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向日葵をあなたに  作者: 宇多良 和笹
ポビーを魔女に

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3ページ目 生と死の間に行く少女

「架空図書館リバリルってなんですの」

「・・・」

「観測ってのも気になりましてよ」


その質問に思わず固まる。私は一言も架空図書館リバリルなんて言ってない。ましてや観測なんて今までの会話で読み取れるだろうか。考えられる可能性は1つ―――魔法で思考を読み取ったということだ。

冷や汗が出る。緊張で体が動かせない。早くこの得体のしれない何かから離れたいのに逃げられない。


「魔法で思考を読み取ったのか」

「あら、勘がいいこと。そうですわよ、琴音様は先程からなにか考え事をしていらっしゃるようでしたので、のぞかせてもらいましたわ」


ファム・シャル・ロッテはただ笑顔で無慈悲に答える。黒い何かがこちらを見つめる。緊張で呼吸が乱れる。視線を外したいのに外せない。

思考を読み取れるということは相手には誤魔化しや嘘などの駆け引きは通用しない。しかも相手は魔法という未知の方法で私に危害を加えることも可能だ。しかも、何かを唱えたり、杖を構えたりせずノータイムで使える。対して私には今使える武器もない。強いて言うならテーブルに置かれた銀食器か持っている禁書の角で殴るくらいだろう。逃げ場も少ないここでやり合うのは分が悪すぎる。


「降参だよ。洗いざらい話すよ」

「ええ、わたくしとしてもとても助かりますわ」


私は知っている情報を彼女に話した。他に方法がない以上、できることはこれぐらいしかないだろう。はあ、来る前に武器の一つや二つ持ってくるんだった。そう後悔しながら一旦落ち着く。後悔したり焦っても現状が変わるわけでもない。だったら冷静に相手の実力を図ったほうがいい。


「なるほど、架空図書館リバリル、禁書、改変。とても興味深いですわ」

「それは良かった。一応聞くけど今読み取ったのは思考?それとも記憶?」

「思考の方ですわ。やろうと思ったら記憶もできますの」

「記憶喪失でもそれは可能?」

「ええ、できましてよ」


目の前の人物に敵意は感じない。だったら協力関係を築いたほうが得策だ。それにもしかすると私についてなにかわかるかもしれない。ほんの僅かな希望が私の背中を押す。自分がどれだけ汚れているかを忘れて希望にすがろうとする。


「では、失礼しますわ。」


そう言って私にファム・シャル・ロッテは手をかざす。


いろいろな映像が頭の中に流れ込んでくる。一つの映画を倍速で何本も流しているような感覚。ほとんど何なのかわからないが一つ言えることがある―――どの映像にも私が誰かを殺したようなものが写っている。今思えば私はずっと相手を変に意識している。

無意識に相手からもらった食べ物を警戒した。

無意識に殺そうと武器を探した。

無意識に自分の手がとても汚れているのを気にした。

普通では考えないようなことをずっと考えている。これではまるで私が普段から誰かを殺したり、殺されかけたりされてるみたいではないか。

ファム・シャル・ロッテの表情が少し曇ったような気がした。


「あなたは...いえ、何でもありませんの。ここで終わりにしたほうがあなたのためですわ」


あの光景以外に何を彼女は見たのだろうか。ただただ彼女は悲しそうに私を見つめる。まるでこれからすることに謝罪するかのように、私を見つめる―――その目は罪人を見る目、私によく向けられる目だった。

突然、悪寒が走る。私はこの感覚をよく知ってる―――殺意だ。今、目の前の相手は私を殺そうとしている。呼吸が更に早くなり、鼓動の音だけが頭に響く。

直後、私が動くより前に背中に衝撃が走る。鈍い音がする。視界が揺れてとても気持ち悪い。立たないといけないのに力はいらない。これ、すごく、、、まず、、、い。なすすべもなく私の視界が徐々に暗転していく。「死にたくない」と思いながら私は意識を手放した。



気がつくと私はないもない空間にいた。壁や天井はなく、ただ地平線が広がっているだけ。音がただただ反響する。ただただ一人で歩く。どこに行くかも決めずにひたすら歩く。

私は死んだのだろうか。とても痛かったなあ。あれは多分骨の何本か折れてる。状況からしてきっと吹き飛ばされて木にでもぶつかったのだろう。受け身すら取れずに衝撃をもろに食らってしまった。

ファム・シャル・ロッテはあれを見てどう思ったのだろうか。もしかする彼女の地雷に触れるようなものがあったのだろうか。自分の手を見て罪悪感に襲われる。今までしたであろうことを考えたら妥当だろう。


「死んだらどうなるんだろう」


私の声だけが響く―――そう思っていた。


「さあ、どうなるんだろうね」


独り言のように呟いた一言に返事が返ってくる。振り返るが誰もいない。必死に声の主を探すがだこにもいない。ただ白い空間が広がるだけ。


「君は死んでないよ」

「どこにいる?」

「ここにいて、ここにいない。私は存在するけど、存在しない。探してもいるけど、いない。」

「どういうこと?あなたは―――」

「時間がないから手短に言うよ」


「最初にややこしいことを言ったのはあなたでは」という言葉を飲み込み話を聞く。色々聞きたいことはあるけど、とりあえず生きているらしい。少しホッとしてしまう。


「禁書を開いて―――そうだね、君が“いつも使ってる道具”を思い浮かんでみな。きっといいことがあるよ」

「どういうこと」

「じゃ、あとは頑張ってね〜」


そう言うと声の主は何処かに言ってしまったのか、返事をしなくなった。空間が音を立てて崩れていく。私は「死にたくない」。その一心で目の前の得体のしれない何かに立ち向かうことを決意した。



再び目を覚ますとさっきの森だった。体はさっきと同じでボロボロ。体のあちこちが痛くて仕方ない。心だって自分がとんでもない殺人鬼かもしれないという事実を受け止めるので精一杯なのに。

―――なんか、全部どうでもいいな。

頭の中で何かが切れる音がした。さっきの衝撃で持っていた禁書は開いてる。あとは私がやるだけ。いつも使っている道具を思い浮かべる。

私はいつも通りの動作で―――引き金を引いた。

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