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8 次の街に行こう

ここの冒険者は皆ペアを組んでいた。パーティーを組んでいる冒険者も居るが数は少ない。

パーティーを組んでまで倒す強い魔物がいないためだろう。せいぜい二人で倒せば間に合うていどだ。

初心者は初めパーティーを組むようだ。その内解散していく。分け前が少なければ、生活できないからだ。

この街から北に、トロンという町がある。馬車で行くと3日かかる。其処は僕がいた森の東側に位置していて、魔物が多く出る。森の中には強力な魔物も居るらしい。僕はあの、まっただ中にいたことになる。良く無事でいたものだ。

其処には商人達が魔物の素材を仕入れに沢山集まっている。僕も行って見ることにした。

商人仲間と一緒に馬車で行く。飛竜で飛べばせいぜい五時間で着く距離が、こんなに掛かるんだ。道はでこぼこしているし度々休憩が必要だし、夜は休まなければならない。おまけに道は曲がりくねっている。

平坦な道は少ない。登りもあれば下りもある。飛竜はやはり素晴らしかった。頭も良いし。

馬車に乗り続け尻が痛くなってきた。僕は護衛達と一緒に歩くことにした。

「旦那、俺等と一緒に歩くなんざぁ、物好きだね。護衛に転職かい?」

「僕は冒険者であり、魔術師でもあるからね、役に立つと思うよ。」

「そりゃ剛毅だ。あはは。」

信じて居ないみたいだ。まあ見た目は優男だから、冒険者には見えないだろうが。この杖をみても分らないとは。鞄から自作のスクロールを出して見せてみる。

「これは僕が作った、防御のスクロールだ。使ってみるかい?」

護衛の男はビックリして、

「そんな高価なもの、払える金、持っていねえよ!」

そうか、高価だったな。自分で作ればインク代と羊皮紙代くらいだ。

「初めて作ったものだ、やるよ。使ってみて感想を聞かせて欲しい。」

護衛の男は恐る恐る手を伸ばし、懐に入れた。今夜にでも使って欲しい。夜くらい安心して眠りたいだろう。僕は何時も使っているから効果は分っていたが、彼等は疲れが出てきている。

明日にはトロンに着く。

その夜、野党が襲ってきた。矢が疎らに飛んでくる。

僕はスクロールを配置していたのでその場で立ち上がり、憂い無く魔法を放った。野党は全部で一五人。

風の刃を前方にむかって放った。野党は次々に首が飛び、五人が片付いた。其れをみた野党は怖じ気づいた。逃げ腰になったところを護衛の人達が、簡単に倒していく。あっという間の出来事だった。

死体がそこいら中に散らばっている。野党に初めに襲われた護衛は僕のスクロールをきちんと使っていたので事なきを得たようだった。

「イヤー、旦那。助かったぜ。このスクロールも、大した効果だぜ。ありがとうな。魔術師さん。」

商人達も物陰に隠れていて無事だった。護衛の何人かが軽い怪我を負っていた。治癒の薬を飲んでいたので、直ぐに治るだろう。

商人達は僕が魔法を使ったのをみて、初めて魔術師だと知ったようだ。次々にお礼を言って、僕のスクロールを買いたいと言ってきた。結構な儲けになった。

これは商人よりも、こっちの方が良いかもしれない。色んなスクロールを作って売ってみよう。

これから行くトロンは魔物素材が格安で手に入る。羊皮紙も安く手に入りそうだ。


トロンに着いた僕は皆と別れて単独行動を取ることにした。帰りも一人で帰ると言うと皆がっかりしていたが、僕はこの街がもし気に入ったら此処に暫く居ようと思っているのだ。

まずは宿だ。街の中にはかなりの冒険者がいた。この街には冒険者は簡単に入れるみたいだ。

街によって、違うと言うことが分った。ドルンの街は冒険者に対しては、優遇してはいるが、やはり色めがねでみていた。ここは完全に冒険者を当てにしている。

鑑札など必要されていないようだ。只、荒くれ者が多い。あの野党も、ここのもの達だろう。治安はかなり悪そうだ。


宿は街の中心から離れた場所にある小さな宿屋にした。

其処には家族連れが多く泊っていた。3階建ての横に幅広い宿屋で、部屋数は多くは無いが広々とした部屋だった。風呂は付いていないがトイレは付いていた。トイレと言っても、個室があって、其処におまるが置いてあるだけだが。毎日宿のものが、おまるを交換しにやってくる。

食事も朝夕と付いていて、頼めば昼も食べる事が出来る。かなり住みやすそうだ。

僕はここで暫くスクロールを作ろうと思う。偶に、冒険者もしてみよう。

一週間ここに籠もって持っている羊皮紙を使い切ってしまった。インクも残り少ない。

そろそろ外に出てみよう。ここに泊まっていた家族連れの顔ぶれもいつの間にか変わっていた。冒険者らしき人達がちらほらいた。

その内の一人が僕に話しかけてきた。

「君、冒険者かい?それとも商人?」

「どっちもやってます。」

「へえ、じゃあ字が書けるんだ。いいなあ。俺、文字が読めないから、何時も適当なこと言われて、損しちゃっててさ。俺と組んでくれれば助かるんだけどな。」

組むことは考えていないが、字は読んであげよう。と言うと喜んで、これから冒険者ギルドに、一緒に行こう。と言う事になった。人の良さそうな、騙されそうな青年だ。

年齢を聞くと十八歳だという。僕と同い年だ。貴族の子供らしいのに字が読めないとは、聞くと、貴族も色々ある。と言われた。

貧乏騎士の四男坊で十三歳で、独立したそうだ。剣術には自信があったので、冒険者になった。

可哀想になって、ペアを組んであげると言ってしまった。

彼は前衛、僕は後衛と言う事になった。

ギルドに行って今日の一番の高値が付く魔物をみて決める。

「これは倒したことがある奴だ。此にしよう。」

彼が言うので、森の中に入って行く。其処が今日の目指している魔物がいるスポットだそうだ。

彼は森の中をよく知っていた。

確かに其処に僕らの探していた魔物がいた。然も群れで。

彼、ラファエル・ファーカルは自分の事を、エルと読んでくれと言った。

エルは、一人で突っ込んでいこうとするので、

「まてよ!まず数を減らそう。」と言って僕は火の槍で数頭の魔物を倒した。

エルは其れをみて、満面の笑みを浮かべて、走って行った。

流石に自信があるだけはある。綺麗な太刀筋で魔物を屠り、あっという間に倒してしまった。今日の成果は大量だ。僕の魔法鞄に全部入れると、エルは凄く喜んで、これから毎日行こうと意気込んでいた。

久し振りに同年代の人と話して僕も凄く楽しかった。





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