第14話:天の声と「死」の審判
第14話をお読みいただきありがとうございます。
偽装が剥がれ、絶体絶命の危機。しかしエイトは、あえて「天の声」を介在させることで、王子を拒絶不可能なギャンブルの場へと引きずり込みました。
暴力が封じられた聖域で、戦闘力5の男が、最高権力者の運命を賭けの対象にします。
「……化けの皮が剥がれたな、ハッタリの魔導師」
フォルシアン王子の冷徹な声が響くと同時に、俺の右指の『魔導偽装品』が、耐えきれず粉々に砕け散った。
溢れ出ていた虚構の魔力が霧散し、後に残ったのは、どこにでもいる「戦闘力5」のしがない男の姿だ。
「……っ、エイト……!」
イチカが絶望に顔を歪める。背後の近衛兵たちが、獲物を追い詰めた獣のように剣を構え直した。
「……ああ、バレちまったか。……だが王子様、一つ勘違いしてるぜ」
俺は震える足で一歩前に出た。死の恐怖はある。だが、それを上回る「勝機」が、俺の脳裏でパチパチと音を立てていた。
「俺の魔力が偽物でも……俺が持つ『数字』の権能は、本物だ」
俺は、左手の甲に浮かび上がる『8』の紋章を、フォルシアンの眼前に突き出した。
瞬間。
俺の脳内に、そしてこの場にいる全員の頭の中に、無機質で絶対的な「声」が響き渡った。
【警告:ナンバーズ間の直接干渉を検知】
【管理番号:000008『強欲な博徒』より、管理番号:000004『冷徹な蒐集家』へ、神聖決闘を申請】
「……何だと?」
フォルシアンの眉が跳ね上がる。王族である彼ですら、この「天の声」の介入には抗えない。
「……王子様。あんたもナンバーズなら知ってるだろ。数字持ち同士の争いは、暴力じゃ解決しねえ。……神が用意した『賭場』で、どちらが正しい因果を持っているか決めるんだよ」
俺の背後から、漆黒の魔力が溢れ出し、倉庫の風景を塗り替えていく。
埃っぽい倉庫は、一瞬にして天まで届くような巨大な円形闘技場へと変貌した。そこは、勝敗が決まるまで誰も逃げられない「中立の聖域」だ。
【神聖決闘承認】
【選出種目:『命運スロット(デスティニー・スロット)』】
闘技場の中央に、天から降り注ぐ光と共に、重厚な装飾が施された巨大なスロットマシンが具現化した。
「……面白い。……まさか『8』の権能を、この私に対して直接発動させるとはな」
フォルシアンが不敵な笑みを浮かべ、剣を鞘に収めた。
「よかろう。暴力での解決を神が禁ずるというなら、その遊戯で貴公を絶望させてやろう。……条件を提示しろ」
「……俺が負ければ、俺の首と、イチカの『器』。……全部あんたにやる」
俺は、隣で震えるイチカの手を引いた。
「……だが、俺たちが勝てば。……あんたは今後、俺たちへの一切の干渉を禁じ、王都からの安全な脱出を保証しろ」
「……ねえ、エイト……私、怖いよ。……私、何もできない……」
イチカの瞳が、涙で潤む。
「……一人じゃねえ。……これは、ペアで回すスロットだ。……お前の『1』と、俺の『8』。……二つの因果を合わせりゃ、王子の『4』なんて鼻で笑える数字に変えてやるよ」
俺は、イチカと共にスロットの前に立った。
そこには、停止ボタンも、小細工も通用しない。
ただ一本の、命運を懸けたレバーがあるだけだ。
「……いくぞ、イチカ。……俺たちの、全ベットだ」
「……うん……っ! 信じてるよ、エイト!」
二人の手が重なり、冷たい銀のレバーを握りしめる。
フォルシアンの冷徹な視線が突き刺さる中、俺たちは魂の底から、そのレバーを一気に叩き落とした。
ガキンッ、という重厚な駆動音と共に、三つの巨大なリールが、運命を乗せて回転を始めた。
第14話、修正稿いかがでしたでしょうか?
「天の声」を仲裁役として登場させることで、ギャンブルの重みと必然性が一段と増しました。
二人で一本のレバーを引く『命運スロット』。
運命を委ねるしかないカジノスタイルのスロットが、二人の絆にどう反応するのか。
次回、第15話。回転するリールが、王子の冷徹な笑みを凍りつかせます。
お楽しみに!




