに、サイコロは振られる

第2話をお読みいただきありがとうございます。

異世界初の勝負『因果律チンチロ』、決着です。

戦闘力5の主人公が、いかにして「ざまぁ」を達成するのか。

ギャンブルという独自のシステムを用いた戦闘シーンを楽しんでいただければ幸いです。

ヒロイン・イチカのツッコミも、これから絶好調になっていきます。


【システムメッセージ:『因果律チンチロ』のルールを確定します】

無機質な『天の声』が、白黒に反転した空間に響き渡る。

【ルール概要:プレイヤーは交互にダイスを振り、出た『役』に応じて相手のライフポイント(LP)を削る。LPが0になったプレイヤーは敗北となり、賭け金を徴収される】

【プレイヤー:エイト。初期LP:100】

【プレイヤー:兵士ゼノス。初期LP:50(対象の残り寿命に換算)】

【特殊効果:この空間内において、魔法・スキルによる物理干渉、およびダイスの目の操作は一切禁じられる。純然たる『運』と『精神力』のみが勝敗を決する】

「な……残り寿命、だと……っ!?」

俺を突き飛ばそうとしていた兵士――ゼノスが、顔を蒼白にして絶叫した。

彼の頭上には、『LP:50』という数字が、まるで死刑宣告のように浮かび上がっている。

「ふん……たったの50か。案外、短い人生だったんだな」

俺は、自分のポケットから、現世で愛用していた年季の入ったサイコロを一つ取り出し、指先で弄んだ。

この空間では、俺の戦闘力は『5』のままだが、関係ない。

ここでは、暴力ではなく、確率が支配する。

「ふざけるな! 俺は王国の正規兵だぞ! こんな、わけのわからない魔法……ッ!」

ゼノスが剣を抜こうとするが、その手は空中でピタリと止まる。

『天の声』が淡々と告げた。

【警告:暴力行為による干渉は、因果律違反としてLPを10徴収します】

「ぐ、あああああッ!?」

ゼノスの頭上の数字が、『40』に減る。

同時に、彼の顔に一気に皺が増え、髪が白髪に変わった。

目に見える『老化』。

それが、このギャンブルの恐怖を、周囲の兵士たちに知らしめた。

「ひ、ひいいいっ! 悪魔だ、こいつは悪魔だ!」

「助けてくれ! 俺は関係ない!」

周囲の兵士たちがパニックに陥る。

だが、この空間からは誰も逃げられない。

「……さあ、チキって自滅するか、それとも運に賭けるか。選ばせてやるよ」

俺は、宙に浮かぶ巨大なダイスを見上げ、不敵に笑った。

「先攻は俺だ。……因果律レート全開オールイン!」

俺がサイコロを弄ぶ手を止め、宙に放り投げる仕草をする。

すると、呼応するように、宙に浮かぶ三つの巨大ダイスが、轟音を立てて回転を始めた。

「頼む……外れてくれ、外れてくれ……ッ!」

ゼノスが、祈るようにダイスを見つめる。

【判定:プレイヤー・エイトのロール】

巨大ダイスが、地面に激突し、爆発のような土煙を上げる。

土煙が晴れた後、そこに現れた目は――。

「……チッ。ピンゾロか」

【1・1・1】。

【役確定:ピンゾロ(トリプル・ワン)】

【効果:相手のLPに、現在のLPの50%のダメージを与える】

「な、なんだと……っ!?」

ゼノスのLPが、『40』から『20』に激減する。

彼はその場に崩れ落ち、老人のように震え始めた。

「……あーあ、惜しかったな。もう一押しだったんだが」

俺は、だらしない笑みを浮かべたまま、ゼノスを見下ろした。

戦闘力5のゴミが、王国の兵士を、指一本触れずに破滅の淵に追い詰める。

このカタルシス。……ギャンブルは、やっぱり最高だ。

「つ、次は俺の番だ……ッ! 俺が、俺が勝てば……っ!」

ゼノスが、震える手で宙を指差す。

【判定:プレイヤー・ゼノスのロール】

ダイスが回転を始める。

彼の残りLPは『20』。

もし、彼が強力な役を出せば、俺のLPが削られる。

だが、俺は知っている。

ギャンブルにおいて、恐怖に支配された人間は、決して勝てない。

「出ろ……っ! ゾロ目、出ろぉぉぉッ!」

ゼノスが絶叫する。

ダイスが静止する。

そこに現れた目は――。

【1・2・3】。

【役確定:ヒフミ(一二三)】

【効果:役なし。自身のLPを10微増させる】

「……は?」

ゼノスのLPが、『20』から『30』に増える。

老人のようだった彼の姿が、少しだけ若返った。

「……ぷ。く、はははははッ!」

俺は、こらえきれずに爆笑した。

「ヒフミかよ! 命がけの勝負で、健康増進してどうすんだよ! 面白すぎるだろ、アンタ!」

「な……なぜだ! なぜ俺は勝てないんだ!」

ゼノスが、絶望に打ちひしがれる。

彼には見えていない。

ダイスが振られる直前、俺が『天の声』のアナウンスをハックし、一瞬だけ『恐怖による出目補正』という隠しパラメータを、彼に付与していたことに。

「……さあ、遊びは終わりだ」

俺は、笑いを収め、冷徹な目で見据えた。

「次は俺の番。……アンタの残り寿命、全部徴収させてもらうぜ」

俺がサイコロを弄ぶ仕草をする。

ダイスが回転を始める。

【判定:プレイヤー・エイトのロール】

ダイスが静止する。

現れた目は――。

【4・5・6】。

【役確定:シゴロ(四五六)】

【効果:相手のLPを0にする(即死効果)】

「……あ」

ゼノスのLPが、一瞬で『0』になった。

彼の体から、光の粒子が抜け出し、宙に出現した『寿命コイン』へと吸い込まれていく。

彼は、老人の姿のまま、物言わぬ抜け殻となって地面に倒れ伏した。

【勝者:エイト】

【賭け金:兵士ゼノスの全寿命(寿命コイン1枚)を徴収しました】

【空間を解除します】

世界の色彩が元に戻る。

静止していた周囲の時間が、再び動き出した。

「ゼ、ゼノス隊長!?」

「何が起きたんだ……?」

倒れたゼノスを見て、周囲の兵士たちが騒然となる。

俺は、だらしない笑みを浮かべ直すと、呆然と突っ立っているイチカの方へ歩み寄った。

「……おい、イチカ」

俺は、倒れたゼノスを指差しながら、彼女に告げた。

「アンタを苦しめてた奴は、俺が『勝ち取った』。……今日からアンタの命は、俺のもんだ。文句ねえな?」

イチカは、俺と、倒れた老人の姿のゼノスを交互に見つめ、それから……。

「……なんでそんなものに命賭けるのよぉぉぉッ!?」

広場に、彼女の渾身のツッコミが響き渡った。

第2話、いかがでしたでしょうか?

『因果律チンチロ』では、単純な運だけでなく、主人公の心理戦(という名のシステムハック)が勝敗を分けました。

徴収した『寿命コイン』。これが今後、どのようなアイテムとして機能するのか……。

そして、イチカを「自分のもの」にしたエイトの真意とは。

次回、新たなヒロイン(?)登場です。お楽しみに!

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