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『戦闘力5の三十路ギャンブラー、異世界で「命の代償」を強いる――最強の騎士も魔王も、俺の賭場からは逃げられない』  作者: 仁胡 黒


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第12話:一分間の静寂、手品の終焉

第12話をお読みいただきありがとうございます。

金も力も使わず、ただの「手品」と「ハッタリ」だけで王族から国宝を奪い取ったエイト。

ヒリつくような一分間を終え、ようやく手に入れたイチカの救済。

そして、二人の間に芽生えた確かな「絆」が、システムの深淵を呼び覚まします。

「……残り、三十秒だ。野良魔導師」


フォルシアン王子の冷徹な声が、静まり返ったホールに突き刺さる。

壇上に立った俺の前には、禍々しい光を放つ『空の魔力核エンプティ・コア』。

周囲を囲むオークション参加者たちの視線は、期待と、それ以上に「こいつがどう死ぬか」という残酷な好奇心に満ちていた。


(……クソ。心臓がうるせえな)


喉元まで競り上がってくる動悸を、俺は鉄のポーカーフェイスで押し殺した。

スキル『因果律の賭場』を使えば、この核を本当に安定させることも、爆発の確率をゼロにすることもできる。だが、それを使えば戦闘力偽装ブラフが解け、俺はただの「戦闘力5の不審者」としてこの場で細切れにされる。


「ねえ、……エイト……!」

客席でイチカが顔を真っ白にして俺を見ている。

その隣で、三奈が必死に彼女の肩を抱き、周囲に怪しまれないよう「流石はエイト様だわぁ」と偽りの称賛を口にしていた。


「……十、九、八……」


フォルシアンがカウントダウンを始める。

俺は悠然とした仕草で、魔力核に右手をかざした。

そして、現世の地下カジノで培った「指先の魔術」――スライト・オブ・ハンドを繰り出す。


俺は、隠し持っていた安物の魔力結晶(ニカの店でくすねておいたガラクタだ)を、袖口から指先へと滑らせた。

魔力核の光を遮るように手を動かし、あたかも「核から溢れる暴走エネルギーを、俺の掌が吸い取っている」かのように見せかける演出。


「……三、二、一……ゼロ」


フォルシアンの声が止まった。

会場全体が、文字通り息を呑んだ。

……だが、爆発は起きない。


「……ふむ。一分経ったが、何も起きないようだな」


フォルシアンがゆっくりと立ち上がり、腰の細剣に手をかけた。

冷たい殺気が、壇上の俺を射抜く。


「爆発も起きなければ、封印の魔力残滓も見えん。……貴公、私をたばかったか?」


絶体絶命。だが、俺は鼻で笑ってみせた。

「……おい。王子様。あんたの目は、上質な魔力を『無』に帰す高位術式を見たことがねえのか?」


俺は、指先に挟んでいたガラクタの魔力結晶を、わざとらしく粉々に握りつぶした。

パァン、という乾いた音と共に、微弱な光の粉が舞う。


「……爆発の『因果』は、俺が今、握りつぶして捨てた。……見てみな。その核の輝き、さっきより澄んでやがるだろ?」


実際には、俺が光を遮っていた手が離れ、核の輝きが元に戻っただけだ。

だが、戦闘力5000という虚像が、その些細な視覚的変化に「神業の封印術」という説得力を与えてしまう。


フォルシアンの目が、微かに揺れた。

「……無への還元……だと……?」


「不服なら、もう一度爆発させてやってもいいんだぜ? ……今度は、この会場の半分を消し飛ばす規模でな」


俺は不敵な笑みを浮かべ、魔力核を脇に抱えた。

これ以上ここに居れば、指輪の偽装限界が来る。


「……ここは退屈だ。イチカ、三奈。行くぞ」


俺は王子の返事も待たず、悠然とした足取りで出口へと向かった。

背中に突き刺さるフォルシアンの視線が、殺気から「底知れない怪物への警戒」に変わるのを感じる。


ホールを出て、暗い裏路地まで一気に駆け抜けた瞬間。

「……ふぅ、……さすがに無茶が過ぎたか……」

俺は壁に手をつき、溜まっていた息を吐き出した。

全身が、絞れるほどの汗で濡れている。


「エイト! 大丈夫!? ね、ねえ、どこか怪我してない!?」

イチカが駆け寄ってきて、俺の体をペタペタと触りながら確認する。その瞳には、さっきまでの恐怖が嘘のような安堵の涙が浮かんでいた。


「……ああ。なんとか、な。……約束のブツだ。イチカ、受け取れ」


俺は、手に入れた『空の魔力核』を彼女の手に押し付けた。

これ一枚で、一国の予算が飛ぶほどの代物。そして、彼女の命を繋ぐ唯一の希望。


「……ありがとう。……ありがとう、エイト」


イチカが核を胸に抱きしめ、俺を見上げる。

その時、俺たちの視線が重なった。

路地裏の暗がりに、微かな光が走ったような気がした。


俺の左手の甲、そして、イチカの胸元。

誰にも見えないほど淡く、けれど確かに――。

『8』と『1』の数字が、熱を帯びて共鳴を始めていた。

第12話、いかがでしたでしょうか?

「戦闘力5」の男が「5000」を演じ切り、最高権力者を煙に巻く。

まさにギャンブラーとしての真骨頂を描けたかと思います。

そしてラスト、ついに微かに現れた「数字ナンバー」の共鳴。

次回、第13話。手に入れた『器』をイチカに定着させるための儀式。

しかし、フォルシアン王子がこのまま黙って引き下がるとは思えず……。

追っ手の影が、エイトたちに迫ります!

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