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7 ドルンの領主

僕は、カルマの領主から受取った巻物を抱え、貴族門の前に来た。門番に羊皮紙の巻物を差し出すと直ぐに領主に目通り出来た。

ここの領主は女の人だ。数年前に領主がアレス真教の信者に殺害されたらしい。

彼女の子供は未だ十四歳になったばかりだ。長男が継げるようになる、その間の繋ぎらしい。

殆どの仕事は側近がやり彼女の仕事は、あまりなさそうだ。

カルマの領主からの手紙を読み終え、

「其方は、ここに仕官しにきたのではないのかえ?」

「はい、もう冒険者ギルドで仕事を請け負っております。」

「そうか。この書面には、其方は大変魔法の才に恵まれておると書いてある。私の息子の従者に推薦されておるぞ。」

くっ。やはり、そう言うことになっていたか。世話にはなったが、お節介が過ぎる。

「未だ修行中です。これから、色んな街を見て回りたいのです。ありがたいお話ですが、ご辞退いたします。」

「そうか。勿体ないのう。しからば其方は鑑札が必要であろう。私の領の鑑札を持っておきなさい。カルマの領主がどうかよしなにと言ってきておる故。彼は私の兄じゃ。彼を救ってくれた恩に報いたい。」

そうか。未だ恩義を感じてくれていたんだ。まあ、拘束されたり殴られたりと結構されたしな。

「はい。ありがとうございます。よろしく御願いします」

この鑑札とはどのようなものなのか。街に入るための身分証明みたいなものかも知れない。今まで飛竜のおかげですいすい来れたが、これからは必要になるはずだ。助かった。

アレス真教とは随分やりたい放題の宗教だな。日本では考えられない。いや、結構な問題が宗教がらみで起きていた。何処の世界でもある事なのかも知れない。

僕は晴れて冒険者としてこの街で働くことが出来る様になった。もう憂いは無い。


ギルド長と仲良くなったので、鑑札のことを聞いてみた。

「鑑札う。そんなたいそうなもの持ってやがるのか。お前は貴族だったのか?」

違うと答えると、

「ふーん。まあ、あれば便利は便利だな。何処の街にも直ぐ入れる。普通は街に入るためにはそれなりの取り調べがあるもんだ。この国じゃあ余り住む処を変える奴はいないからな。冒険者のトッププレイヤーはあちこち行くから領主から特別に出して貰っているな。平民は余り外へは行かねえ。商人はまた別の証明書がある。彼方此方行きたい奴は商人の証明書を持っているぞ。それでも、取り調べはあるがな。」

と言う事だった。冒険者は余りあちこち行かないと聞いて、そうか。と思った。知らない場所で初めからやり直しはきついかも知れない。荒くれ者共は縄張り意識が強そうだ。

僕は鑑札とは身分を領主が保障してくれるものだと認識した。商人の証明があればもっと自由になれるかも知れない。商人になるためには簡単な計算と文字の読み書きが出来れば成れるらしい。お金は掛かるが負担になる金額でもないようだ。

ギルドに長は、

「冒険者は余所の街では余り歓迎されない。だから、外には行かない。」とも言っていたし。

荒くれ者は信用が無いと言う事か。

「商人は護衛は付けないのですか?」

「付けるけどな、自分の所で抱えている奴を使う。知らない護衛なんざあ怖くて安心できねえだろう。」

確かにそうだ。僕の異世界常識が次々に壊れていく。なんだったんだろう。ここの世界が特別なのだろう。でも、冷静に考えると納得できる話だった。

ここの冒険者は、魔物を倒すためだけに存在しているようだ。


僕は早速商業ギルドに登録した。年会費を払えば一年間はこのままで良いようだ。

商人の仕事として、薬草を次の村から仕入れると言うのがあった。こちらからは、細々したものを持っていって物々交換になる。

次の村はここから一日の距離だ。僕には魔法鞄があるので馬車では無く馬を借りた。

この魔法鞄は一体どれほど入るのだろう。入れても入れても底が見えない。

かなりの小物を仕入れ、村に向かった。魔法鞄を盗む馬鹿はいない。登録してしまえば、本人しか使えない。本人を殺してもだめ。本人が納得して渡さない限り譲渡は出来ないのだとか。

使っている内に魔法鞄は本人に馴染んでくる。本人の魔力が多いと鞄の能力も上がっていく。

と言う事は僕の魔力が多いと言う事になるのだろうか。

商業ギルドで教えて貰った事実だった。商業ギルドには魔法鞄を皆持っていたが、容量はまちまちだった。結局足りなくて馬車で移動になる。魔法鞄は一人一つしか持てないようだ。

本人の魔力を使うのなら当たり前のことだろう。何個も持てるはずも無かった。


馬は一日訓練をして貰い、直ぐに乗りこなせるようになった。

大人しい馬で、ゆっくり走りながら、一晩野営をして、次の朝出発し、昼には村に着くことが出来た。

この村では、薬草を栽培していた。数種類の薬草と僕の持ってきた小物を交換し、その日の内に商売は終わった。少し村の周りを見て歩く。ここいらは魔物が少ないのか、簡単な木の柵で村を被うって居るだけだった。

偶に、角ウサギや小さめのイノシシが出る程度で村人が其れを倒しているという。

大きな森は無く、平坦な土地が続いている。みるものは余り無いな。

ここを発って次の日には、ドルンに帰ってきた。

商業ギルドに薬草を下ろすと倍の儲けになった。

手間を考えると、冒険者をした方が稼げる。商売の仕方が下手くそなのか。それでも、これはこれで生きる為の手段だ。色々試してみよう。

薬草は薬師ギルドに卸され、そこで色んな薬を作る。僕は薬を何本買っておくことにした。何時必要になるかも知れない。

するとそこで言われたことがあった。

この治癒の薬は、一気に大量に飲んではいけない。一時は聞くが、その後の副作用が大きい。と言う事だった。ティムはこれを沢山飲んで、消えて仕舞ったのだろうか。怖い薬だな。

其れを分っていてもなんとかセレスティンに届けたいものがあったと言うわけだ。

恩義のある領主のために命を懸けたのか。





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