第五話「国交」
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「んっ。椎野総理の準備ができました。映像をつなぎます」
宮下がそう言うと、日本の総理官邸にいる椎野総理の映像が映る。
「それでは、日本と百多々の初めての首脳会談を始めましょう。」
そこから高坂は一時的に退出することになった。
宮下によると、この会談が終わると帰国するから会談の結果は日本で見てくれ。ということらしい。
俺は指定された車に乗り空港で検査を受け、帰国用の便に乗ろうとした。
その時、後ろから少女の声が聞こえてきた。
「高坂さん!」
「大波さん?」
そこには、訓練飛行を終えロビーで休憩していたアリスが居た。
「帰るのですね。日本に」
「ああ、また来れるようになったら来るよ」
すると、アリスはこう言った。
「本当に……、来てくれますか?」
アリスは続けてこう言った。
「私のお父さん、転移前に海外出張していてこの世界にはいないんです」
高坂は言われてから気づいた。
この世界に転移してくるときに、もう会えない可能性がある形で離れ離れになった人が居ることに。
「だから……、だから!本当に、また来てください!」
アリスはそう言って基地の方に戻っていった。
その近くにいたパイロットは高坂にこう言った。
「大波アリスが人に向かって感情を出すのは珍しいからな。アリスは君に一目惚れしたのかもな」
一目惚れ……って言っても、高坂とアリスは年の差十歳。しかも超遠距離だ。
しかしながら、再び出会える事を願った高坂だった。
「まもなく当機は羽田空港に到着いたします」
15時間かけて、日本に帰ってきた高坂ら。
高坂は宮下らと別れ、自宅のある大阪へ。飛行機を乗り継いで伊丹空港へと向かった。
「ただいまー。数日とは思えないくらい久々の感覚がする家だ」
風呂に入り、空港で買った夕食を食べながらテレビを見る。
「まもなく、椎野総理大臣の会見が行われます。おそらく百多々関係の事を話すと見られますが、一体何を話すのかは不明です」
ニュースキャスターがそう言っていると、椎野総理が入ってくる。
「椎野総理が入ってきました!」
「国民の皆様、こんばんは」
総理は最初、単刀直入にこう言った。
「我が国は、百多々と国交を結びます」
記者会見室が騒然とする。
「我が国は、百多々に防衛副大臣などを派遣し会談を行いました」
記者会見室がさらにザワつく。
「百多々は、この世界の技術を遥かに超えています。しかし、それは転移前大国に囲まれており軍備などを増強していただけで、敵意は一切ないと言いました」
すると、記者の声が聞こえてくる。
「転移してきたって信じられるか……?」
総理はこう返す。
「今記者が言ったように、転移してきたと言われても信じられないと思われるかもしれません。しかしながら、そのような非科学的な事でしか説明はできないのです。」
続けて、総理はこう言った。
「それに、我が国の派遣団が百多々を訪れたところ、魔法と呼ばれる技術がありました」
騒然とする。
高坂はスマホを見る。
「魔法なんて現実にねーだろw」
そういうコメントが書かれているのを見る。
しかし、魔法を見た高坂は何か第三者の目線で見ていた。
「ここで、百多々の映像を十個公開します。これは、実際に魔法を使用している様子の映像も含まれます」
記者会見室の大きな画面は、動画を一つずつ表示していく。
「まず、こちらが百多々の街並みです」
「続いて、こちらが空軍基地です。これがSD-2Ti戦闘機の飛行シーンとなります」
特徴的な飛行シーンが流れる。
「そして、こちらが魔法を使用している様子です」
どうやらこれは俺が春葉を散策していた時に撮影したものらしい。
記者会見室はかなり騒然とし、時々信じられないという声が聞こえていた。
「それでは、質疑応答に入らせていただきます」
眠気が強くなってきた高坂は、テレビを消して布団を敷いた。
「久々のマイ布団、おやすみー。」
その頃、アメリカ・ホワイトハウス。
「何!?日本と百多々が国交!?」
スミスは驚いていた。
「はい。さらには現地の様子や戦闘機の映像、さらには魔法と称した映像も……!」
スミスはこう返す。
「魔法!?ありえない。日本もグルなんだろ!」
「いえ、合成かどうか詳しく調査したところ、99.9%実際の物だと……!」
スミスは怒り狂いながらこう言った。
「大統領令を出す!日米同盟を破棄だ!」
翌朝。高坂は新幹線などを乗り継ぎ、各務原へと向かっていた。
高坂は状況があまり理解できない中、呼び出されたのである。
「日米同盟破棄……。ここまで頑なにアメリカが百多々を認めないとは予想以上だな」
日米同盟の破棄が深夜に発表されてから、ほかの国でも混乱していた。
イギリスやEUの各国は大統領令に対し批判しているが、ロシアや中国などは大統領令を支持し百多々を脅威だと捉えているらしい。
「まもなく、三柿野……」
航空自衛隊岐阜基地に到着した高坂は、入り口で止められた。
「君、見ない顔だけど関係者かい?証明書は?」
すると、基地の中から宮下が出てくる。
「あっ、高坂だ」
「すみません!証明書ってなんですかー!?」
すると、宮下は警備員にこう言って高坂を通す。
「彼は我が国最重要人物だ」
警備員はこう言って門を開ける。
「宮下副大臣!?開けます開けます!」
「それで、なんで急に岐阜に呼び出したんですか?」
すると、宮下が手に持っていたボタンを押し、倉庫のドアを開ける。
「これは……?」
「百多々へのテレポートゲートだ。既に私は一往復しているから、安心しろ」
それは、15時間を10秒に短縮する、超技術だった。
「っていうことはつまり……」
「そうだ、君にはもう一度百多々に行ってもらう」
こうして高坂は1日ぶりに百多々へ向かった。