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日ノ本元号男子  作者: 安達夷三郎
第八章、戰場
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五十四話

―――大厄災から数年後、銀座。

オシャレな雰囲気のお店に足を運ぶと、すでに懐かしい顔ぶれが揃っていた。

店内は落ち着いたトーンで統一され、白とグレージュを基調にした壁が柔らかな光を受けている。

天井から下がるガラス製のペンダントライトは、ほんのりと灯されている。

木目のテーブルは角が丸く削られ、触れればすべすべとした質感が伝わってくる。

「ここ、俺の息子の店だから良かったらヒイキにしてよ」

健太が笑いながら息子さんを紹介する。

「どうも…」

ペコっと頭を下げる息子さん。

父親(健太)と違って大人しそうな雰囲気の青年だった。

「前会った時はこんなにちっちゃかったのに、あっという間で怖いわ人生」

大人っぽくなった朱里がグラス片手に話す。

「健太が結婚できたことに驚き」

「おい!」

「前に集まった時は五年前だっけ?そりゃ老けるよな〜……」

「朱里と美空だけ変わんねぇけど」

「あー、現代の技術フル活用してるから」

「私はまぁ色々と」

朱里と肩を組みながらピースする。

「いや〜、みんな凄いよな〜………」

しみじみと蒼真が言うと、健太が「お前だって名の知れた社長様じゃん。地方の工場を一代で広げてさ〜」と軽口を叩いた。

「よっ、工場長」

「今度は店に社員を連れて来てくれよ〜」

「いや、俺はただの三代目だよ。好景気のおかげ」

「和希は今ゲームプロデューサーしてるんだって、最愛のゲーム会社の」

「それ知ってる!」

「あいつすげぇな!」

そんなことを話していたら、カランコロンとお店のドアが開き、二人の男性が入って来た。

「……あ、やっと来た」

朱里がちらりと視線を向ける。

一人はスーツをビシッと着ていて、もう一人はラフなコート姿で、手には紙袋を下げていた。

「おー、委員長と和希じゃん」

「我らが出世頭の委員長議員が来たぞー!」

「誰が委員長議員だゴラ」

「口の悪さは変わってなかったね」

「それな」

「すげぇ!飲み会に現役議員が来るなんて。自慢しちゃお」

椅子に腰掛ける委員長に息子さんがサインペン片手に近づく。

「あの、うちの壁全体にサインください」

「それはちょっと……」

「国会会議?リアタイで見れるやつにイインチョーが出てたら爆笑しながら見てるわ」

「分かる」

「マジかよ……」

委員長が頭を抱えた。

「和希は今何のゲーム作ってんの?」

「信玄ちゃんが天下統一目指すやつ」

「それはまた……独特なゲームだな」

「独特って言うな」

和希はむすっとしながらも、どこか誇らしげに胸を張った。

「ちゃんと歴史監修も入ってるし、戦略要素も硬派だぞ?」

「なお推しへの愛は隠す気ない」

「戦プリがサ終しそうになった時、めっちゃ上と掛け合って、自分がプロデュースするからってことでサービス続行したって聞いた時、尊敬したわ」

「今何周年だっけ?」

「今年で三十五周年だ!」

和希は指を三本立ててから、さらに指を二本足しそうになってやめた。

「古参ユーザーがプロデュースしてるって、すげぇな、おい」

ふと、思い出したように健太がニヤニヤしながら言った。

「委員長には感謝しかないわー。営業成績の半分は同級生ネタで会話広げてるし。『鷹宮(たかみや)議員の学生生活が知れるお店』として人気テレビ番組が取材しに来たからな」

「このオッサン、バリバリ営業に使ってますよ」

息子さんが健太を指差す。

「だからしばらく委員長議員って党内で言われてたのかよ……」

話が一段落したところで、カウンターの奥から息子さんが姿を現した。

「お待たせしました」

テーブルに次々と料理が置かれていく。

白い皿に盛られた前菜は、彩りよく並んだ季節野菜と薄切りの生ハム。オリーブオイルがほのかに光を反射している。

続いて、湯気を立てるグラタン皿、香ばしい匂いのローストビーフ、そして小ぶりだが存在感のあるバゲットのカゴ。

「すげぇ、貴族になった気分」

「ローストだ!ロースト!」

「美味しそう」

「じゃあ、冷めないうちに食おうぜ」

健太の一声で、それぞれがフォークやナイフに手を伸ばす。

「……うま」

蒼真が一口食べて、思わず目を見開く。

「ありがとうございます」

息子さんが少しだけ口角を上げる。

「このロースト、火入れ完璧じゃん」

朱里が感心したように言うと、「父さんと違って真面目なんで」 と即答が返ってきた。

「反抗期か〜……つれぇ」

嘘泣きを始める健太。

「いやでもマジで美味い」

和希が感動しながら食べている。

「銀座でこれ出されたら、そりゃ流行るわ」

私はバゲットをちぎってソースを拭い取った。

さすがオシャレタウン、銀座。さすが銀座にお店を構えるだけあって、めっちゃ美味しい。

それから二時間くらい昔話に花を咲かせていたり、料理を食べていたりしていたら、あっという間に時間が流れてお開きになった。

「じゃーまたねー」

「また集まろ〜」

「バイバーイ」

それぞれコートを羽織り、店の外へと散っていく。

外は少し寒くて風が冷たかったけど、火照ってる体にはちょうど良かった。

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