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第七話「新型機」

カクヨムでも投稿しています!

 銚子沖空戦から2日。

 アメリカによる空戦は止まったものの、いつ攻撃が起きてもおかしくない状況のため日本国内では各地に避難指示が出続けていた。

 そんな中、高坂はある依頼を受け百多々の防衛省にいた。


「新型の、戦闘機ですか?」

 小久江はこう言った。

「ああ、【HF-10】計画。製造30年が経過し陳腐化の進んだSD-2Tiを置き換えるための戦闘機だ」

 高坂はこう返す。

「SD-2Tiに勝つ戦闘機はこの世界に無いと思いますが、一体どういう目的が?」

 小久江はこう返す。

「これは、百多々の今ある位置。中東だからこそといえる理由でもあるが、百多々は転移前から地政学的にチョークポイントだったんだ。周辺の大国に領空侵犯を繰り返されていた百多々は防衛戦に特化し高速飛行に対応したSD-2Tiを開発した。そして、さらなる【防衛強国】を目指すために、この計画が始まったんだ」

 高坂は質問する。

「なるほど。それで、なぜその新型戦闘機に関して僕に依頼を?」

 小久江はこう答える。

「この構想ができてから8年、すでに新型レールガン機銃は完成した。量子演算ミサイルも既に実践使用ができるレベルです」

 高坂は驚く。

「どちらもほぼ実用化されていない技術なんですが?」

 小久江は笑いながらこう返す。

「そうかそうか。しかしながら飛行時に速度が早すぎて気を失うという問題があってだな。君にはその飛行時に補助したり敵機を補足するシステムを作ってほしいのだ」

 そう言っていると、百多々防衛省地下の軍備試験場に到着し隠されていたHF-10を見ることになる。


「これが、戦闘機……!?」

 高坂は驚きながら、その半円をかたどった戦闘機HF-10を見た。

「それで、この戦闘機のエンジン自体はマッハ6.5まで出せます。しかし、移動速度が早すぎてすぐにパイロットが酔ってしまったり気を失うのです。大波さんくらいかな。今までちゃんと気絶せず着陸をAIに頼まなかったのは」

 高坂はこう言う。

「つまり、景色を見づらくしつつ戦闘を行えるよう表示すればいいのですね」

 小久江はこう返す。

「具体的には、どのように?」

 高坂はこう答える。

「MRヘッドセットをつけてそこにレーダーなどの戦闘情報を表示させましょう」

 シミュレーター酔いを起こす可能性はあったが、百多々には2000hzの超低遅延ヘッドセットが製造されているというのを春葉で見た高坂はそれを思い出したのであった。

「なるほど、MRヘッドセットを製造している南浜のMego社に相談してみるよ」


 翌日、地下軍備場では既に準備が完了。MRヘッドセットの使用許可を得たうえで1日でプログラムが完成したのだ。

「徹夜した甲斐があった」

 高坂はそう言って、HF-10の試験飛行を見学する。

 その日、3人のパイロットが試験飛行を行ったが、誰も酔うことはなく気も失わなかった。

「流石だ、高坂。この戦闘機はこれから量産に移る。君は日本に戻りたいだろう。大波さんとHF-10の試作機と一緒に市ヶ谷に行ってもらおう」

 高坂は驚きながらも、テレポートを行い市ヶ谷へ向かった。


「こんなの、市ヶ谷にありましたっけ」

 市ヶ谷の防衛省に到着した高坂と大波は、本来PAC-3が設置されている場所に到着する。

「お帰り、高坂くん。そしてようこそ。大波くん」

 宮下はこう言うと、会議室へと歩いて行った。

 ここには、VTOL機の離着陸に対応した基地が建設されていた。


「百多々軍諜報部隊によると、米空軍は明後日朝にも東京都心への攻撃を計画。新型戦闘機F-47の初実戦飛行も兼ねているということだ」

 F-47。現実ではまだ発表段階の戦闘機だが、この世界では2025年の年明けに完成。高いステルス能力を誇っているとされるほか、マッハ5.4まで出せるという。

「さっき1機供与されたHF-10には劣るが、SD-2Tiには勝っている。しかも、恐らくF-47は5機一機に東京を攻める計画だ」

 SD-2Tiも支援するが、実質的には1vs5の数的不利。

 大波は、こう答えた。

「勝てます」

 そう、一言言った。


 2日後の明け方、防衛省ではアメリカ機の領空侵犯予定時刻が近くなり、忙しさを極めていた。

「どうぞご無事で」

 高坂と宮下は大波にそう言うと、大波はこう返しHF-10に乗る。

「死にませんから」


 高坂はその日の朝、銚子沖空戦の中継を行った政府関係者として、報道番組に出演した。

「まあ、私は政府の依頼を受けただけです。ただ、今後も攻撃があるかもしれませんから気を付ける必要があります」

 高坂は攻撃計画の事を話さず隠しながらそう話していると、スタジオに警報音が鳴る。

「Jアラートが発令されました!対象地域は東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県です!」

 高坂は、防衛省に電話を繋いでテレビ中継した。

「高坂です。現在テレビと繋いでいるのですが、”あの”計画を実行してください」

 そう言うと、防衛省はテレビ局にある中継映像を送る。


「こちらは、現在防衛省に臨時設置されている垂直離着陸機用飛行場です。私たちは百多々から新型戦闘機HF-10を1機を導入しており、この映像はその戦闘機に乗っている大波アリス2等空佐からのものとなります」

 高坂は、続けてこう説明する。

「アメリカからF-47という最新鋭戦闘機が5機向かっており、東京を攻撃する計画であると情報が入っています。こちら側はSD-2Tiを10機、HF-10は1機となっており、防御を行います。」

「視聴者の皆様、過度な不安はしないでください。ただ、空戦により落下物などがあるかもしれません。地下鉄や商業施設など地下に避難してください」


 映像のHF-10は凄まじいスピードで高度を上げ、東京湾上空へ。

 すると、東の方角からF-47とみられる戦闘機がやってくる。

「フォックス3。スカイツリー近くでこのあたりには住宅が多い。何とかして海上か安全な場所に落とさなければ……」

 大波はそう言いながら、東京湾の方向へF-47を誘導する。


「レールガン機銃による攻撃を開始」

 低高度からHF-10はF-47を攻撃する。既にF-47は1機が撃墜されていた。

 テレビではHF-10からの中継映像と共に、ライブカメラによる東京上空の様子が映る。

「こちらが現在の東京上空の様子です。F-47とみられる戦闘機が煙を上げています」

 高坂はこう話す。

「HF-10はまだ1機だけですが、性能だけ見ると圧勝です。中継を見る限りかなりアクロバットな空戦を行っているようですが、数日前に改良を加えたのでできる技です」

 アナウンサーはこう質問する。

「高坂さんが改良したのですか?」

 高坂はこう返す。

「本体の改良ではなく、飛行中に酔わないようにヘッドセットを装着させたのです」

 そう言っていると、大波の乗るHF-10は相手戦闘機の通信を傍受する。

 高坂はF-47の通信を日本語訳しこう言う。

「相手の通信を聞く限り、なんだあの戦闘機となって混乱していますね。あと上昇と下降を繰り返した結果不具合が起きているようです」

 不具合の事を聞いた大波はさらに上下に飛行し、相手機を混乱させていく。

「フォックス3。機銃射撃開始」

 東京湾での空戦は、30分で幕を閉じた。


「防衛省から中継です。アメリカ軍の攻撃に対し、日本が防衛戦を行いました。アメリカ軍は最新鋭F-47が5機撃墜も、日本側に被害はありませんでした」

「沿岸部の道路にはF-47のパーツとみられる物体が落下し……」

「インターネットでは『謎のパイロット少女、圧倒的戦果』といった声も……」


 その頃、アメリカ・ホワイトハウスでは状況報告が行われていた。

「F-47が5機撃墜だと!?エンジン不具合!?テスト飛行ではそんな事なかっただろ!」

 大統領は激怒していた。

「それが……日本側の戦闘機『HF-10』というのに乗っていた少女がテレビ中継で空戦の様子を映し、その中でF-47の通信を傍受しそのような発言が……」

「もういい!これ以上日本に直接攻撃しても無駄だ!」

「それなら、日本へ謝罪の電話を……」

「違う!中東の安定化という名目で百多々に核攻撃を行う!」

「核はダメです!スミス大統領!」

「もう俺を止めても無駄だ!ボタンはここにある!」


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