表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/23

9 エルの夢

エルの長兄は、飛竜隊を目指していたようだ。

だが飛竜隊に入るためには、実力もさることながら、お金がかかる。

飛竜を手に入れるためには自分で卵を取ってくるか、買ってこなければならない。

領主のお抱えなのに領主は、飛竜を持っている人しか雇わないのだとか。

飛竜を取ってきた後も訓練をするのにもお金が掛かる。餌は飛竜自身が採ってくるので餌代は掛からないが、飛竜の為の小屋も必要だ。大きくなるまで結構なお金が掛かるそうだ。そうして、やっと領主お抱えの飛竜隊に入ることが出来る。そこまで行けば後は楽になるそうだ。領主が総て面倒をみる。

エルの父親は財産をなげうって、長男のために卵を手に入れ育てていたが、飛竜が獲物を捕りに行って死んで仕舞った。

今までの苦労が水の泡になり、家には借金が残った。騎士だったが、極貧生活だった。


エルは冒険者をしながら、飛竜の卵を手に入れ、飛竜を育てて実家にあげたいそうだ。

ここの森には野生の飛竜がいるそうだ。其れを捕りに行きたいと僕に言ってきた。

卵は、巣の中に五個は確実にあるはずだ。だから他の人に買って貰えば、飛竜を育てる資金になる。と言う事らしい。

でも僕は疑問に思った。こんな深い森で飛竜が飛び回るのは、大変ではないだろうか。もし飛竜が居るとすれば、岩山のような所では無いだろうか。

エルは誰にその話を聞いたのだろう。まさか、誰かにからかわれたのでは無いだろうか。

「エル、本当にここに飛竜が居るとすれば崖か、高い山だと思う。この森にそんな場所はあるかい?」

エルはパット明るい顔をして、言った。

「そうか!其処を探せば良いのか。何処を探せば良いか分らなかったけど、そう言う場所なら、心当たりがある。」

と言う事で翌日エルと一緒に行く事になった。

ぼくも、この頃飛竜が欲しくなってきた。移動の自由もさることながら、飛竜の賢さが、目に焼き付いて是非とも相棒として欲しくなったのだ。

住む場所を決めてしまえば飼うことが出来る。街から離れた場所に拠点を設ければ、そこから、好きなところに行けるでは無いか。調教は自分で出来るはず。もし難しいのなら誰かに聞いてもいい。

領主のお抱えなんかには生りたくは無い。純粋に飛竜が欲しくなってしまった。

多分テイムは領主に飛竜を貰ったのだ。孤児には無理だろう。其処までかわいがって貰った領主を彼は親のように感じていたのかも知れない。


僕はエルが知っているという崖まで来てみた。僕の隠密のスクロールを使い、3日掛けてきたのだ。

ここは、森が二つに割れてしまったようにぱっくりとした裂け目があった。崖のそばまで行き下を覗いてみると、居るわ居るわ、其処は野生の飛竜のたまり場のようになっていた。ここまで来るのに結構時間が掛かったところをみるとこの割れ目がある場所は、森のかなり深いところなのだろう。

僕は巣がある場所にロープを使い降りていった。

巣には八個の卵があった。其れを僕の魔法鞄にいれ、一個だけ残しておいた。

僕は直ぐ隣にある巣にも捕りに行った。其処には大きめの卵が四個あったので、三個だけ取った。

上にいるエルに合図を送るとロープが引っ張られて上がっていく。飛竜が帰ってくる前に総てを終わらせて、僕らは宿に帰った。

エルは興奮していた。僕は一個を残して、エルに総て渡した。エルは驚いた。

「これは君が取ってきたものだろう。僕にはこんなに貰う権利は無いよ。」

「いや、エルの情報が無ければ、僕は知らないことだった。君のものだ。」

エルは涙ぐんで、僕にありがとうと言った。そして早く実家に帰ってこの事を知らせたいと言って、帰って行った。

あの卵を売れば借金はなくなるだろうし、お兄さんもまた飛竜隊を目指せるかも知れない。


僕はウキウキしながら、僕の卵をみた。小さめのを貰っておいたのだ。ダチョウの卵くらいの大きさだ。色はまだら模様で他の飛竜の卵より鮮やかな色彩だ。これが孵ったらどんな飛竜になるのだろう。大事に温めて、大事に育てよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ