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向日葵をあなたに  作者: 宇多良 和笹
ポビーを魔女に

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20/25

19ページ目 新たなページをめくる少女

とても不思議な夢を見た。

顔も覚えてないはずの仲間とともに愉快な日々を送る毎日だった。


とても頼りのある偉大な魔女【ファム・シャル・ロッテ】。

技術屋で世渡り上手な土蜘蛛【人懐っこい声だけが聞こえる】。

しっかりものの少年と甘え上手の少女の双子【その笑顔だけが残っている】。

気難しい少年【反抗的だが寂しがり屋なのは知っている】。

そして―――ともに殺し信頼しあった神父【削除済み…】。


もう一つの大切な場所だった。わたしがいるべき場所とはまた違った楽しさがそこにあった。


守るべき妹たち【クロユリ】と【シロユリ】

信頼できる私の従者【銀のナイフ】

癖はあるけど腕は信用できる武器屋【からくり人形】

私の家族たち【削除済み】


声が、顔が、姿が何も思い出せないのに自分の大切な人たちで居場所だったのを覚えている。




今日も普通の朝が来る。何の変哲もないごく一般的な朝。私が望んだ一日が今日も始まる。それなのになぜだか心にぽっかり穴が空いたような喪失感と罪悪感が同時に襲う。

さっきの夢は何だったのだろうか?あれは私の失った記憶なのだろうか?二日酔いなのかまだ頭がふわふわしてうまく思考がまとまらない。


「ごきげんよう琴音」

「・・・おはようシャル。神里は?」

「散歩に行きましたわ。アーティファクトの彼は取り込まれたわたくしと違って自由の行動できる範囲が広いですわね」

「・・・そうなんだ」


会話がどうしても上の空になる。シャルもそれを察してか心配してくる。


「どうかしましたの?なんだか元気がありませんわ」

「・・・少し…記憶を思い出したんだ。私の他にシャルと5人…大切な人というか…居場所が会ったはずなんだ。それだけじゃない。ここに来る前に大切な…私の家族が…いたはず…なんだ」


言葉がどんどん詰まっていく。視界がにじみ何かが頬を伝い落ちていく。黒いドロドロがどんどん心と身体を覆い尽くそうと増えていく。


「思い…出さないと。早く思い出さないと」

「あなたはいつもそうですわね」


シャルがポツリと呟く。その声はかつての友人に向けられたものだった。


「あなたは戦闘以外で誰かを頼ったりしませの?」

「・・・」

「問題を一人で抱え込む悪癖は治りませんのね」

「・・・ごめん」

「まあ、それでもわたくしはあなたの友人としてできることはさせてもらいますわ」

「ありがとう」

「ふん。早くその涙を拭いてくださいまし」


きれいなハンカチが手のひらに現れる。そのハンカチで涙を拭く。そうだ。こんなところで泣いている場合ではない。せっかく目の前にかつての自分を知っている人がいるんだ。さっきの夢について聞けるかもしれない。何も進んでないわけではない。大丈夫。そう思うと心のドロドロが減っていく。少しずつ冷静に考えれるようになる。

おそらくシャルを含め最初に出てきた5人はここ架空図書館リバリルの司書たちだろう。次に出てきた人たちは私の家族…なのだろう。そうなると家族はともかく司書たちに関してはシャルはなにか知ってるかもしれない。

考えがまとまったところで私はシャルに質問をすることにした。


「ねえ、シャル。架空図書館リバリルの司書ってどんな人がいたの?」

「そうですわね。まずリーダーであるわたくし、次に機械担当のマキナ、輸送兼運搬のオプティとクロード、医療担当のカガミハヤト、改変治癒担当の…」

「私こと神埼シグレです」

「わあああ!」


背後から神埼がそっと私の頭に手を置く。びっくりして心臓が飛び出そうになる。神埼はニコニコしながら会釈する。手からはいつものあの温かさが流れてきて少し和む。よく見ると背中になにか背負っているような気がするがポカポカしてしれどころではない。そんな私をよそに二人は会話を続ける。


「あら、シグレ様。いらっしゃたの?」

「やあ、シャルさん。随分と小柄になりましたね」

「色々ありましてよ。それよりもわたくしのこと認識できますのね」

「まあ、あくまでも禁書の一部ってことでアーティファクトとは別物なのでしょう。そういった意味ではオプティさん達と同じくくりなのでは?」

「そういうことですのね。それにしても…」


そこから二人の世間話が始まった。内容の殆どは私が忘れてしまった人たちの昔話であまり会話についていけなかった。どこか懐かしいようなでも一人ぼっちで寂しいようなそんな感情が私の中でぐるぐると渦を巻いていた。

私がじっと二人の話を聞いているとシャルが何かを察したのか神埼に尋ねる。


「そういえばシグレ様何か用事があってこちらにいらしたのでは?」

「そうでした。あなたに用がありました」

「私?」

「ええ、そろそろ返そうと思いましてね」


そう言って渡されたケースを開けると見たこともない銃だった。見た目はスナイパーライフルだが銃身が真空のガラスになっている。弾倉にも銃弾はなくバッテリーになっている。何より見た目が銃というよりメカに近い。それに見たことのない刻印がほどこされている。見た感じ蜘蛛が工具を持っているような…。

そんなことより試し打ちがしたくてしょうがない。その見たこともないフォルムに好奇心が湧き立てられる。ウズウズしていると神埼はもうわけなさそうに言う。


「すみません。それは現在使用できません。普通の銃と違い充電式のライフルなので専門の方がいないと撃てないんですよ」

「そうなんだ」

「では、その方を観測しに行けばいいのではなくて?」

「というと?」

「その中の刻印は司書の技術屋マキナの刻印ですわ。記憶を取り戻すためにもマキナの禁書を観測すれば本人に会えるのではなくて?」

「そうだね。私には取り戻さなきゃ行けない記憶もあるし」

「それでは次の観測のめども立ったことですし、世界の欠片へ向かいましょうか」


期待を胸に世界の欠片へと向かう。世界の欠片は今日も新たな禁書を生み出している。私は世界の欠片へと手を伸ばし忘れてしまった技術屋を思い浮かべる。

また殺されるかもしれない。

また嫌なことを思い出すかもしれない。

それでも私は前へ進まなければいけない。


私は再び失ったものを取り戻すため―――新たな物語の観測を行う。

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