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第三話「春葉」

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 高坂はこう叫んだ。

「アキバと同じ雰囲気だぁ!」と。

 春葉自治区。百多々の中部にある家電量販店などが多く並ぶ地域。

 それは東京の秋葉原や大阪の日本橋を彷彿とさせる。

 高坂は関西に住んでいるが、パソコン目当てで秋葉原に毎月一回のペースで行くほどだ。

「マジでアキバとかポンバシと同じ感じがする!」

 宮下は百多々の高官にこう説明した。

「彼、こういうのには目がないんです。休日にパソコンショップを巡ったりするくらいにはこういった場所が好きでして」


 宮下と高官はスーツ姿のため、私服の高坂と別行動を取る事になった。

「じゃあ、俺は春葉を巡ってます」

「なんかいいのがあっても買うなよ。一応日本政府が決めている行動なんだから」


 高坂は駅のそば、高架下にあるパソコンショップに寄った。

「32GBメモリのグラボが1万円!?」

 そう驚きながら、どこのチップか分からないからと考えていた高坂は店主の男性にこう聞いた。

「これって、DIVIA製のR4090とかですかね?」

 高坂はアメリカメーカーの最上位モデルのグラフィックボードかと聞く。

「なんだいそのメーカー、これはDMC製のS7100だよ。5世代も前の新品だしローエンドもローエンドだよそりゃ」

 ここは日本でもなけりゃ一週間前までこの世界のどこにもなかった場所。

 それをふと思い出し、pcie接続でない可能性を考えた高坂は店を後にした。


「そういや、アキバとは違ってメイドカフェとかがねーな。その代わり楽器屋とかスマホショップみたいなのが多いな」

 そう言いながら、高坂は表通りとは少し違う雰囲気の路地に入る。


「おぉ、中古PCショップもあるのか。もはやアキバ超えてるかもな」

 高坂はその店に入ると、日本でもよく見た光景を目の当たりにした。

「そうそう、このジャンク品の乱雑に積んである感じよ」

 高坂はジャンク品のコーナーを見ていく。

「3連ファンのこれは……24GB!?しかも見た感じpcie接続っぽいし。って3000円!?」

「CPUとマザボのセットで……32コア64スレッド!?しかも1400円!?この店価格設定どうなってるんだ?」

 高坂は即決で購入した。

「それで、自費とはいえ大量に購入してしまったと」

 宮下はあきれた顔で大きなレジ袋を持った高坂を見ていた。

「すみません……。でも日本で買うより何十割も安くて」

 そう言った高坂に対し、宮下はこう言った。

「でもじゃない。実際その金は今日の宿泊費だろ。昨日はリゾートホテルに泊まらせてもらえたが、今日は自衛隊側が百多々の防衛省と一緒に野営するからって各自でホテルを取るって」

 高坂は、完全にそれを忘れていた。

「まあ、残った3000円で泊まれる所探しますから……」


 夜八時半。春葉から北に歩いた久音という地域に高坂は居た。

「やっぱり転移したから泊まりに来る人が居なくてホテルはほぼ休業してるな……」

 路頭に迷いかけていた高坂。

 しかし、古めの照明が点灯している民宿を見つけた。

「2500円です」

 部屋は7畳半の和室とトイレ。大浴場はそれなりの大きさ。

 2500円で泊まれるような民宿じゃない気もしたが、疲れた高坂はチェックインすることにした。

「そういえば、通貨は今日の朝両替してもらったが名前も価値も同じ円だな。なんでだろ」

 そう考えながら風呂から上がった高坂は、着替えを済ませたときに女性の叫び声を聞く。

「なんだ!?」


 急いで声のしたエントランスへ向かうと、そこには少女が震えながら転んでいた。

「どうしたんですか!?」

 その少女は、窓の方を指差した。

「ご、ゴキブリ……!」

 高坂はゴキブリを筒状にした新聞紙で急いで倒す。

「なんだ、ゴキブリかよ。てかゴキブリって百多々にもいるんだな」


 すると、その少女はこういった。

「わざわざすみません。宿泊客の方ですか?」

「はい、204号室の高坂です」

 少女はこう返した。

「ありがとうございます。ここ、私の実家が経営する民宿で……」

 そういうと、少女は親に呼ばれ事務室に入っていく。

「アリス、明日から空軍学校再開でしょ?早く寝ないと」

「空軍学校……?防衛大学校的な物かな」

 そう考えながら、高坂は眠りについた。


 翌朝。

 高坂の携帯には宮下からメッセージが届いていた。

「今日は空軍基地に向かうが、今どこにいるんだ?」

 部屋の時計は7時半。

「やっべ、もうこんな時間」

 高坂は宮下に場所を教え、急いでチェックアウトしようとする。

「204号室の高坂さんですか?昨日は娘がありがとうございました」

 昨日のアリスという少女の母親のようだ。

「女将の大波栗栖です」

 20代前半にしか見えないくらい美しい女性だ。

 百多々に来てから美人だったりイケメンしか見てない気がしてきた。

「あっ、はい。どうされました?」

「朝食の材料がここ数日のトラブルで残ってまして。食べていきますか?」

 よく考えると俺の所持金ももう500円だけなので、ご厚意に甘えて食べていく事にした。


「写真撮っていいですか?」

 高坂は朝食を作っている栗栖にそう聞く。

「えっ、いいですけど何かありましたか?」

 高坂はこう言う。

「ここだけの話なんですけど……。実は僕は日本から来たものでして」

 栗栖は驚く。

「あら、あの日本から。それは本当ですか!?」

「はい。それで、日本では魔法は空想上の物と考えられていたのでそのような料理にまで魔法が使われているのが珍しくて」

 栗栖は高坂にこう返した。

「いいですよ。そういえばなのですが、日本ってどんな国なのですか?テレビでうっすらとしか伝わってないのですが……」

 高坂はこう言った。

「百多々によく似てますよ。魔法がない百多々みたいなもんですよ。でもアニメとかゲームとかの文化は日本の方が人気かもしれないですね」

 すると、栗栖はこう言った。

「アニメ、ゲーム?なんですかそれは」


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