【規制済み】禁じられた神の顕現
司書とは様々な危険と常に隣り合わせだ。禁書へのダメージ=死の世界で彼女らは観測する。
観測での禁書のロスト。
敵対組織との戦闘。
改変の影響。
数え切れないほどの危険に正面から向き合わなければいけない。
それらに対抗すべく編み出された必殺技―――最終章観測
プロローグからエピローグまで3から6個の場面を強制的に追体験させる。回避不可の攻撃。もちろんデメリットもある。
・使用中は禁書の能力を使えない
・発動中に負った傷はすべて禁書に移る
・一度追体験させた章はエピローグを使用するまでは使用不可になる。
しかし当たれば禁書の運命に見合った力が使える。どれだけ不利な状況でも逆転できる。必殺技の名ふさわしい最後のあがき。
ファム・シャル・ロッテの最終章観測―――哀れなる魔女の終演。魔女として対象を裁かれる運命の強制。魔女かどうかの判別が行われ、処刑されるというシンプルな運命。
しかしその内容は残酷。魔女の判別はほぼ確実に魔女判定が下される。その後の処刑方法も幻覚を見せての首吊り、死なない程度の電流による拷問椅子、最後に憎しみに溢れた火あぶりという肉体的にも精神的にも想像を絶するような絶望的な運命が待っている。
常人であれば発動中に自害しかねない。だからこそファム・シャル・ロッテはギリギリのところで手加減していた。ただ、観測中の不注意や甘さにお灸を据えてやる。そんな感覚だった。
彼女は忘れていたのである。
操琴音が何を抱えているのか―――否、誰を宿しているのかを
彼女の運命は終りを迎えていた。流石にやりすぎたかな、後で謝罪しよう。そんなことを考えていた。
「琴音流石にやりすぎましたわ。心から謝罪を」
「・・・」
いくら加減をしたとはいえあれだけの攻撃を受けたんだまずは手をしなくては。
その考えでいっぱいだった。
「・・・どうしましたの?」
小さな違和感。
しかし、その小さな違和感をよそに近づく。
小さな疑問が少しづつ大きくなる。
直立不動の人間に触れようとしたとき気づく。
―――なんで立ってられるの?
気づいたときには遅かった。
ひとりでに動く禁書。
持ち主は静かに呟く。
「プロローグ―――旧支配者の降臨」
文字が世界を、運命を刻む。
夜空から星がこぼれる。
眠りより覚める。
終演まであと僅か。
「崇めよ我らが【規制済み】を」
「なんで…す…の?」
眼の前には例外な存在が立っていた。
それは【閲覧してはいけません】。
それは【観測してはいけません】。
それは【規制しなければいけません】。
ファム・シャル・ロッテは本能で察してしまった―――勝てない。
「あはははははははは」
狂気に満ちた笑い声だけがその場に響く。
少女はその運命を拒絶し、狂気にその体を委ねる。
魔女ははその運命に絶望し、ただ呆然と見る。
もはや混沌に満ちた運命。
絶望という名の演劇を受けれていた。
ただ一人を除いて。
「だめですよ。まだその時ではありません」
禁書が閉じられる。
「お二人にはまだこの領域に来るには早すぎます」
少年はそっと少女の目を塞ぎ、魔女に語りかける。
「シャルさん、困りますよ。やっと舞台が整ったばかりなんですよ。ここで退場されると計画が狂います」
「・・・えぇ、それは…困りますの」
少年は少女を優しく撫でる。最初にあったときと同じように―――ただ優しく愛情を注ぐ。
「さあ、疲れたでしょう。お腹を満たすためにご飯にしますか?疲れを癒やすために寝ましょうか?それともすべてを忘れて快楽に体を委ねますか?」
少しの沈黙のあと少女は答える。
「モウ、寝る」
少女はなんの疑問もなく少年の体に寄りかかる。少年は少女を抱えて部屋に向かう。次の観測に備えて眠りにつくのだった。
「皆さん、今日見たことは他言無用でお願いしますね?」




