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日ノ本元号男子  作者: 安達夷三郎
第四章、修学旅行
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二十七話

「うわっ、空気が美味しい」

「良かったね、晴れて」

バスを降りた瞬間、朱里と一緒に空を見上げる。

二学期が始まって三週間、中間テスト終わった二日後。二年生恒例行事、二泊三日の『修学旅行』が始まった。

目的地は関東の王様、東京。

関東は初めて行くので、テンション爆上がりして昨日は中々寝付けなかった。

「五分後にバスに集合だからなー!」

担任の先生がメガホン片手に叫ぶ。

「俺ちょっとアイス買ってくる!」

健太が財布を握り締めてサービスエリア名物のバニラアイスを購入した。お値段なんと四百円。

「五分以内で食えるか?」

「さー?」

蒼真と委員長が顔を見合わせる。

私はと言うと、朱里と一緒にお土産市場を覗き込んでいた。

「知ってる?道の駅で大きなスイカが千円で売ってるんだって」

「スイカって移動販売されてるやつで十分でしょ。ウチのお婆ちゃん、それで五玉買ってた」

「マジで?五玉って多いね」

バスは駅に着き、新幹線に乗り換える。

―――新幹線の中では、歌を歌う人、カードゲームをする人、お菓子交換をする人、寝落ちする人。各々の時間を過ごす。

「飴やる」

朱里がレモン味の飴玉を差し出してきた。

「ありがとう、じゃあこれあげる」

ゴソゴソとナップサックから取り出したのは、近所のスーパーで買ってきた小分けタイプの『ぼんち揚』

「お、ありがとう」

「関西からやっと出れる......」

「牢獄じゃん」

のんびり朱里とお菓子を食べながら喋っていると、後ろから小声で呪詛と悲鳴が聞こえてきた。

「......は?はぁぁぁぁ!?嫌ぁぁっぁぁ!!」

「どしたー?」

「あぁぁぁぁぁぁ」

スマホを握り締めながら、唸る和希。

「朱里、『戦国☆プリンセス』やってたよね?何か知ってる?」

「あー、事前情報で公式から新キャライラストが発表されたのが昨日なんだけど......」

朱里が顔をしかめながらスマホ画面をこっちに向けてくる。

画面には『新章・後北条家実装!』の文字と五人の青年達の立ち絵。

「戦プリって今まで女性キャラで統一されていたのに、急な男性キャラ没入で今めっちゃ炎上してる!!」

見せてくれたリプ欄には―――

『職場が男だらけなんですよ......ゲームの中でくらい女の子に囲まれたいです』

『僕の怒りで国家転覆させます』

『運営ナイス』

『推しに男が近付くの許せない』

『私は男でも女でもOKです!』

『家康ちゃんも謙信ちゃんも女の子なのに......(泣)』

という賛否両論コメントで大荒れだった。

「可哀想に......」

「だから今日はいつもより荒ぶっていた訳か」

委員長が呆れでため息をつく。

そんなこんなで、新幹線は東京へ到着した。

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