7ページ目 禁書の可能性を知る少女
話が長引くと思ったのか神埼はお茶菓子を持ってきた。持ってきたのは色とりどりのマカロン。マカロンの甘さとレモンティーのさっぱりさがよく合う。
「鍵となる言葉を引き出したらどうなるの?」
「そうなると改変が牙を向きます。持ち主の姿でなにか違和感はありませんでしたか?」
3m以上ありそうな大きな体にも驚いたけど一番はあの人間とは思えない
「なんか顔が黒いクレオンで塗りつぶしたような感じになってた」
「おそらく改変によるシナリオ改竄の影響でしょう」
「改変には様々な種類があります。
あなたのように禁書の内容が消える“シナリオ抹消”。
記憶や性格などを持ち主が書き換えられる“シナリオ改竄”。
そして、禁書同士が混ざり合う“シナリオ侵食”」
改めて改変の恐ろしさを知り自体の深刻さを理解する。
彼女も―――この改変の被害者なんだ。
早く解決したい気持ちが強くなり拳をぎゅっと握る。
「なるほど。改変が牙を向けるって言ってたけど具体的にどんなことをしてくるの?」
「改変された運命が整合性を保とうと持ち主を攻撃し始めます。今回はおそらく改変が持主を操って私達を攻撃してきます。こうなると“シナリオ崩壊”が起きます」
「崩壊ってどんな事が起きるの?」
「崩壊では改変によって書き換えられた運命が持ち主を乗っ取り私達に攻撃するもしくは改変された運命が。そうなった場合、禁書のコアを破壊することで崩壊を止められます」
「コアってどんな形をしてるの」
「それは禁書によって変わるので一概にこれというのはありません。戦闘中に見つけるしかありません」
「そうなんだ」
一気に情報が入って頭が糖分をほしいと叫ぶ。用意されていたマカロンを頬張る。マカロンの甘さが体全体染み渡る。
少しの休憩後質問は続く。
「そういえば、禁書から出るにはどうしたらいいの?」
「観測をすべて終わらせるか、持ち主もしくは私たちが死亡すれば出れますよ」
「・・・わかった」
なんとなく想像していた回答に少し落ち込む。おそらく今後何回か死んだり、殺したりするのだろう。また心の中の黒い何かがドロドロと増えていく。
「私達にできることはできるだけ持ち主の地雷をできるだけ踏まずに効率よく観測を終わらせることです。大丈夫、観測が無事終われば持ち主を改変から解放できます」
そうだ、私が躊躇すればその分ファム・シャル・ロッテが苦しむ。躊躇するな、心を切り替えろ私。
両手でほっぺを叩き自分に喝を入れる
「ごめん、少し弱気になってた。躊躇しない。観測をやり切るよ」
「ええ、よろしくお願いします。他に聞きたいことはありませんか?」
「そういえば…」
私は禁書を開きあの時と同じように銃を具現化する。神埼は特に驚いた様子もなくむしろ納得したような表情を見せる。
「こんな事ができるようになったんだけどこれって何?」
「それは禁書の能力の一つです。個々の施設が禁書によって成り立っているように禁書には持ち主に特別な力を与えます」
「それがこれってこと?」
神埼は紅茶を静かに置く。
「ここで説明するよりも実践したほうが早いでしょう」
神埼は立ち上がり私の手を引いてカフェを出る。こころなしか遊園ではしゃぐ子供のようにウキウキしている。残念ながらついたのは遊園地ではなく訓練所と書かれた場所だった。
中に入ると様々な武器が並べられた。銃からナイフまで、名前は知らないけど見たことのあるようなマイナー武器まで本当になんでも揃ってる。神埼は木刀を取って奥の部屋に入っていく。私は禁書で出せるので特になにも持たずに進む。
中では神埼が軽く準備運動をしていた。
「さて、私の能力は何でしょう?」
いきなりの質問に戸惑う。全くと言っていいほど見当がつかない。
「この模擬戦で私の能力を当ててみてください」
「ちょっと待っ―――」
言い終わる前に神埼は距離を一気に詰めて木刀を振る。
間一髪のところで避ける。木刀が私の横を切る。私は距離を離し禁書を開く。しかし、神埼は間髪入れずに距離を詰めてくる。私はデザートイーグルを具現化し、構える。
照準を神埼に合わせる。
引き金に指をかける。
しかし―――私は引き金を引けずにいた。
あの狂気が私を引きずり込もうとしていた。




