17ページ目 かつての友人を観測する少女
彼女の復讐劇は終わりを告げようとしていた。
濡れたコートを脱ぎ準備する。帽子を深く被りその時をじっと待つ。
「陬√°縺ェ縺�→縲ゅo縺溘¥縺励�蟷ク縺帙r螂ェ縺」縺溽スェ莠コ縺ォ蝣ア縺�r」
改変されたシャルは私達を見つけるために手当たり次第にレイピアを放つ。見えないはずの表情からは焦りや怒りがにじみ出ていた。段々と雑になっていく魔法。森は更に燃え黒煙が周囲に満ちていく。段々と悪くなる視界。そして―――その時がきたのだ。
突然、一発の銃声が響く。シャルの眼の前にはコートを着た人物が立っていた。黒煙で顔は見えない。だが、やっと見つけた復讐すべき人間。シャルは感情のままにレイピアを放つ。
魔法と弾丸が交差する。周囲のものは一つ残らず破壊されていく。美しい森は焼け野原と化していった。
弾切れと同時に魔法も尽きた。
両者一気に近づく。
互いの手が自分たちの命に近づく。
その命に届いたのは―――ファム・シャル・ロッテの魔法だった。
木製の十字架に貼り付けられる。
そして罪人を火あぶりにする。
その行動はかつて自分とその幸せがされたことへの報復かのように。
復讐すべき人間を断罪する。
森に雨が降り出した。それは復讐を終えた者の涙のように強くなっていく。
ファム・シャル・ロッテにはもう何も残っていなかった。魔法も、その美しさも、かつての幸せも。全て燃やされなくしてしまった。焼け野原の中央には復讐を遂げた女性が立っていた。魔法源である黒いヘドロはなく、ぼろぼろになった赤黒いローブと三角帽子、そして胸にある赤い指輪だけが彼女をファム・シャル・ロッテだと証明する。
彼女は焼け焦げた十字架をただ呆然と見ていた。彼女は何を思っているのだろうか。人間へ復讐を彼女の心にはもう何も残っていないんのかもしれない。復讐とはそういうものだから。やり遂げても何も残らない。あるのは喪失感だけ。
だから、復讐なんてするべきではないのだ。
後ろから近づく軍服を着た人影―――シャルは気づかず燃えたコートの残骸を見ている。
雨音が足音を小さくする。
気づいたときには遅かった。
振り返ると同時に“私”は刀でシャルを切る。
刀は素人が使えばただの鈍らと化す。
人なんて切れない。
しかし、私はその動作を何度も見た。
目にも止まらぬ一太刀。
シャルの体は真っ二つに切れ真ん中には赤い指輪だけが残る。
私はその大切な指輪―――禁書のコアに触れた。
なにもない空間。何度も見てきたその白さにもう驚きはなかった。
「お見事ですわ」
振り返るとシャルが立っていた。あの黒いドロドロは一切なく、今度は表情も見える。長くよく手入れの行き届いた金髪、赤いルビーのような瞳。赤いローブと三角帽子のよく似合うとても美しい魔女だった。
「それにしてもどうやって入り抜けましたの?わたくし完全に燃やしたと思いましてよ」
「まあ、色々犠牲にしたけどね」
敵意はない。むしろ今まで以上に優しさというか母性が溢れている。私は安心してシャルに説明する。
「入れ替わっていたんだよ。私とアーティファクトである神里がね」
「・・・?」
「まあ、無理もないよ。だってシャル視点は“神里は認識できない”からね」
「そうですわよ!黒煙で見えなかったのもあってほぼコートを目印に魔法を撃っていましたわ」
「シャルを見ていて思ったんだ。神里じゃなくていつも“刀”だったなって」
一番違和感があったのは私が水攻めにあってる時だ。あの場面で警戒すべき神里のことは放置して私だけに注意を向けていた。刀での攻撃が効かないならまだしも切られたときに痛そうにしていたことから無傷ではない。それに刀が飛んできたときもとても驚いていた。
「そこでシャルが見えているのは、私と私が具現化したものていう仮説を立てて私のコートと念の為神里の軍服を交換したってこと」
「そうなるとわたくしが火あぶりにしたのは…」
私は古びたドッグタグを指でなぞる。もういない彼に思いをはせながら…
「死んでないぞ!」
あの元気な声が空間いっぱいに広がる。声の主は胸を張ってドヤ顔で立っていた。
「生きてたんだ」
「いや、マダム・レッドはまだしも少年はわかっていただろう」
「・・・マダム・レッドってわたくしのことですの?」
「そうだが?」
「わたくしには…」
「はい!とりあえず説明するよ」
無理やり話を戻す―――遡ること火あぶりの最中。
私はその光景をただ見ることしかできなかった。もしここで私が下手に行動すれば作戦が失敗する。ただ拳を握って見ることしかできない―――そう思っていた。
「少年ーー!」
神里がこちらをキラキラ度が増した目で見つめてくる。どうやらアーティファクトに攻撃が効かないらしい。後で神埼を問いただそう。観測の時みたいに説明してないことがるのかもしれない。私はシャルにバレないようにそっと安堵のため息が出した。とりあえず生きていて良かったという安堵と頼むからじっとしていてという感情で私の心はぐちゃぐちゃになりながらじっと隙を伺っていた。
―――回想終了
「まあ、納得できないこともありますがわたくしは負けましたの。敗者は敗者らしく勝者の命を聞きますわ」
シャルは一冊の本を差し出す。おそらくシャルの禁書なのだろう。私は自然に自分の禁書を取り出す。互いの禁書は宙に浮きひとりでにページを捲る。そして勢いよくぶつかり一つの禁書となる。私のもとに降りてきた禁書を開くとよくわからない謎の言語でページが綴られていた。
「ありがとう」
「ふふ、しっかりと役に立ててくださいまし」
シャルは上品に手を降る。私も手を降る。
こうして私はかつての友人―――原初の魔女ファム・シャル・ロッテの観測を終えた。




