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『戦闘力5の三十路ギャンブラー、異世界で「命の代償」を強いる――最強の騎士も魔王も、俺の賭場からは逃げられない』  作者: 仁胡 黒


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1/6

第1話:チキった瞬間に、人生は終わる。

はじめまして。

一人の男が、過去の後悔を抱えて異世界で「賭け」に挑む物語です。

ステータスがすべてを決める世界で、数字と心理だけでのし上がる。

そんな大人の戦いを楽しんでいただければ幸いです。

挿絵(By みてみん)

「戦闘力、たったの5か。……ゴミめ」

石造りの広場で、豪華な鎧を纏った騎士が吐き捨てた。

彼の前にある水晶板には、俺――黒田栄人くろだえいとのステータスが非情な数字で刻まれている。

【名前:エイト】

【年齢:30】

【戦闘力:5】

【スキル:未発動】

周りで見物していた兵士たちから、容赦のない嘲笑が浴びせられる。

「ひでえな、農民の子供の方がまだマシだぜ」「30にもなってそのザマかよ」

……ああ、全くだ。言い返す言葉もない。

現世でもギャンブルに明け暮れ、借金を重ね、挙句の果てに――。

俺は、自分の震える指先を、ポケットの奥でぎゅっと握り締めた。

(……二度と、逃げねえって決めたんだ)

その時だった。

広場の隅で、汚れた服を着た少女が兵士たちに囲まれているのが見えた。

「おい、この娘。不法入国の疑いがある。連行して『精査』してやれ」

「や、やめてください! 私はただ、道に迷っただけで……っ!」

少女の悲鳴が耳に刺さる。

彼女の顔を見た瞬間、俺の心臓が、嫌な音を立てて跳ねた。

喉の奥が焼けるように熱い。

ありえない。あいつは、あの時、俺の目の前で。

だが、目の前の少女――イチカと名乗った彼女の面影は、俺の過去にこびりついて離れない『八嶋一美』と、あまりに酷似していた。

「おい、おっさん。何見てやがる。邪魔だ、どけ!」

兵士の一人が、俺を突き飛ばそうと手を伸ばす。

俺は動かなかった。

逃げれば、またあの日と同じになる。

脳裏に響くのは、あのストーカーの嘲笑と、引き金が引かれる音。

「……おい」

俺は、だらしない笑みを浮かべたまま、兵士の目を見据えた。

「強いほうが勝つ? ……違うな、チキったヤツが負けるんだよ。……なあ、アンタ。命、賭ける勇気あんのか?」

その瞬間、世界の色彩が反転した。

【警告:固有権能『因果律の賭場ディバイデッド・ポーカー』が発動しました】

【対象:兵士ゼノス、および付近の全人員を強制収監します】

【遊戯種目:『因果律チンチロ』を開始します】

無機質な『天の声』が、広場全体に響き渡る。

周囲の兵士たちが武器を振るおうとするが、その動きは空中で静止した。この空間では、暴力は意味をなさない。

「な、なんだこれは!? 体が動かん!」

「ほー、それでいいのか? お前の破滅の音が聞こえるぜ」

俺は、宙に出現した三つの巨大なダイスを見上げ、不敵に笑った。

「さあ……ショバ代は、アンタらの『全寿命』だ。賭けようか」


第1話をお読みいただきありがとうございます。

主人公の名前「栄人えいと」は数字の「8」。

ヒロインの「イチカ」は「1」。

この数字が何を意味するのか……それは物語が進むにつれて明らかになっていきます。

次回、異世界初の勝負『因果律チンチロ』決着です。

お楽しみに!

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