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日ノ本元号男子  作者: 安達夷三郎
第四章、修学旅行
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二十八話

東京駅に降り立った瞬間、空気が一気に変わった気がした。

「うわ、建物デカッ!」

「人、多すぎ!地元の駅も大きいと思ってたけどさすが大都会、レベルが違うな」

米原(まいはら)駅も大きいと思ってたけど、東京には負けるわ......。県内で唯一新幹線が通ってるんだけどな」

「私達の地元が田舎だけなような......。都市部じゃないし」

「奈良とか京都とかはすぐ行けて特別感ないんだよな。逆に東京って未知の世界」

東京について話していると、健太と朱里がキョロキョロしている。気持ちは分かる。

「班ごとに行動するから、はぐれないようにしろよー!」

担任の先生が旗を高く掲げると、ぞろぞろと観光客の群れに混ざって進む。

まず向かったのは浅草。

雷門の大きな提灯を見上げて「おぉ〜!」と歓声が上がる。

朱里はすかさずスマホで連写。

「大きいね〜」

「何メートルあるんだろう?」

「はい、みんな並んでー!記念写真撮るよー!」

先生が言うと、班ごとに集合。

「修学旅行っぽいな!」と健太がやたらテンション高くピースしていた。

そのあと仲見世通りに入ると、食べ歩き天国。

焼き立ての人形焼、揚げ饅頭、きなこアイス......甘い匂いに包まれて歩くだけで楽しい。

「うまっ!この揚げまんじゅう、サクサクだわ!」

「一口ちょうだい」

「いや、自分で買えよ!」

蒼真と健太が口喧嘩しながらも結局シェアしている。

和希はというと―――。

「......待って、浅草限定の戦プリグッズある。しかも信玄ちゃんもちゃんといる!!」

見てみると、土産物屋の棚に『戦国☆プリンセス×浅草限定グッズ』がずらり。

「運営、仕事早っ!」

朱里が驚きつつ推しのアクキーを見ている隣で、小さく震える手で和希は財布を開いて小銭を数えていた。

「おい和希、それ全部買う気か!?」

「いや、全部は無理。でも最低三種は確保する......。ありがとう戦国。ありがとう運営。ありがとうリアル武田信玄さん。推しがいる生活って最高......!!」

「真剣な顔すんな!」

結局、和希は両手いっぱいの袋を抱え、雷門をバックに満面の笑み。

「修学旅行は推しグッツ収集の行事じゃないからな」

委員長が外で呆れていた。

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