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第八話「防衛戦」

カクヨムでも投稿しています!

「もう俺を止めても無駄だ!ボタンはここにある!」

 スミス米大統領は激怒し暴走。核ミサイルの発射ボタンを押した。

 目標は百多々の首都地域。もし着弾すれば百多々は再起不能なレベルに陥る。

 しかし、百多々の大統領である百々原蒼は動じずに迎撃ミサイルを発射した。

「迎撃成功。周辺海域に異常なし」

 その報告は、30分後に百多々から日本へと伝わった。


「アメリカ代表としても、この事態は批判し……」

 即日行われた国連の緊急総会では、アメリカを含む全会一致でアメリカを非難した。

 その日の夜。百多々大統領百々原蒼は日本やヨーロッパ、アメリカの各メディアに向け会見を行った。

「我々はアメリカに対し攻撃を行う意図はありません。一方的に攻撃が行われていますが、我々は防衛のみを行っています」

 そして、百々原はこう言った。

「アメリカとも世界のすべての国とも仲良くしたいのです。私たちは防衛のみを行い、攻撃は行いません」

 このメッセージは、衛星中継を通じて世界中に広がった。

 アメリカでは、大統領を辞めさせるべきだとの声も出てくるようになっていた。


 アメリカ・ホワイトハウス。

「百々原とかいうあの野郎。百多々を国家承認する気なんて一ミリも……」

 そう考えながらスミス大統領は緊急会見を行った。


「我々は中東、そして世界を脅かす百多々に大規模な攻撃作戦を実施します。我々は、5分後に核攻撃を行います」

 かつてレーガン大統領がソビエトに対し放ったブラックジョークを、このスミス大統領は実際に行おうとしていた。

「大統領!流石に核攻撃を繰り返しては国外はおろか国内からも非難されますよ!」

 国務長官はそう言って核のボタンを押そうとする大統領を止める。

「お前!アメリカの威厳を忘れた非国民め!」

 そう言って、スミス大統領は核攻撃ボタンを連打する。

 すると、アメリカ各地の基地からミサイルが発射される。

「よし、これで百多々を滅ぼせる……!」

 スミス大統領は正気を失い、ミサイルの様子を映した画面を見る。

 しかし、ミサイルは発射した15発中13発が打ち上げ直後に爆発してしまう。

 核爆発による被害が周辺に出たのは言うまでもない。

「何が起きている……!?」

 その後、残った2発も迎撃。全てのミサイルは百多々に到達することが無かった。


「ハッキングにより13発のミサイルの制御破壊に成功」

 防衛省地下では、高坂と二人の女性がパソコンの前に座っていた。

「まさか僕がこんなクラッキングをアメリカに向けてするとは思わなかったな」

 高坂はそう言いながら、隣に座る二人を労う。

「ったく、高坂さんはかなり無理言いますよね」

 青髪ショートの碧眼の女性はそう言いながらコーヒーをドリップする。

「池崎さんこそですよ?ミサイルを全部制御破壊できないかって言い出したのは池崎さんなわけですし」

 銀髪ロングで高身長の少女はそう言いながらそのコーヒーを飲む。

 青髪の女性は池崎ひな。23歳で東京のIT企業に今年の春新卒で入社する予定らしい。

 そして、銀髪の女性は田宮由衣。18歳引きこもり。

 この二人と高坂の関係性は、SNSのプログラミングコミュニティで知り合ったネッ友という感じである。


 時はさかのぼり、1日前。東京湾空戦の直後、アメリカが1回目のミサイル発射を行った直後である。

「由衣!何か大きな事件に巻き込まれたりした!?」

 由衣はベッドで寝ころんでいる所を親に起こされ、外を見る。

「えっ別に何もしてないんだけど……ってなにこれ」

 自宅の外には何台も黒塗りの車が止まっており、スーツを着た人たちが由衣を呼んでいる。

「どうされましたか?」

 由衣は着替えてスーツ姿の人たちの話を聞く。

「わたしたちは防衛省から来たものです。高坂さんに紹介されたプログラマーはあなたでしょうか?」

「高坂さん……?あの人大阪のIT企業勤務で防衛省では働いてないはずなんですが」

「今は防衛省に協力してもらっております。高坂さんがあなたに協力を求めていまして」

 由衣はそれを聞くと、こう返した。

「まあ、いいですけど」

 するとスーツ姿の防衛省職員はこう言った。

「それでは今すぐ防衛省へ!」

「ってここ静岡ですよ!?今から行くんですか?」

 由衣は驚きながら防衛省へ向かった。


 防衛省地下、10畳ほどの会議室にパソコンが3台置かれ、それぞれ3画面が用意されている。

「3台、って高坂さんと私と誰でしょうか?」

「それは池崎さんという方のパソコンですね。岡山から新幹線で向かうらしいのでもう少し時間が」

「えっ池崎さん?」

 実は池崎と田宮はネット上で恋仲で、初めてリアルでの顔合わせになる。

「まさか初顔合わせが防衛省とは」


一時間後。

「お待たせしました!池崎ひなです!田宮さん!よろしくね!」

 池崎がそう言うと、高坂は作戦を発表した。

「メンバーが揃った所で、作戦を発表する。今回行うのは、アメリカ核攻撃システムの妨害だ」


翌日。高坂がテレビ中継を行っている頃、アメリカ核攻撃システムへの侵入は既に完了していた。

「これってさ、アメリカがミサイル撃った瞬間に制御破壊とかできないのかな?」

 池崎が質問すると、田宮はこう返した。

「できると思いますよ。実際制御破壊のコードもありますし」

 高坂が帰ってくると、池崎は制御破壊による核攻撃の防止を提案した。

「それありだな。ミサイル発射ボタンが押されたと同時に制御破壊すれば、迎撃するのは間に合わなかった分だけで済むし」


 そんな事で、アメリカによる百多々への大規模核攻撃は自爆に終わったのである。


「高坂くん。君に椎野総理から連絡が来ている」

 宮下がそう言うと、高坂は電話を受け取る。

「はい、高坂です。椎野総理が直接どうされましたでしょうか?」

 すると、椎野総理はこう話した。

「君、大統領になりたいと思ったことはあるかい?」

 高坂はこう返した。

「まあ、あるといえばありますが」

 すると、椎野総理はこう言った。

「それじゃあ、『陽洋共和国初代大統領高坂由真』さん。よろしくお願いいたします」

 高坂は驚きのあまりため口で返す。

「どういうことっすか?」

 椎野総理はこう話す。

「実は百多々との会談で日本が百多々と合併し陽洋共和国という国になることを百多々が希望してきたんだ。最初は驚いたが技術力的にもこれには乗った方がいいとなってね。協議の結果大統領は僕でも百々原でもない誰かに任せようとなったのだよ」

「は、はい」

「そこで大学で政治学科卒でプログラミングもできる、若い君の名前が上がったんだよね」

「そうはならないでしょ」

「まあ、これで君には許可は得られたし。陽洋共和国の発表は今夜の共同会見で行うから」


 そして、総理官邸にて百多々大統領・百々原蒼と日本国内閣総理大臣椎野塁による共同会見が行われた。


「単刀直入に申します。日本と百多々は、一つの国『陽洋共和国』になります」

 記者が大きくざわつく。

「もちろん困惑されると思いますが、これは両国の安定のための選択であります」

 そして、百々原がこう紹介する。

「それでは、陽洋共和国初代大統領に来ていただきましょう」

 そして、高坂が登壇した。


「皆様、こんにちは。突然若者が上がってきて何事だと思うかもしれませんが、私が陽洋共和国初代大統領の高坂由真です」

「私は椎野総理大臣、百々原大統領から引継ぎを行ったあと正式に大統領になります。私が大統領になるにあたって、三つの公約を掲げさせていただきます」

 記者はざわつき、時々大きな声も聞こえてくる。

「一つ目。情勢の安定化。百多々はアメリカに一方的な攻撃を受けていますが、私はアメリカとすぐ交渉を行い攻撃を止めさせます」

「二つ目。食料自給率を100%へ。魔術も活用するほか、ビル型の複層農場を建設し8年後に食料自給率を100%にします。」

 記者からは「できるのか?」という声が聞こえてくる。

「三つ目。少子化の解決。政府公式のマッチングサービスを無料で公開し、子供一人当たり20万円の補助金を支給します」

 記者からは「財源はあるのか!」とヤジも聞こえてくる。

「財源は私たちや議員の給料を削ります。また、政府による国営半導体企業を設立し利益をこの財源に回す予定です」

「そして、それに協力してくれる二人の副大統領に来てもらいます」

 そう言って、高坂は池崎と田宮を呼んで紹介した。


「うわ、ネット炎上してるし」

 池崎はネットニュースで叩かれている自分たちの記事を見ている。

「まあ、目標が高すぎるけど新しい風が吹いていいんじゃないかっていう声もありますが」

 田宮はそう話していた。


 来月、高坂らは与党から名前だけを引き継いだ政党「陽洋自由党」に35歳以下の若い候補を擁立し選挙を行う。

 元与党議員は一部野党から立候補するらしいので、少し不安材料ではある。


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