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向日葵をあなたに  作者: 宇多良 和笹
アイビーを土蜘蛛に

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27ページ目 不快感を感じる少女

世界の欠片の前に立つ。今度は三人で観測に行く。火力面では神里がなんとかしてくれるだろう。知識面でもシャルがサポートしてくれる。あとは私が臨機応変に動ければいい。


「そろそろ出発なされますか?」


どうやら神埼が見送りに来てくれたらしい。後ろには見覚えのある機械が背負っていた。マキナが作った例の銃だった。


「それって前回持ってった銃?」

「そうです。観測で持ち込んだ道具は、開始時の状態で戻ってきます。今回はものが物でしたので私の方で預からせてもらいました」

「ありがとう。今回も持っていってもいい?」

「大丈夫ですよ、というよりもともとあなたのものですからご自由にどうぞ」


神埼から銃を返してもらい再び世界樹に向き直る。


「じゃあ、行こうか。マキナの観測に!」


世界樹がマキナの運命を綴る。文字が私達を包み込み世界に引き込むのであった。

華々しい夜の街。ネオンとホログラムがきらめきここが夜であることを忘れるぐらい明るい。


「すごいな。話はある程度聞いていたがここまでとは」

「そうだよね。後で少し見に行こうよ」

「・・・ふたりとも、観測中ということをお忘れなく」

「「はい」」


さて、気持ちを切り替えるとしよう。そろそろ例のロボットだがアンドロイドだかが虎兄さんを襲いに来るはずだけど…。虎兄さんの場所はだいたい見当が付いてる。

あたりを観察していると見覚えのある耳と尻尾を持つ男性を見つける。買い物中の虎兄さんだった。まだ例の機械通り魔の姿は見えない。


「さて、どうしようかな?」

「虎の少年を助けに行くのではないのか?」

「そうだけど…」


いきなり行くのもありだけど…確か観測に出会った人物の記憶はリセットされるはず。だったら今いきなり話に行っても混乱を招くだけだろう。それにここは人間に対する差別意識がある。できるだけヘイトは買いたくない。


「できるだけ前回と同じように進めたい」

「それはことが起こるまで少し待ちましょうか」

「了解した」


少しの間あたりを探索する。と言っても全員虎兄さんを守れるような距離での探索だけど。

それにしてもすごいな。前回は武器しか見てなかったけど、その他のものも充実してるな。機械のアタッチメントだったり、ホログラムの数々、よくわからない機械そして―――薬。


―――より頑丈にこの肉体を作成するのだ!

―――まずはこの薬からでよろしいでしょうか【ドクター】

―――〝必死に抵抗する〟

―――あああ!高まるこの気持ちを抑えられない!!!

―――〝叫び声〟

―――耐えてくれよ被検体【思い出したくない】


あの情景がフラッシュバックする。思い出したくもない日々が。あの死んだほうがマシの日々が。


「…反吐が出る」


本音が出てしまう。今まで受け入れていたはずのどす黒い何かが溢れ出る。


「なにか言ったか少年」

「いや、なんでもないよ。それより見てよ」


無理やり笑顔を取り繕う。話を逸らす。無理やり頭を冷静にさせる。こんなところで怒っても仕方ないこと。それよりも観測に集中するべきだ。

それに、記憶が少しづつだが戻ってきてる。ただ観測を行うよりも私に関する重要な何か―――観測で言う「持ち主が執着しているものを見つけること」が思い出す近道なのかもしれない。

だいぶ自分の中の怒りを沈めた頃。虎兄さんの買い物が終わったらしい。


「そろそろだね」


誰かの悲鳴が街に響く。

見てみると通り魔が虎兄さんめがけて突進する。


「神里!」

「了解した」


神里はなんの構えもせず虎兄さんの前に立つ。

もう結果はわかりきっているかのように。


「では、失礼する」


ほんの一瞬だった。

瞬き一回。

次の瞬間にはばらばらになった鉄の塊が転がっていた。


「やはりすごいぞ少年、戦車より硬い。しかし私の敵ではないな」


戦車切ったことがあるのかよ、なんてツッコミは後でするとして私は通り魔のもとへ向かう。

関節ごとにきれいに切断されている。胴体も三枚おろしになっている。私は頭部のモニターを確認する。


「誰だテメーは?」

「おぉ!この状態でも壊れてないんだ」

「黙れ下等生物風情が」

「よし、持って帰って色々聞こうかな」

「あ、あの〜」


振り返ると虎兄さんが困ったようにこちらを見ていた。

そういえばアーティファクトは所有者以外は見えないんだっけ。私は言い訳づくりのためにこっそりコートの中で刀を出す。


「さっきはありがとう〜」

「困ってる人がいたら助けるのは当然だよ」

「ここで話すのも何だし、僕達の工房で良ければお礼をさせてよ〜。そこの彼にも色々聞きたいしね〜」

「は?お前らに話すことなんて…」

「じゃあ、早速向かおう!」


案外話はスムーズに進み、マキナに会うことができた。たくましいからだと六本の腕を持つ人間とはかけ離れた姿。だが一番気になるのは顔が黒い般若の面で見えないことだろう。シャルのときはただの靄だったが今回はしっかりと般若の面の形になっている。これも改変による何かが影響しているのか?疑問は残りつつも観測は進んでいく。

全員の自己紹介が終わり、マキナが銃の修復作業に取り掛かる。残された虎兄さんはなにかの機械を探しに行ってしまう。できれば通り魔アンドロイドに色々聞きたいけど、あまりこの場を離れたくもない。

どうしようか悩んでいるところに機械を探し終えた虎兄さんが声をかけてくる。


「さて〜、僕はこの子に色々聞こうかな〜。君たちはどうする〜?」


思いがけず通り魔アンドロイドを尋問するチャンスが来る。私は迷うことなく答える。


「ついて行ってもいいかな?」

「いいよ〜」


都合よく話が進んでいく。きっと通り魔アンドロイドを破壊せず持ってこれたおかげで観測がうまく進んだんだと思う。これは神里に感謝だな。

ドア横の階段を下っていく。薄暗く少しジメジメした場所。上のマキナの作業部屋とは異なり様々な液体や薬剤がきれいに整頓されている。中には医療器具らしき物もあり工学と言うよりも薬学といった感じだった。


「これでも僕ここで医者やってるんだよ〜。といってもほぼグレーゾーンだけどね〜」


そう言いながら手際よく何かを調合しながら機械を操作する。通り魔アンドロイドにケーブルを繋げたり、薬を注入したり私には何をしているかさっぱりだった。


「準備完了〜。始めるよ〜」

「どんなことをしても無駄だ」

「はいはい、スイッチオン〜」


機械を動かすとさっきまであんなに吠えていたアンドロイドが急に大人しくなる。


「何したの?」

「う〜ん、あんまり詳しいことは言えないけど君たち人間で言うところの自白剤を飲ませたんだよ〜」

「そういった物があるのですわね。興味深いですわ」


そう言いながらシャルは周りの薬品を物色している。そういえばシャルはもともと薬の調合なんかをやってたんだっけ。そんなシャルからしてみればここは宝の宝庫なのかもしてない。逆に神里はあまり興味ないのか一言「あとは頼んだぞ少年」といったきり離れてしまった。私はアンドロイドの尋問に加わる。


「じゃあまず君の型番を教えてね」

「WAー37ー564、デス」

「へ〜、ずいぶん古い型番なんだね」

「所属は?」

「ファイヤーマニス、デス」

「えっと〜次は…」


次々と情報を聞き出していく。その殆どはよくわからないことばかりだった。しかし尋問を邪魔するのも良くないと思い今は口を閉じる。


「さて、ここからは君の主についてだよ〜。どうして僕を襲ったの〜」

「依頼…サレマシタ」


先ほどとは異なり返答に少し詰まる。


「誰に〜?」

「・・・ワカリマセン」

「どんな依頼だったの〜?」

「・・・イ、イエナイ」


無機質な返答ではなかった。そこにははっきりと「恐怖」の感情がにじみ出ていた。機械であるはずのそれが人間味を出し始めている。なんとも言えない嫌悪感が体中を駆け巡る。


「どうして〜?」

「・・・コ、コロサレ、ル」


嫌悪感を感じる私とは対象的に虎兄さんは尋問を進める。


「誰に?」

「エラー、エラー____」


画面は赤く点滅し、画面いっぱいに「Error」の文字を映し出す。

ついに通り魔アンドロイドはエラーを吐き出すのだった。

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