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日ノ本元号男子  作者: 安達夷三郎
第七章、未来を繋ぐもの
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四十四話

吹雪いてくる前に悠久邸に戻ると、ソファに座ってくつろいているのは令和ちゃん。

右手にマリトッツォ、左手にタピオカミルクティー。

「おかえり〜」

「ここぞとばかりに二〇三〇年代を謳歌してる!!!」

「いや〜、懐かしくて......コンビニで見つけて即買っちゃった☆」

(やだよぉ......これが未来の私なんてやだよぉ......)

「あ、そうだ。食堂の方で鎌倉さんと戦国さんが待ってたよ〜」

「?」

その時、牛乳を飲み終わった明治さんが立ち上がり「行きましょうか」と言う。

訳も分からず着いていくと、鎌倉さんと戦国さんが立っていた。

戦国さんは嬉しそうに私を見た。鎌倉さんは腕を組んでいる。

「美空さん。今から鎌倉時代に行きまして、時間があれば戦国時代に行く......というのはどうでしょう」

「え?」

(急だね!?)

「令和さ......あ、美空さんの初の実践ですわ!鎌倉時代では元寇の役もありますし、私の時代だと鉄砲伝来もあります。選り取りみどりですわ〜!」

戦国さん、楽しそう......。

「令和で大丈夫ですよ」

「それなら令和さんとお呼びしますわね」

ニコニコ顔の戦国さんに眉をひそめた鎌倉さん。

「僕は反対だ。戦の場に子供がいて何かあったらどうする」

「そのことについては心配いりませんわ。遠くから傍観するだけですから」

「戦国公......何故そんなに嬉しそうなんだ?」

鎌倉さんが首を傾げる。

「それは......私もモンゴル帝国軍と一度、手合わせしてみたいからですわ!」

(戦国さんらしい答え!!)

鎌倉さんはこめかみを押さえる。

「はぁ......。(よわい)十五でこのような責を追うことになって、君は大丈夫か?」

「え!?」

まさか私に振られると思わなくて、びっくりしてしまう。

(心配してくれているのかな?)

「はい!立ち止まってる暇はないんですよね!どんどん実践的なやつとかも知りたいです!」

(元寇は教科書で載ってるから内容は知ってるけど......実際に見たい!)

「そうか......なら、その情熱に答えるのが先人の勤めだ」


1281年。

私達は弘安の役の時の九州にいた。

「九州!」

思わず声が大きくなった私の横で、明治さんが周りをきょろきょろ見回す。

砂浜には築かれたばかりの石塁(せきるい)がずらりと並んでいる。なんとわずか半年で、高さ二メートル厚さ三メートル、長さ二十キロメートルの石塁を築いたらしい。

「それにしても、暑いですね」

「当時は夏だからな。博多の上陸を断念した敵軍を肥前国(ひぜんのくに)で迎え撃った」

「へぇ......って、戦国さんは!?」

周りを見渡すが、戦国さんはいない。

「......戦場に行くか」

肥前国(現在の佐賀県)

沢山の武士に中に混じっているのは戦国さん。

「名乗る前に攻撃された!」

「戦の決まり事だぞ!?」

「我ら鎌倉武士を完全に舐め腐ってるだろ」

「全員血祭りじゃぁぁぁ!」

口々にモンゴル軍に文句を言う鎌倉武士達。

血気盛んという言葉が良く似合う人達だと思った。

そして、モンゴル軍と武士が出会った瞬間、雄叫びを上げて刀を抜きながら激しい戦いを始める。

モンゴル側は馬に乗って弓矢を使う。一方の鎌倉武士側は刀と和弓。馬は"てつはう"という武器に驚いて逃げた。

しばらくして、モンゴル軍の一人が大将クラスの首を槍に刺して掲げるという心理戦に出た。

しかし、鎌倉武士はそれを恥と(とら)えたのか、恐怖することなく逆に士気(しき)が上がってしまった。

和弓で援護する人達の中には、戦国さんもいる。

「えっと......?」

鎌倉さんに説明を求めたが、鎌倉さんは何食わぬ顔でモンゴル軍との戦いを傍観していた。明治さんはその戦いの様子をスケッチブックで絵に描いている。

(その為のスケッチブックだったんだ......!)

「あの......モンゴルとの戦いって過去に一度起こってるんですよね。戦になったきっかけとかあるんですか?」

「ん?」

「いや、数年前にもモンゴル軍が来ていたし......何で戦うことになったのかな?って思いまして」

「ああ、それは―――元から六回手紙を送られたんだが......これが元から届いた手紙だ」

鎌倉さんが見せてくれた手紙には『我々は天の命令で世界を支配している。多くの国が我々に従っている。お前もその名誉を与えてやるから喜べ。そうすれば日本も平和と繁栄が待ってるぞ。フビライ・ハンより』という内容が書かれていた。

「完全にこちらを見下している内容だったから無視した」

「無視!?」

「ああ、それで怒ったモンゴル軍が攻めてきた」

「えぇ......」

戦っている鎌倉武士を見る。

モンゴル軍側が武士の一人を人質に取っていた。

(ど、どうしよう......人質に取られてるよ......)

しかし次の瞬間、鎌倉武士の反応は異様に早かった。

人質になって盾となった味方諸共(もろとも)射抜いたのだ。

モンゴル軍は人質に取れば攻撃できまいと思ったのだろう。しかし、それは意味なかった。いや、それどころか鎌倉武士に弱点を教えていることになった。

それに武士側は、加え戦いは真夜中でも止めることなく二十四時間体制で戦闘を行っており、モンゴル軍を完全に疲弊させていた。

(よろい)を着たまま海を泳いで奇襲を仕掛けているという......いつ休んでいるのか気になる戦い方だ。

「鎌倉武士って......思ったよりバーサーカーですね」

「バーサーカーとやらは知らんが......まぁ、武家の法律として作られた『御成敗式目(ごせいばいしきもく)』には君の時代で言う当たり前のことが書かれていたからな」

内容的には『神社仏閣を破壊するのはやめましょう』『人の物を奪うのはやめましょう』という、今では当たり前のことが記されていたらしい。

ようやくモンゴル軍が撤退したことにより、鎌倉武士の勝利でモンゴル帝国との戦いは幕を降りた。

「戦国さん、どうでしたか?」

戦国さんは和弓を肩にかけ、風に揺れる髪を押さえながら振り返った。

「そうですわね......私の戦いとは少し違いましたが、貴重な体験ができましたわ」

「そ、そうですか......」

(戦国さんって......いや、戦国さんは日本史の中で一番戦っていた戦国時代だから、その擬人化である戦国さんも脳筋思考なのは分かっていたけど......う〜ん......)

てか、脳筋思考なのかな?戦が絡まなければふわふわしている人なんだけどね。

「ここで私の鉄砲伝来を......と思っていたのですが、お腹が空きましたので、一度戻りますか?」

「はい!」

私は即答する。というか、精神的にめちゃくちゃ疲れた。

談話室のソファに座ってぐったりしていると、室町くんが隣に座って聞いてきた。

蒙古襲来(もうこしゅうらい)はどうだった?鎌倉武士団がバーサーカーだったでしょ」

私はそれにこくこくと頷いた。室町くんはやっぱりと言いたいのか、ニンマリしていた。

「鎌倉武士団、凄かった......」

「貴重な体験をしたねぇ」

奈良さんと囲碁を指していた平安さんが言う。

「確かに鎌倉武士団は凄いよね。でも、肝心(かんじん)なのは蒙古襲来の後だよ」

「後?」

室町くんはにこりと鎌倉さんをチラリと見て話す。鎌倉さんは黙々と本を読んでいた。

「鎌倉くんは、御家人達に土地を与えるって約束したのに、結局防衛戦だったから土地を与えられなかったんだよね。まぁ、そのお陰で南北や室町()が生まれたんだけど」

どうやら室町くんは、鎌倉くんを煽るのが好きなようだ。

「戦国さんはめっちゃ機嫌良いけど......何があったの?」

「楽しかったですよ。......モンゴル軍と戦うの」

江戸くんがいつもよりほんわかしながら、安土桃山くんと花札をしていた戦国さんに尋ねる。

「どの武器で戦ったでありますか?」

それに食いつく安土桃山くん。

「弓ですわ!あれの方が遠くまで飛びますし、鉄砲も良いのですが、私は弓矢の方が使いやすいですわ」

「そうでしょうね......」

「まぁでも、色々改造したお陰で使いやすくはなりましたわ!南蛮の商人さんに感謝ですわ」

「へぇ〜!カッコイイ!!後で俺にも鉄砲撃たせてよ!!」

目をキラキラさせるのは平成くん。

「じゃあ後で小生の使うであります!小生の時代はよく使われていたでありますよ〜」

「よっしゃ!」

すると、江戸くんが私の方に歩いてきて、急に思い出したように口を開いた。

「そういえば、鎌倉武士のバーサーカーっぷりは薩摩藩に受け継がれたよ」

「え?」

薩英(さつえい)戦争で......結局引き分けになっちゃったけど、中々良い体験だと思うから戦国さん、良かったら薩英戦争も体験したら?」

江戸くんの言葉に戦国さんが「薩英戦争......」と口の中で転がす。

「戦法が受け継がれているのですか?」

「いや、ノリ?」

「ノリ......!?」

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