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日ノ本元号男子  作者: 安達夷三郎
第五章、近代国家の幕開け
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三十二話

明治6年。

帰ってきた岩倉使節団だが、何か議会の様子が変わっていた。

留守政府は解体されたが、大熊さんは大久保さんと組むことで議会に留まることに。

その後も色んな政治家に切り込んでいく政治スタイルで存在感を放つ大隈さんを、世間はめっちゃチヤホヤするのでした。

「大隈重信公、国会開設急進(きゅうしん)論を唱え......」

議会の二階で新聞を読んでいる。新聞も世間話も大隈さん一色。でも、初代総理大臣は伊藤さんだし、この流れなら大隈さんが初代総理大臣でもおかしくないはずなんだけど......。しかも大隈さん、議会から追い出されるし......何で?

「当時に大熊さんの大衆人気は凄まじいもので、さながらヒーロー扱いだったんですよ」

明治さんが見せてくれた新聞の見出しには『大隈重信公、不祥事を暴く!』『大隈公の歯に衣着せぬもの言いが若者に人気!』

政治にバンバン突っ込む様子、リアルタイムで見たら面白そう!

「この流れもあって、対立姿勢だった伊藤さんと大隈さんは和解することになります。......表面上は」

一階の議会で握手しているのは、伊藤さんと大隈さん。

他の議員達もわいわいしている。楽しそうだなぁ......。

何だか頭がふわふわしてきた。


―――うわぁ、白熱してきた!


女の子の声が真後ろに響いた。

道を譲ろうと避けたら、白色の猫耳パーカーの女の子が私の横を駆け抜けていく。

その声には何だか聞き覚えがあって......。

「美空さん?」

明治さんに肩をポンっと叩かれた。

「―――え?」

「今、倒れそうでしたよ。熱中症でしょうか?」

「あ、いえ、人が来たから避けようと思っただけで」

「人......ですか?僕達以外誰もいませんよ?」

明治さんに言われ、私は辺りを見渡す。

誰もいない。確かに私の真後ろを通った気がしたのに......あれ?

遠くから知らない議員達が歩いてくる。

「ええっと、あの人達じゃなくて......女の子が」

「一度、戻りましょうか?」

「大丈夫です!」

伊藤さんと大隈さんの議論内容をまとめているが、明治さんからの心配の視線が痛い。

議論はいつの間にかクライマックスに近付いている。

ドイツを参考にじっくり案を練るべきだという漸進(ぜんしん)派の伊藤さん。

イギリスを参考にすぐにでも国会開設を急ぐべし!急進派の大隈さん。

「伊藤さん、ガツンとお願いします!」

「大隈さん!負けないで!」

「大隈さん派は減ったけど、いなくなった訳じゃねぇからな!数ばっか揃えやがって!!」

「数を揃えるのは政治では正当法!!それに、伊藤さんの考える国会案は優秀だ!」

議員による伊藤さん派と大隈さん派の対立。

「何だか伊藤さん派の方が優勢な気が......」

「どうやら伊藤さんが大隈さん支持層の切り崩しに成功したみたいですね」

わーわーと騒ぐ議会。あんな風に責め立てられたら泣いてしまうかも。

「留守政府が入れ替わった明治六年の政変。今回のが明治十四年ですね」

「議論の内容は分からないけど、違う論を言い合ってるのに向いている方向は一緒みたいな......熱いなぁ」

「熱いですねぇ」

そして、大隈重信は政界から去った。

その後ろ姿は堂々としており、爽やかであった......!

「黒船来てから国会開設まで何年でしたっけ?」

「約三十年くらいですね〜!そりゃ忙しいですよ〜」

「三十年?忍者殿様の時代から三十年......!?」

「はい、三十年でこうなりました」

清々しいほどの笑顔の明治さん。

「でもこうなったのって、いきなり近代社会に引きずり出されて、近代化してねー奴、席ねーから!されらから......でしたよね?」

「そうですね。対等には扱ってもらえなかったですね」

「何で合わせないとダメなんですか?個性大事って言うじゃないですか」

「理解と信頼は時間と実績が必要なんですよ......」

「た、大変そう......」

「確かに大変でしたが、新しい文化も生まれた訳で......和と洋が混じった独特の空気感、良いですよねぇ。そんな明治文化の象徴として取り上げられることが多いのが、井上(かおる)さんが建てた『鹿鳴館(ろくめいかん)』!」

「あー教科書で見たことある!」

派手なドレス着て踊っている絵が教科書に載っていた。

「そして、鹿鳴館は建物でありながら、外交手段として使われるのです!!」

(鹿鳴館ってかっこいい......!)

しかし!夜会による風紀の乱れや、欧米化反対の人達からの批判が相次ぎ、ついに鹿鳴館はすぐに閉館してしまう。

「鹿鳴館!?」

「せめて現代まで残して欲しかったです......」

鹿鳴館と同じく、明治時代の建物として有名なのは『凌雲閣(りょううんかく)(浅草十二階)』当時、日本で一番高い建物として栄華(えいが)を誇っていた浅草十二階。しかし、大正時代の厄災で半壊し、危険だからと取り壊された。

「それでは、『明治時代クイズ』です!」

「いきなり!?」

明治さんが問題の書かれたスケッチブックを私に向ける。

「明治初期、廃藩置県(はいはんちけん)によって何かが生まれました。それは何か分かるかな?ヒントは君のところだと"けん"ですね」

「私は......けん?」

廃藩置県って確か、藩を廃止して県を置きましょうってやつじゃ......あっ!

私はぱんっと手を打つ。

「都道府県!!」

「正解です!詳しく言えば『市制(しせい)町村制(ちょうそんせい)』今の都道府県に繋がる重要な改革ですね」

(けん......って、滋賀県のことだったのか〜!四十七都道府県、小学生の時覚えさせられたんだよね......関東と九州がボロボロだった思い出がある)

「ちなみに最初は三府と二百二県だったんですよ!」

「多すぎ!!」

三府とは、東京、京都、大阪のことらしい。

「当時の国民もそう思ったのか、多すぎ!という意見が相次ぎ、同年に藩統合されて三府と七十二県までシェイプアップしました」

それでも多い!!

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