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向日葵をあなたに  作者: 宇多良 和笹
ポビーを魔女に

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13/23

13ページ目 迷い迷う少女

目を覚ますと架空図書館リバリルの病室だった。神埼がこの前と同じようにベットの横の椅子に座ってい本を読んでいる。

段々とあの光景がフラッシュバックしてくる。森の焼ける匂い。ギロチン越しに伝わる熱。レイピアの爆発音。そして、自分の首が切られたことを思い出した。


「うわああああああああああああ」


息が詰まる。過呼吸で心拍がどんどん上がる。自分の首がつながっていることを何度も確認する。最後首を切られて自分の身体が力なく倒れる音、首の断面のあの赤さ、上がれ出る血の生暖かさを思い出す。思い出せば出すほど感覚が体につきまといとても気持ち悪い。

いつの間にかベッドから落ちていた。私は近くにあったゴミ箱を力強く掴む。胃の中の物と体の不快感をすべて口から出す。喉を伝い昼ご飯の残骸が口から出される。全て出し終えたはずなのにあの不快感だけが体に残る。


「う、うう。うわあ、ああ」


心の中もあの黒くドロドロとしたなにかがどんどん溢れていく。無理に吐き出したせいか涙も止まらない。必死に忘れようと指を噛む。口には胃酸と血の味で余計に不快になる。

死んだときのあの感覚も忘れることができないが、一番頭に残っているのはシャルのあの顔だ。記憶の中のあの幸せそうな顔を思い出してしまう。あの異形の顔が苦しそうに見える。恐怖と罪悪感が混ざり合って思考がグルグルする。今のシャルは私を殺そうとしているのに。でもシャルは子供も幸せも失っていて。自分は何をすればいいのか混乱する。どれが正しいのか私にはわからなかった。


「大丈夫ですか?」

「た…たす…たすけ」

「助けてほしいですか?」

「たす…け…なきゃ」

「・・・」


神埼は黙り込み、何かを考えたあと私を撫でる。いつも通り心のドロドロが消えて温かさだけが残る。混乱していた頭がようやく正常になりつつあった。

ある程度落ち着くと神埼が話しかけてくる。


「今回の観測はどうでしたか?」

「とりあえずシナリオ崩壊までは行けた。けど…全く刃が立たなかった」


問題点を改めて整理する。

まず、攻撃手段がない。前回はたまたま大木で道連れにできたけど今回はそんな都合のいいものはない。

次に回避手段が少ない。特にあのレイピアの猛攻はとても厄介でギロチン以外での回避手段がない。

最後に接近したときの隙が大きい。今回の敗因である接近時の首吊りからの断首のコンボ。

この3つに共通するのはすべて事前準備がなってないことだ。銃以外の抵抗手段がなく完全に油断していたことが一番の原因だった。


「あなたほどの実力者であれば殺すことなど造作もないのではないでしょうか?」

「・・・それはできない」

「なぜですか?」


神埼の笑顔が少し怖く感じる。しかし気の所為だったのか直ぐに元に戻る。もとの笑顔になったはずなのにさっきの不穏なものが頭に引っかかる。でも、まあ気の所為だろう。


「彼女は完全な被害者だから。できれば殺したくない」

「あなたに敵意があってもですか」

「・・・うん」


力なく呟く。神埼はどう思っているのだろう?自分をヘタレだと思っているのだろうか。目を合わすことができない。

少しの沈黙が続いたあと神埼は呼んでいた本を閉じて私と向き合う。本の閉じる音で少し体がビクつく神埼は微笑みながら話す。


「では、少し抵抗手段を増やしましょうか」


そう言ってついてくるように私を引っ張る。私は精神的に疲れた体にムチを打って神埼についていく。連れてかれたは世界の欠片の前だった。世界の欠片はいつも通り禁書を生み出している。


「禁書には様々な能力があると言いましたよね」

「うん、神埼の不死とか私の具現化とかあった」

「禁書の中にはアーティファクトというものを生み出すものがあります。運命が能力を持った生物や物質を生み出します。例えば何でも切れる剣、どんな病気や怪我でも直してくれる精霊など様々です」

「禁書の能力とアーティファクト?の違いって何があるの?」

「最大の特徴は禁書を開いてなくても発動できる、そして第三者からは見えないというところです。ただどのアーティファクトが来るかはランダムなので自分の禁書との相性によってはデメリットにもなります」

「まさに諸刃の剣だね」

「そうですね。また一度出したアーティファクトは消したりすることができません。それでもやりますか?」


しかし、今抵抗手段がないのも事実。少しでも可能性があるなら試したい。私は真剣に神埼を見つめる。拳を強く握る。神埼は私の決意を受け取ったのか私をあの笑顔で見つめる。


「では観測の時と同じように世界の欠片に祈ってください」

「わかった」


私は世界の欠片の前に立ち目を閉じる。

今度こそ私はシャルを救いたい。その一心で世界の欠片に祈る。


―――少年、その願い叶えてやるぞ


元気のある中性の声が私の頭に響く。

目を開けるとそこには軍服を着た人が立っていた。

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