第15話:ジャックポットの鼓動、王子の誤算
第15話をお読みいただきありがとうございます。
エイトの「運」とイチカとの「絆」が、システムの裁定すら味方につけました。
ナンバーズの力を合算し、絶対的な強者であるフォルシアン王子に、人生初の「敗北」を刻みつけます。
「……ふん。その薄汚れたコインが、貴公の全財産か」
フォルシアン王子が、冷ややかに笑う。
俺が掌に乗せたのは、かつて兵士から剥ぎ取った『寿命コイン』だ。
そのコインが、俺の意思に呼応するように激しい光を放ち、まるでブラックホールに吸い込まれるかのように、スロットの投入口へと一気に引き寄せられていった。
「ああ。……だが、こいつはただの金じゃねえ。……俺がこの世界で『生き残る』と決めた時に、最初に奪い取った運だ!」
俺とイチカの手が重なり、一本の銀色のレバーを強く引き下げた。
ガコンッ! という重厚な手応えと共に、三つの巨大なリールが猛烈な勢いで回転を始める。
【BET確認:『奪いし寿命』および『術者の命運』】
【判定開始:管理番号1および8による共鳴確率上昇を検知】
「……っ、エイト……リールが、速すぎて見えないよ……!」
イチカが俺の腕に縋り付く。
カジノのスロットに停止ボタンなんてない。リールが自らの意思で止まるまで、俺たちにできることは、ただ祈り、信じることだけだ。
「……見なくていい、イチカ。……俺たちの絆が本物なら、運命が勝手に図柄を揃えてくれる」
フォルシアン王子は、不気味なほど落ち着いた様子でリールを見つめていた。
「……無駄な足掻きを。数字の格、そして因果の強さは、本来私が持つ『4』が圧倒している。……偶然などに頼る貴公に、私の運命が屈することはない」
だが、リールの回転音が変わった。
シュルルル、という滑らかな音から、ズ、ズズッ、という「何か」に引かれるような重い音へ。
左リールが停止する。描かれていたのは、燃え盛るような紅い**『7』**。
続けて中リールが、激しく火花を散らしながら減速していく。
「……二つ。……リーチ!」
三奈が息を呑む。あと一つ。右リールが『7』で止まれば、ジャックポット。
だが、右リールは嘲笑うように速度を上げ、停止する気配を見せない。
「……ふむ。やはり確率は収束するようだな。……不揃いの数字で終わるのが、貴公ら相応の末路だ」
フォルシアンが勝利を確信し、一歩踏み出したその時。
俺の左手の『8』と、イチカの胸元の『1』が、これまでにない強烈な光を放った。
「……イチカ、今だ! 俺たちの『1』と『8』のナンバーの力を、あのリールに叩き込め!」
「……えいっ……!」
俺たちが重ねた手に力を込めると、紋章の光が奔流となって右リールを直撃した。
数字を合わせれば『9』――この世界における、一桁の数字の極点。
ドォォォォン!!
闘技場全体が激しく揺れ、右リールが「あり得ない位置」で強制的に停止した。
三つのリールに並んだのは、黄金に輝く**『7・7・7』**。
「……馬鹿な。今のは反則だ! 外部から介入するのは無しだろう……!? 認めんぞ、こんなデタラメは!」
フォルシアンが激昂し、叫ぶ。そのプライドを打ち砕くように、無機質な「天の声」が頭上に鳴り響いた。
【裁定:異議を却下。投入された『1』および『8』の因果律による干渉は、正当な命運の力と見なされます】
【判定:ジャックポット成立。管理番号000004『フォルシアン』へ、敗北のペナルティを執行します】
「……っ、ぐ、あぁぁぁ……っ!」
システムによる絶対的な強制力が、王子の足元を黄金の鎖で縛り上げた。
「……勝ちだぜ、王子様。……約束通り、俺たちにはもう指一本触れさせねえ」
俺は、崩れ落ちそうになるイチカを支えながら、勝ち誇った笑みを浮かべた。
スロットの払い出し口から、眩いばかりの『純粋な魔力』と、フォルシアンから奪い取った『通行許可証(因果の断片)』が溢れ出す。
これが、ギャンブラーの生き方だ。
力も金もなくたって、盤面さえ整えれば、王様だって引きずり下ろせる。
第15話、いかがでしたでしょうか?
「天の声」が王子の抗議をバッサリと切り捨て、神聖決闘の絶対的なルールと、エイトの知略の鋭さを描きました。
しかし、負けたとはいえ相手は第一王子。この「因果の断片」が何をもたらすのか。
次回、第16話。黄金の鎖に縛られた王子の前で、エイトたちが取る「次の一手」とは。
お楽しみに!




