第10話:虚飾の招待状と、戦闘力(ブラフ)5000
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二階堂(2)の知略を借り、ついに地下オークションへと潜入。
戦闘力5を5000に見せかけるという、まさに「命懸けのブラフ」が始まります。
そして、ついに姿を現した宿敵、第一王子フォルシアン(4)。
エイトのハッタリは、王族の鋭い眼光を欺けるのか。
「……なるほどな。一美の『魂の摩耗』を止めるには、その『空の魔力核』ってのが絶対に必要ってわけか」
二階堂の隠れ家。安酒の瓶が転がるテーブルを囲み、俺は名簿から得た情報を整理していた。
二階堂は、指先で器用に銀貨を弄びながら頷く。
「ああ。本来、この世界のシステムを維持するための膨大な負荷を、生贄であるイチカ嬢ちゃんがその身一つで受けている。……だが、その『器』さえあれば、負荷を肩代わりさせて彼女を切り離せる。……もっとも、そんな国宝級の代物が、今夜の闇オークションに出品されるんだ。正攻法じゃ手に入らねえ」
二階堂は、一枚の禍々しい紫色の招待状をテーブルに置いた。
「参加資格は戦闘力1000以上。……今のアンタがそのまま行けば、入り口の魔力センサーに引っかかって、一瞬で消し炭だぜ、エイト」
「……ねえ、エイト。やっぱり危なすぎるよ」
イチカが、俺の隣で不安そうに袖を引く。
「私のために、おじさんがそこまで命を懸ける必要なんて……」
「……おじさん、じゃなくて『エイト』だろ? さっき決めたばっかりじゃないか」
俺が少し茶化すように言うと、彼女は「……もう、こんな時に!」と顔を赤くして俯いた。
「ハハッ、熱いねぇ。……安心しな、エイト。現役時代、アンタの『ハッタリ』で何度俺のケツを拭いてもらったか忘れてねえよ。これを使いな」
二階堂が差し出したのは、無骨な鉄の指輪だった。
「**魔導偽装品**だ。……これをつけている間だけ、アンタの微弱な魔力波長を増幅し、外向けには『戦闘力5000』の猛者に見せかける。……ただし、効果は三時間。そして、アンタが自分のスキル……あの『因果律の賭場』を発動した瞬間に、偽装は霧散して正体がバレる」
「……つまり、一回もスキルを使わずに、オークションを落札して帰ってこいってことか」
「そういうことだ。……それと、もう一つ。今回のオークションには、第一王子・フォルシアン様がお忍びで参加される。……ヤツはナンバー『4』を背負う、王族の中でも特に冷徹な収集家だ。イチカの『器』を競り合うことになれば、文字通り国一つを敵に回すことになるぜ」
フォルシアン。名簿に記されていた、あの不穏な数字の持ち主か。
「……ふん、面白くなってきやがった。……行くぞ、イチカ。三奈。……最高に悪趣味なパーティーへの招待だ」
俺は二階堂の指輪をはめ、立ち上がった。
指先から、借り物の強大な魔力が全身を駆け巡るのを感じる。
外見は「深淵より現れし高位魔導師」。だが中身は、相変わらず戦闘力5のしがない三十路男だ。
王都の地下、欲望と金が渦巻く巨大な大広間。
仮面をつけた貴族や、血生臭い傭兵たちがひしめく中、俺は一歩も引かずにその中央を歩いた。
周囲の猛者たちが、偽装された俺の「戦闘力5000」に気圧され、道を開けていく。
「……ねえ、おじ……じゃなくて、エイト。心臓の音、こっちまで聞こえてくるよ?」
イチカが耳元で小さく囁く。
「……当たり前だ。……これが、ギャンブラーの生き甲斐なんだよ」
俺は、壇上の競売人が掲げた『空の魔力核』を冷徹な目で見据えた。
その瞬間、会場の空気が凍りついた。
豪華な貴賓席のカーテンが開き、銀髪の青年が姿を現したからだ。
「……ふむ。我が国に、これほどの魔力を持つ野良の魔導師がいたとはな」
第一王子、フォルシアン。
その透き通った瞳が、真っ直ぐに俺――戦闘力5の虚像を見据えていた。
第10話、いかがでしたでしょうか?
イチカの「おじさん」と「エイト」の呼び方の揺らぎが、二人の親密度を物語ります。
スキルを一度でも使えば即終了という、ギャンブラーにとって最も過酷な条件下での心理戦。
次回、第11話。ついにオークション開始!
フォルシアンが提示する「法外な価格」に対し、一文無しのエイトが繰り出す逆転の交渉術とは。
お楽しみに!




