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日ノ本元号男子  作者: 安達夷三郎
第四章、修学旅行
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二十九話

「ついに来た―――!!」

ゲート前で健太が絶叫した。目の前に広がるのは、夢と魔法の王国―――東京ディ●ニーランド。

「行き先、東京だったよな......?」

「千葉じゃん。ウケる」

入場ゲートから見えるお城に、クラス全員が「おぉ〜」と声を上げる。

二泊三日の修学旅行、二日目の目玉イベント。

「ここから自由行動、五時までに集合だからね!」

先生の説明にみんなが一斉に散っていった。

「じゃあ、どこ行く?初めは絶叫系だよなー」

蒼真が地図を広げる。

「シューティングゲームだろ!分かってないな〜」

「空いている場所から攻めるべきだろ!」

委員長以外の男子三人の意見がバラバラ。

「......バラバラじゃん。ひらパー行った時よりバラバラじゃん」

朱里がチェロスを片手に呟きながら、お城やキャラクター達の写真を撮っている。

「全員俺に任せとけ!ここには小二の時に行ったことあるし、昨日、どの時間帯が混みやすいかスマホで調べてたんだよ!」

「へー、すげぇな」

蒼真が素直に感心する。

「だからお前、布団の中でスマホいじってたのか。てっきりゲームでもしているんかと」

委員長が呆れ顔で返した。手に持っているのは可愛い色のアイス。

「この時間帯は新エリア方面が混んでいる。俺達は左側から攻める!!」

「「「「おー」」」」

「暴走族の総長と、その舎弟かよ......」

「委員長もビビらずに行くぞー!」

気合いを入れて歩き出す私達の後ろを、委員長がため息まじりに着いてくる。

しかし、健太の案内はびっくりするくらい完璧だった。

土日の混雑してるなか、次々とアトラクションを攻略!

ショーを見たり、シューティングゲームを楽しんだり、小舟に乗って童話の世界を楽しんだり。

列に並んでいる時は、待ち時間が長すぎて話題が底をついて新しいゲームを生み出したり。

「あぁぁぁ......」

「何なに、どうしたの!?」

スマホを見ていた和希が突然うめき声を上げた。

「......公式から新しい情報......新章の本編PVが投稿されてた......」

「は?こんなタイミングで!?」

朱里が急いで自分のスマホで確認する。「本当だ......」

「お前ら、好きだなー」

「今は強い意志でログインすら我慢していたのに......クソッ」

和希の親指はプルプル震えている。どんなに男性だと認めたくないんんだ......?

「我が推しの信玄ちゃんは後北条家と関わりがある。......つまり、信玄ちゃんに男が近付く可能性がある......許さない」

「いや、二次元に嫉妬するなよ」

委員長が呆れ半分にツッコミを入れる。

「信玄ちゃんに男が近付くなんて......修学旅行中も見逃せるか!!」

「お前、待ち時間ずっとそれ考えていたのかよ。PV見れば分かるだろ」

「出来る訳ないだろ!もし男なら......男だったら俺はもう、立ち上がれない......」

「いや、ディ●ニー楽しめや」

蒼真がバシンと和希の肩を叩いた。

「......俺が学校の廊下で転けたのも、ピックアップとか言いながら推しが出てこないガチャも、元を辿れば後北条家が悪い!きっと、あらぬ噂を吹き込んで......!!」

「保健室行けよ」

委員長は完全に呆れ顔でアイスをかじっていた。

「だって!信玄ちゃんは歴史的因縁で後北条家に繋がりがある。そこから―――」

和希の妄想が加速しかけたその時。

「―――はーい!キャラクターとお写真が撮れる列、こちらでーす!」

キャストさんの明るい声が聞こえてきて、みんなの視線がそっちに向いた。

「おぉ!ミッ●ーだ!」

健太がテンション爆上がり。

「写真撮ろう!」

蒼真が走り出す。

「ちょ、待っ―――まだ信玄ちゃんの話が!!」

和希が追いすがるが、健太に鞄を引っ張られて強制連行される。

「......ま、夢の国まで戦国武将の心配はしなくていいだろ」

委員長が小さく笑った。

そして気付けば、全員でミッ●ーの前に並んでいた。


委員長が飲み物を買いに行っている間、私達はカチューシャやペンライトが売ってあるワゴンを眺めていた。

リボンのカチューシャを手に取ったら、朱里が覗き込んできた。

「それ買うの?」

「うん!」

「ウチも買うからお揃いにしよー」

「良いよ〜!」

朱里とお揃いのリボンのカチューシャを二つ購入した。

しかも値札も取ってもらって、早速頭に付けてみる。

「帰りの新幹線、これ付ける人多そうだよなー」

そう言って健太が指差したのは、キャラクターの目が描かれたアイマスク。

「これ委員長に渡してみようぜ」

「ウケる」

「待て、俺は付けないからな」

ギリギリで戻って来てしまった本人が、悪ノリする蒼真と朱里の肩に後ろから手を置いた。

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