表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

18 飛竜の友達

もう帰っても良いかな。

これから王都では飛竜のための繁殖が始まり騒がしくなるそうだ。

ここでは、季節が夏になると貴族達は避暑のため地方に出かけていくが、今年は特に飛竜達のせいでうるさくなるため一般の人達も王都から次々と出て行っている。お金が無い者達や商売のため残らざるを得ない人以外はこれから一ヶ月は居なくなってしまう。王都の人口は四割減少するそうだ。

僕らも大方の目的が達成されたので帰る事にした。

「マック帰るぞ。」

「待って、友達に伝えてキュル。」

そう言えば、友達、出来たんだったな。

暫くすると飛竜と一緒に戻ってきた。紹介をしてくれるのか?

マックが連れてきた飛竜は、ティムが乗っていた飛竜だった。特徴的な身体の模様、緑と茶色の縞々模様はよく覚えている。名前は、ッそう言えば聞いていなかったな。

「トミーだよ。僕の友達キュウ」

「キュウルルッ」

「やあ、トミー久し振り、元気にしてたか?」

「キュウルルッ」

何か言いたそうだが、僕には分らない。マックに目を向けると、

「ティムのことで、教えたい事があリュって。マックが聞いておキュ」

二頭で、暫くキュウ、キュウやっていた。そして僕にお辞儀のような仕草をしてトミーは飛んでいった。


帰りの空の上で、マックが教えてくれた。

トミーはアンディ・ループに育てられ、その後ティムに与えられた飛竜だった。

アンディは売りに出ていた飛竜の休憩所を手に入れそこで、一人で住んでいたが、偶々卵を手に入れたようだ。娘が居たが行方知らずになっていた。偶々立ち寄った孤児院で娘の子供に会うことが出来た。

アンディは孤児院にいたティムを見付け、引き取った。ティムが10才のころだ。ずっと探していた娘の子供だ。魔術師の素質もありそうなので色々教えていたようだが、飛竜乗りになりたがっていたので、知り合いに頼んで、飛竜隊に見習いで入れて貰った。飛竜持ちは直ぐに入れたらしい。

だが3年ほどして、カルマの領主に預けられた。何か理由があったのだろうがトミーには解らない。

その内に隠谷で度々ティムとアンディ・ループは会うようになった。

ティムは王都で仕事をして、帰り道に暴漢に襲われ怪我をした。

ティムが死んだとき隠谷でアンディ・ループと会う約束をしていたそうだ。

其れがトミーに分る総てだった。


僕が考えていた、カルマの領主に対するティムの感情は違ったものだった。てっきり孤児だから、育ての親に対する恩だと思っていたが。育てられるほど一緒に居なかった。

仕事に対する義務?命を懸けるほどのものだろうか。

スパイだったのは確かなはずだ。隠谷で会っていたのだ。親族が隠れて会う必要が何処にある?

話は分ったが、何処にもイヴァロのことは出てこない。若しかしたら、魔術師の先生は、まだアンディ・ループが生きていると思っているのでは無いか。

そうで無ければ、先生は僕をあそこに紹介しないはずだ。

多分あの紹介状の宛名はアンディ・ループになっていたはずなのだ。中身を開けてみることは出来ないから仕方ないが。帰りに先生のところに寄っていこう。

帰りはなるべく何処にも寄り道せずに休憩だけで、カルマの街に来た。マックは疲れただろう。

ソシアはカルマ支店において、僕は先生のところに行った。

先生は、アンディ・ループの失踪を知らされて、ショックを受けていた。

「彼は、アレス真教に目を付けられていてな、孫の心配をしていたので、儂がカルマの領主を紹介してやった。カルマの領主はあの派閥の貴族とは一線を引いていたので安全だと思ったのだ。ティムは、魔法の勉強もしていたから、儂も偶にみてやってはいたが、カルマの領主が段々苦しい立場に立たされるようになってから、何やら忙しくなってそれきりになって仕舞った。」

アレス真教は、アンディ・ループの転移の研究を知ったのだ。それに眼をつけられて孫を人質にされないようにここに預けた。

転移は恐ろしく力を与えてくれる魔法だ。これができれば、暗殺など簡単にできてしまう。反対派など、直ぐに殺してしまえるだろう。怖くて、誰も逆らえなくなる。そうなれば、権力など直ぐに手の中に入ってくるだろう。

アンディ・ループはこの魔法を隠した。多分あの魔法鞄は元々はアンディ・ループのものだろう。

一介の騎士にもてるはずのものでは無かったのだ。

カルマの領主は僕から取り上げなかったのは、彼等にとっては大したものでは無かったからか?

其れよりも、飛竜の方が欲しかったからだろう。あれはカルマの領主のものでは無かった。

丁重に僕に頼んできたでは無いか。疑っていた僕に大金までくれたのだ。

交換条件のようなものだったのだろう。

今思えば確かに飛竜は大きな財産だ。僕にとっては家族と同じだ。

自分の魔力で使い勝手が悪くなる魔法鞄よりは魅力があっただろう。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ