第二話「大統領」
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大統領執務室。そこには、青い髪の若い男性がいた。
「百多々自治政府総合府大統領の、百々原蒼です。」
「日本政府、防衛省副大臣の宮下洋平です。」
大統領の百々原と名乗る人物は高身長な宮下より身長が高く、顔もアイドル並みに美形だ。
向こうの方にいた秘書らしき女性より身長が低い高坂は少し目をそらしながら、こう聞いた。
「日本から参りました、高坂由真です。まず、百多々の人口など、基本の情報を教えてほしいのですが」
百々原はこう返した。
「転移前のデータですが、人口は447万人。国土のほとんどは都市化されていますが、一部地域には石油資源があります。また、この大統領府のある場所と空港の間には学園都市などもあり、教育水準は高いと思います」
宮下はこう聞いた。
「教育といいますと、先ほどお出迎えしてくれたホログラムが言っていたような魔法なども教えているのでしょうか?」
百々原はこう返した。
「もちろんです。この世界の事情はそこまで詳しくないのですが、この世界の魔法はどのようなものなのでしょうか?」
宮下は言葉を詰まらせる。
「この世界における魔法は、一般的には創作上のもので実在しないですね。」
高坂がそう言うと、百々原は驚いた表情でこう言った。
「えっ、魔法が存在しない!?」
「ええ、魔法は空想のものとなっています。この世界で魔法があるのはこの百多々だけとなりますね」
百々原はこの世界について宮下と高坂に問いかけた。
「それで、現在我が国はどのような状況にあるのでしょうか」
宮下はこう返した。
「正直言って、いい状況とは言えません。アメリカという日本と同盟を結んでいる国があるのですが、そこはここ百多々を脅威とみなしていますし、そもそもこの百多々がある場所は中東と呼ばれ紛争が絶えない地域です」
百々原はこう言った。
「そうか……。アメリカには我が国が脅威ではないことを伝えてくれないか?」
宮下はこう返した。
「分かりました。しかしながら善処はいたしますが、今のアメリカ大統領であるジェイミー・L・スミス氏はかなりの強硬派でして、簡単に聞き入れるとは……」
百々原は少し暗い表情でこう返した。
「分かった。しかし、我が国が脅威ではない事を周知させてくれ」
さらにこう言った。
「それとなのだが、この世界の情報網のシステムはどうなっている?」
高坂はこう返した。
「インターネットという世界規模の情報網があり、それぞれのコンピュータに割り振られたIPアドレスという識別番号を使っています」
百々原はこう言った。
「それは元の世界と同じようだ。しかしながらこの世界に転移してからインターネットに接続できないんだ。一体何故か分かるか、調査してもらいたい」
宮下はこう言った。
「もちろんです。高坂はそういったのが本職ですので」
高坂は丸投げされたと思いながらも、理由を調べることになった。
その日の夜。
「今日は百多々で一番いいレベルのホテルをご用意させていただきました。長い時間飛行機に乗っていたとお聞きしましたから、疲れを取ってください」
ホログラム投影されたアテンダントがそう言うと、俺たちはバスで十五分ほど移動したところにあるリゾートホテルに到着した。
「国賓待遇みてえだな」
高坂がそう言うと、
「実際国賓みたいなものだ」
と宮下がつぶやいていた。
「はぁー。温泉も気持ちよかった。あっといけないいけない。インターネットに接続できない原因を調べないと」
高坂はそういうとノートパソコンを開き、この国のプロバイダーのシステムを確認する。
「あれ、IPアドレスが64桁?そりゃあ接続できねぇわ」
意外とあっさりインターネット問題は解決し、翌日の昼頃にはインターネットに接続できるようになった。
百多々でのインターネット接続が復旧した頃、アメリカ・ホワイトハウスでは大統領らが緊急会議を開いていた。
「何!?百多々に日本の航空自衛隊機が!?」
スミスは驚きと怒りを隠せずにいた。
「はい、さらに百多々からとみられるインターネットのアクセスが突然数千万以上……」
スミスはこう返した。
「そんな事ありえない!あったとしたらそれはサイバー攻撃だ!」
そんな中、一人の男が手を挙げた。
NSA長官のボビー・E・ラモスである。
「plasmaシステムで検知された百多々からのアクセスの中に、日本のプログラマーが居ます」
plasmaシステム。アメリカが秘密裏に開発したインターネット監視システムである。
「名前は高坂由真。去年ロシアから防衛省にサイバー攻撃があったが、その攻撃を神がかり的な方法で封じ込めた男だ。兵庫県西宮市在住の27歳。二日前まで日本国内からアクセスした記録が残っている」
すると、スミスはこう言った。
「その男が今回のサイバー攻撃を主導したと?」
ラモスはこう返した。
「サイバー攻撃であるかははっきりしません。監視を見ても、特定サイトへのアクセスが急増しているわけではなく一般的なアクセスです。推測ですが、百多々のインターネットで障害が起き接続ができていなかった。そんな中その高坂という男が復旧させたと考えます」
スミスは怒りながらこう言った。
「君まで百多々が本当に転移してきたというのかね!?」
ラモスはこう返した。
「い、いえ。そういう訳ではございませんが。しかしながら突然島ができるだけならまだしも、あのような文明が急にできるなんてはっきり言ってそのようなファンタジーな言葉でしか説明できないのです」
スミスはこう言った。
「SF映画の見過ぎかね。会議は一旦終わりだ。」
一方その頃、宮下・高坂らは百多々政府の高官に市街地を案内してもらっていた。
「すげぇ、まるで未来に来たみたいだ。」
高坂はそう言いながら電車からの景色を見る。
「もうすぐ春葉につきます」
電車を降り改札を出ると、高坂はこう叫んだ。
「アキバと同じ雰囲気だぁ!」と。