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日ノ本元号男子  作者: 安達夷三郎
第四章、修学旅行
30/41

三十話

最終日の夜は、学年全員で大広間に集まることになった。

広い畳の大広間はまるでお祭りみたいに盛り上がっていた。

学年全員がパジャマやジャージ姿で集まって、歌やモノマネや小ネタを披露しあっている。もう笑い疲れて腹筋が痛い。

東京のホテルなのに、なんか旅館みたいな畳の部屋が用意されていて、すでにテンションは爆上がり。

背中にゴージャスな羽根を背負った修学旅行実行員の子が、左に手を上げてお辞儀。今度は右に手を上げてお辞儀。

溢れんばかりの拍手の中、舞台そでに引っ込んで彼らの姿が見えなくなる。

「次、私達だね」

「だね」

朱里と一緒に舞台そでに移動する。

私達も劇をする。

劇と言っても、いきなり決まった。練習なんてもちろんしてない。

「即興でやったら絶対オモロい!」

健太の勢いだけで始まった。台本は健太と和希が制作した。

舞台そでから現れたのは、ナレーションの委員長。

ジャージ姿に百均で買ってきたであろう、プラスチック製のマイク。

「さーさ、オリジナル劇。タイトルは、『現代版、桃太郎』!!」

ワァァ!と拍手が大きくなる。

『昔々あるところに、お爺さんとお婆さんがいました』

委員長のナレーションは棒読み。

「うぉい!婆さん、洗濯しとらんやんけ!」

「知らんわボケ!」

お爺さん役の朱里、お婆さん役の私。

セリフの指示『とりあえず喧嘩しといて』に従っておく。

『とても仲の良いお爺さんとお婆さんです』

(委員長?何を見たら仲良く見えるの!?)

舞台は変わって、コインランドリー。

ダンボールで作った洗濯機の中で、大きな桃が回ってる。

いやー、便利だね。コインランドリーって。

「あらまぁ、大きな桃が回ってるわぁ......」

棒読みだが仕方ない。何なら半分アドリブ状態。

大きな桃を持って帰って、朱里に見せる。

「えー、どうする?」

朱里は怪訝そうに大きな桃を凝視する。

「......食べる?」

「食べんの!?」

ダンボールで作った包丁で桃をスーッと切ってみると―――

「オギャーオギャー」

中から人形が現れた。声を担当するのは、先生(友情出演:裏声の担任)

先生の裏声に生徒達は爆笑する。

「これは......」

「......どうるする?」

「とりあえず警察に連絡する?」

朱里が言った瞬間、裏声の先生の声で「やめろ、おぎゃぁ!」

「い、今、やめろって......」

笑いを堪えながら必死にセリフを続ける。

あ、ダメだ。吹き出しそう。

「育てろ!おぎゃあ」

「......ブホッ」

ついに耐えきれなくなって、お腹を抱えて爆笑してしまった。

「名前どうるする?」

「桃から生まれたから......桃太郎で」

「後々恨まれそうな名前だけど、まぁ良いか」

『そして、桃太郎はすくすくと育ち、約一週間で桃太郎は青年に育ちました』

「今までお世話になりました。鬼を退治してきます」

桃太郎役は、健太がお土産屋さんで買った木刀を持っている和希。

その後、犬役は何故かブルドッグの被り物をした担任の先生、猿役はバナナを食べている蒼真、キジ役は羽根付きラケットを背中に貼り付けたクラスの男子。

「犬です!」

「猿です!」

「キジです!」

『仲間を手に入れた桃太郎は、鬼ヶ島へうみのこで向かいました』

桃太郎率いる、犬、猿、キジは『うみのこ』と書かれたダンボールの船を動かしながら、移動する。

そしてついに鬼ヶ島に到着。

「おーい、戦いに来たぞ!鬼ー」

「あ、どした?」

ひょっこり舞台裏から現れたのは鬼のお面を被った健太。

「戦いに来たの?じゃあ座って座って〜」

へらへら笑う健太。そして、何故か桃太郎達は鬼とトランプを始める。

「え?」桃太郎は困惑する。

「あー、今のご時世暴力は良くないからね。こん棒とかも持たないし」

「お、おう......」

結果、桃太郎は鬼と仲良くなり、家に連れて帰って来ましたとさ。

めでたしめでたし―――。

全力で笑わせにくるメンバーに、客席は爆笑。

私も朱里も、お互いの肩をバシバシ叩きながら、涙が出るほど笑った。

最後は出演者全員で、手を繋いでお辞儀。

「いやー、面白かったね」

「腹筋割れてるわー」

「あー、おもろ」

そうして、修学旅行は幕を閉じた。

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