表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

17 王都観光と孤児院

「この魔方陣の本。若しかして居なくなった魔術師のものでしょ?居なくなって2,3年しか経っていないのに。私達が貰ってしまって良いのかしら。」

「さあな。イヴァロが譲り受けられたものかも知れないよ。」

「そうなら良いけど。」

イヴァロは、アンディ・ループがもう死んでいると確信している。イヴァロによって魔方陣を細工されたのでは無いだろうか。彼が近しい間柄なら可能だったはずだ。

僕達はかなりの金額を彼に支払った。其れでこれを出してきたのだろう。まさか僕が異世界からこちらに来るとは考えても居ないだろう。彼はまだ、アンディ・ループの本を持っているはずだ。

書庫にあった資料の傾向から、アンディ・ループは転移の研究をしていたように見えた。この世界では多分アンディしか、転移できない。その秘密をイヴァロは探るためにあそこに居るのかも知れない。


僕達は王都の飛竜隊の駐屯地に近い場所に宿をとった。

その宿は外壁の中に作られた変わった宿で、造りが大雑把だ。冒険者や、飛竜隊の臨時の宿になる。その為宿賃はかなり安かった。ソシアには悪いと思ったが、マックが寂しがるのは可哀想だから、近場に宿を取ったのだ。でも、彼女は嬉しそうに、

「眺めが良いところ。ここから飛竜達がよく見えるのね。あ、あれ。今飛び立ったのはマックよ!」

と、返って喜んでくれた。

偶に此処にマックが飛んできて話をしていく。今もこちらに来たようだ。

「キュルッ、これから、一杯の飛竜がきゅる。こうびするためだって!」

オイ!マックなんてこと言うんだ。ソシアが困っているだろう。大きくなっても未だ子供の竜だ。交尾の意味を理解していないのだろう。

ここの飛竜隊員に聞いたところ、2,3年に一度ここに各地にある飛竜隊から雄の飛竜を連れてきて繁殖させている、ここでは沢山の雌の飛竜を飼っているようだ。

ここで繁殖させて各地に卵を売っているらしい。野生の卵は取るとこが難しい。ここなら確実に卵を手に入れることが出来ると言うわけだ。

暫くすると、凄い数の飛竜達が集まってきた。良く訓練された竜達だから、喧嘩は無いと思うがマックのことが少し心配になってきた。

「マック意地悪されていないか?」

「大丈夫きゅ。友達出来たキュルッ。」

そうか良かった。これから、王都の観光に行き暫く留守にすることをマックに伝えておいた。


王都の外側から中心に向かって書店を見て回る。

そのついでに商業ギルドにより、旅の途中で仕入れたものを買い取っても貰う。

羊皮紙もインクの材料もかなりの利益が出た。代わりにこちらで使っているインクを大量に仕入れ、仕事は終わらせた。後は観光しよう。

書店は数え切れないくらい会ったが、僕らの眼がねに適うものはなかなか見付からなかった。

「そろそろお腹が空いてきた。」

「あそこのレストランで食事にしよう。」

食事は最高に旨かった。さすがは王都だ。各地の名物や食材が集まってくるので、メニュウも豊富だ。

二人とも大満足でお腹いっぱい食べ、その後も出店を冷やかして歩いた。

大通りを抜け少し静かな通りに入ったところに、白い大きな建物に行き当たった。

「行き止まりだ。ここは何かの施設だな。」

「北通り私設孤児院と書いてある。」

私設?個人で孤児院は大変そうだな。僕達が引き返そうと思っていると中から人が出てきた。

「あなた方は、ここに誰かを訪ねてきたの?」

「いえ、偶然通りがかっただけです。」

「そう。若しかしたら、ループさんの使いの方かと思ったの。何時もこの頃にいらしていたから。ごめんなさいね。」

ループ!若しかして、

「若しかして、アンディ・ループさんのことですか?」

「ええ、知っていらっしゃるの?良かったわ、ずっと連絡が取れなくて困っていたのよ。」

「済みません。知り合いというわけではないのですが。少しお話を聞かせて貰えませんか?」

「え、ええ。よろしいですけど・・」

不審者に思われないように、自己紹介をして、自分はアンディ・ループと同じ魔術師であると伝えると、納得してくれたようだった。


シスターの話を要約すると、此処に居た、孤児が世話になったので、寄付を毎年してくれていたらしい。3年前からピタリと連絡が取れなくなってしまった。寄付については他からも沢山あるので困っては居ないが、預かったものがあり其れを何処にやれば良いか悩んでいたらしい。

「大したものではないのです。只の白紙の本です。これを1年だけ預かって欲しいと言われていたのです。もし受け取りに来れなければ燃やして欲しいと言われていまして。」

燃やす?其れは困っただろう。預かったものを燃やすなど、出来るはずも無い。

本を見せて貰ったが、確かに白紙だ。何も描いていない本だ。

燃やすくらいならと譲り受けてきた。勿論寄付もしてきた。

イヴァロはこれを探していたのだろうか。


僕は、宿に帰り一人になってから、本に僕の魔力を当ててみたが真っ白なままだ。

何気なく魔法鞄から使い道の分らなかった、板を出してその上に本を置いてみた。

書見台のように角度が付いた板だ。

本から字が浮かび上がってきた。ビッシリと細かい文字と魔方陣が描かれていた。

表題は転移の理論と実際についてとなっていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ