16ページ目 何度も手を伸ばす少女
何もかも燃えてしまった森。灰と炭、そして復讐心だけがこの森を支配していた。中央にはファムシャルロッテがいた。黒くドロドロとしたなにかに包まれ、その心には人間への憎悪だけがあった。私と神里は武器を構える。
「罪人へ…裁きを。ざい…ニンへ…サバ…き…ヲ」
チクチクと殺気が体に刺さる。しかし、恐怖心はない。背中には強い味方がいる。決意を胸にシャルと向き合う。
―――わたくしと踊ってくださる?
シャルの声が頭に響く。あの優し組手炎のように温かい声が私に問いかける。
私は彼女の問いに答える。
―――もちろん、喜んで
シャルは何かを叫ぶ。頭上からギロチンが降ってくる。私と神里は避けてギロチンの後ろにかくれる。炎のレイピアの猛攻が始まる。ギロチン越しに熱が伝わる。私は銃を握り神里との作戦を思い出す。
「最初にギロチンが降ってくるからそれを躱してギロチンの後ろに隠れる」
「そうだな。そしたらレイピアの集中砲火が来るんだったな」
「それが終わり次第シャルに急接近する」
「了解した」
シャルの攻撃が止む。黒いドロドロの量が減り、胸の指輪が見える。
「行くよ」
私は神里に合図を出して一気に距離を詰める。シャルは反動で動けない。神里はシャルの手足を切る。シャルは神里の再生に集中して私から一瞬注意がそれる。私はその隙を見逃さない。指輪に手を伸ばす
―――しかし、その手は届かなかった。
視点が急に上がる。首に圧力がかかり呼吸ができない。あの絞首だった。私は用意していたナイフで即座に首に巻きつた縄を切る。そして後ろに下がる。私がいたであろうところにギロチンが降ってくる。
「少年、大丈夫か!?」
「私より次の攻撃に備えて」
私が叫ぶと同時に回復しきったシャルがギロチンの雨を降らせる。わたしたちは森に逃げてギロチンを交わす。空気を切り裂く音がすぐそこまで近づく。しかし、一筋の光がシャルに向かって放たれる。どうやら神里が刀を投擲したようだ。シャルは突然のことで刀に集中が行く。ギロチンの雨がやむ。
私はギロチンの後ろに隠れて息を整える。
「少年!」
「わっ。びっくりした」
「すまない、刀をもらっていいか」
私はすぐに刀を具現化して渡す。心臓が痛い。肺が焼けるように熱い。あのレイピアの熱が外と両方を燃やしていく。
「どうする少年」
「もう一度攻める。行ける?」
「了解した」
呼吸を整えてシャルの前に姿を出す。シャルは私に睨み炎のレイピアを飛ばす。私は銃で軌道を逸らす。レイピアと銃弾の互いに弾ける音が森に響く。神里は私の防ぎきれなかったレイピアを切っていく。
指輪まであと1m。更にシャルの魔法のエネルギーになっているあの黒いドロドロの残量もあと少し。
行ける!―――そう思っていた。
突然シャルが私に向かって手をかざす。すると、冷たい感触とともに視界がゆがむ。息ができない。球体状に生成された液体が私の体を覆う。体の酸素が奪われ、溺死させられる。
いくらもがいてもそこから抜け出すことだできない。銃を使おうにも完全に水没しているせいで使えない。頭の中には「死」の文字でいっぱいになり冷静に具現化できない。
「―――!」
何かを叫びながらシャルに斬りかかる。そんな神里に目もくれず私を殺そうとするシャル。目にも止まらぬ一太刀でシャルの腕は切り落とされた。切り落とされた腕はドロドロに溶けていく。それと同時に液体は弾け私はやっと呼吸できるようになる。何度も咳き込み足りない酸素を急いで補給しようとする。
「縺ェ繧薙〒縲√↑繧薙〒縲√↑繧薙□縺医∴縺医∴」
シャルは何かを叫びながら腕を抑える。神里は私を抱えてギロチンの後ろに隠れる。
呼吸が苦しい。頭がチカチカする。耳鳴りが止まらず神里が何かをいっているのかわからない。立とうにも力が入らない。何より、死ぬかもしれないという考えで震えが止まらない。
「…ねん。…ょねん。少年!」
呼吸が段々と落ち着き、神里の言っていることがわかってきた。森のあちこちでものすごい爆音がする。どうやらシャルが手当たり次第にレイピアをぶつけているようだ。
シャルはあのあと私達を見失ったらしい。段々と冷静に状況を把握する。近づくにはシャルのドロドロを魔法が打てなくなるぐらいにはなくさないといけない。じゃないといくら隙を作ってもカウンターでこっちが死ぬ。
考えてる時間はあまりない。こうしている間にもシャルの体力は回復しつつある。刻一刻と時間が死とともに迫ってくる。こちらには考える余裕も残されていない。
一応、作戦はあるにはある。ただどっちかが死ぬ可能性、特に神里が死ぬ可能性が高い。それに成功するかもわからない。そんなものに神里を巻き込んでもいいのか?たいした確証もないのに突っ込むべきだろうか?
様々な不安要素が私の決断を鈍らせていく。間違えれば…
「少年!」
神里の声に圧倒される。神里は真剣な表情で私に問いかける。
「何を迷っているんだ?彼女を救うのだろう」
「救いたい…でも」
「なら私を利用しろ」
いつものキラキラとした目で私の頭を撫でる。その手がとても温かい。
「神里、これをやれば死ぬかもしれない。それでもついてきてくれる?」
「君を信じるよ。だから、自信を持て少年!」
この温かさと信頼に背中を押され私は決断する。




