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日ノ本元号男子  作者: 安達夷三郎
第六章、過去と未来
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三十五話

大地が唸りを上げ、地面そのものが生き物のように揺れ狂った。

ビルの壁面がバリバリと裂け、瞬く間に瓦礫(がれき)となって落下。

ガラガラと響く崩壊の音が街中に木霊(こだま)する。山は崩れ、土砂に家や車が巻き込まれている。

「み......令和さん!」

彼女は瓦礫の下敷きになっていた。近くで子供が泣いている。

「令和さん!意識はありますか!?」

名前を呼んでみるが反応なし。

肩を叩いても反応なし。

腕に手を当てて脈を確かめる。

動いていなかった。

死。

絶対的な死。

舗道のアスファルトはひび割れて、そこに電柱や看板が傾いて倒れ込み、火花を散らしては鈍い光を瞬かせる。

逃げ惑う人々の悲鳴は、轟音(ごうおん)に飲み込まれて断片的(だんべんてき)にしか届かない。家のドアは外れ、ガラスが粉のように砕け散り、足元に降り注ぐ。濃い砂埃が視界を覆い、昼であるはずなのに辺りは灰色の闇に包まれる。

「ごめんなさい。何回やり返しても僕達は君のことを必ず見つけます。それで、次こそは助けます―――」



「......い、おーい!明治さんやーい」

「......!」

平成くんの声で我に返る。

「......どうしましたか?」

「明治さん、最近ボーッとしてること多いよね。大丈夫?」

「あぁ......大丈夫ですよ」

「まぁた()(りょう)(にん)のことかい?」

ソファで漫画を読んでいた昭和くんからの指摘。

「色んな事情は置いといて、今日はどっか行こ!どこ行く?イオン?」

平成くんは遊びに行く気満々だ。

「おおっと、おめぇさんは金払う必要ねぇからな」

「悪いですよ」

歳が近い大正くんならまだしも、昭和くんはかなり年下だ。年下に払ってもらうのは気が引ける。

「その代わり運転頼んだでぃ!」

......その交換条件なら良いかもしれない。


家でダラダラしてると、ジリリィとまだ現役な昔ながらのダイヤル式電話が鳴った。

電話に出てみると明治さんからだった。

「......え、今日は授業休みでどっか行こうですか?行きます!!!」

思わず声が弾む。

少し話していると、受話器の奥から言い争う声が聞こえてきた。

『平成!おめぇ、荷物それだけで良くねぇだろ!』

『スマホと自撮り棒とゲームボーイがあれば大丈夫だよ!』

昭和くんと平成くんだった。

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