表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日ノ本元号男子  作者: 安達夷三郎
第七章、未来を繋ぐもの
49/55

四十九話

合図も何もなかった。

最初の一発を放ったのは―――

「撃てぇぇぇ!!」

私達のグループのリーダー・昭和くんだった。

それを合図にしてそれぞれ雪玉を飛ばしていく。

雪玉ランチャーから放たれた雪玉が、ひゅるるっと弧を描いて飛ぶ。

「うわっ!?」

「何でそんな物があるんだ!」

中世グループの陣地に、次々と雪玉が降り注ぐ。

文明の力、強い。

「前に出るであります!」

「私も応戦しますわ!」

安土桃山くんと戦国さんが同時に飛び出した。 低い姿勢で走り、雪壁を盾に距離を詰める。鎌倉さんと室町くんは距離を取りながら雪玉を投げ付けている。

「南北!補充急げ!」

「「分かった!」」

南北ツインズが手際よく雪玉を渡していく。 完全に戦。

一方その頃―――

「もう少し固めた方が良いかな?」

「滑ってつこけてはいかんばい、気をつけんと!」

「ここらへん補強しな、すぐ崩れんで」

「足元に注意なのですよー!」

「平安、この雪山何日くらい保つと思う?」

「正月十五日くらいまでやろなぁ」

古代グループはというと、雪壁づくりに夢中だった。

雪合戦は、完全に三方向から入り乱れる形になっていた。

「くっ……近代組、弾幕が厚すぎであります!」

安土桃山くんが雪壁に身を伏せながら叫んだ直後、雪玉ランチャーの一斉射が降り注ぎ、壁の上部がごそっと削れた。

「昭和!少し撃ちすぎ!前線が見えない!」

「勢いが大事だ、勢いがぁ!」

「それで弾切れ起こしたら意味ないからね!?」

大正くんと昭和くんが後方で言い合っている。

一方、前に出ていた戦国さんは、雪を蹴って一気に距離を詰めた。

「近代の皆さん、隙だらけですわ!」

「うわっ、来た!」

「迎撃――!」

だが、戦国さんの動きは速い。 雪壁の陰から陰へ、滑るように移動しながら、的確に雪玉を投げてくる。

その時だった。

―――ずずずっ。

低い音と共に、戦場の端で何かが動いた。

「……あれ?」

誰かがそう呟いた瞬間。

「完成したですよー!」

古代グループの方から、やけに達成感のある声が響いた。

振り向くと、そこには、 雪壁どころではない大きな――かまくらが鎮座していた。

「でっか……」

「雪合戦してる間に何作ってんの!?」

「立派やろう?」

平成くんのツッコミに、平安さんが満足そうに腕を組む。

入口の奥を覗くと、奈良さんが雪で作った小さな大仏を鎮座させ、弥生くんが(わら)代わりの枯れ草を敷いている。 どう見ても雪合戦用の施設ではない。

「札幌雪まつり……?」

「ここ米原やで」

平成くんの呟きに古墳くんが冷静にツッコむ。

「しかも開催時期がズレていますしね」

明治さんの追撃に、平成くんがぐぬっと言葉に詰まる。

「防御力に全振りしたらこうなるんだ……」

「雪合戦の概念が変わってきてるよね……」

私が呆然としている間にも、戦場は止まってくれない。

「古代組、完全に要塞化(ようさいか)しているでありますね……」

安土桃山くんが雪壁の陰から顔を出し、かまくらを指差す。

「しかも中に大仏がいるね」

「よく作ったな……これを」

「精神的圧迫が凄いですわね……」

江戸くんと鎌倉さんが中を覗き込み、戦国さんが真顔で呟いた直後、かまくらの入口から、ぽいっ、と雪玉が放られた。

「狙って投げてないですよー!転がっただけなのですよー!」

「いや、狙ってたじゃん」

飛鳥くんの必死な弁解をぶった切る縄文くん。

「これは……一時停戦した方が良いのでは?」

鎌倉さんが冷静に提案するが、

「いや、まだだ!」

昭和くんが腕を上げた。

「武器を構えよ〜!……だっけ?」

平成くんが叫ぶのと同時に、雪玉ランチャーに雪玉がセットされる。

―――その瞬間。

「待った!」

凛とした声が雪原に響いた。

振り向くと、かまくらの前に立っていたのは平安さんだった。

「ここは戦場やないですよぉ」

静かな一言に、全員の動きが止まる。

「雪合戦もええですけどねぇ、せっかくやし――」

平安さんは、かまくらの入口を示す。

「中で暖まっていきますかぁ?」

「わーい!」

「ちょうど寒かったんだよなー」

「あ、南北が買収されてる」

「かまくらで食べる餅は美味しいぞ〜?室町」

「それ先に言ってよ、奈良さん」

―――雪合戦は、あっけなく終わった。

「……ちょろ」

室町くんがかまくらに吸い込まれていくのを見て、七輪を持った奈良さんがぼそっと呟く。

「奈良さんが優秀な人材を引き入れた時の顔をしてるよ!」

かまくらの中は、思っていた以上に暖かかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ