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ついに1年も残り僅かになり、年の瀬なんて言葉に耳馴染みを覚えるようになった。
世間では忘年会シーズンと言われ、夜の街には良くも悪くも酔っ払った社会人の集団が蔓延っている。
そして、遂に自分たちのサークルでもその忘年会が開かれるようになった。
あまり目立たないとはいえ、大人数の前であるため、普段よりも少し女装を張り切って参加することに。
「忘年会か……」
そんなため息を漏らしながら、集合場所であるお店へ向かった。
駅から近い距離にお店は位置していたため、特に迷うことなく到着した。
早速店の戸を開けた瞬間、漂う酒の臭いと客たちの愉快な声に辟易としてしまった。
居酒屋として当たり前のことであるのだが、体が反射的に拒絶してしまった。
しかし、店内を見渡してみてもサークルの人が誰1人居ない。一瞬店を間違えたかと思ったが、自分が早く来すぎてしまったのだと悟った。
早く来る分には良いだろうと思い、とりあえず席に着く事にした
「すみません、○○大学の△△サークルで予約していた者なんですけど……」
「はい、△△サークル様ですね!あちらの奥の席になります!」
席に着き、待っている間は自分の女装が変じゃないか、ひたすら手鏡を見て確認していた。
「今日のメイク大丈夫かな……」
「今まで女装バレたことないから大丈夫だとは思うけど、、、念には念を……」
集合時間から少し時間が過ぎた頃、聞き馴染みのある声が次々に聞こえてきた。
どうやら自分以外のみんなは1度駅に集合してから来たそうだ。
自分の疎外感を感じる瞬間の1つだ。
「団体様入りまーす!」
店員の張り切った声が聞こえる。そして、賑わしい声は段々と近づいて来る。
「とりあえず、適当に奥から詰めて座ってって〜!」
サークル長が皆んなに指示をする。
幸い、友達はこちらの存在にいち早く気づいてくれたため自分の隣に座ってくれた。
「お待たせ〜!先来てたんだね!」
「駅で集合した時に居なかったから来ないのかと思ったよ〜w」
駅集合なんてことは聞かされていない。
恐らく直前に決まったことで、口伝達で知らされたことなのだろう。
「そ、そうだったんだね……多分こっちに伝わなってなかったのかも……」
とりあえず、隣が気兼ねなく話せる友で良かったと安堵している瞬間にとある事に気づいた。それは自然と男女が向かい合う形で座っているということだ。
やはり自分以外のみんなは合コンの1つや2つは経験してるのだろう、無意識のうちにこういった事が出来てしまうのだ。
そして前には、サークル内でそこそこ人気がある男子が座った。
大学では女子としか話せていないため、もちろん目の前の彼とは話したことが無い。それが故、どのような人かはあまり分からないが、サークル内では寡黙なイメージが強い。
なんて事を考えていると不覚にもその彼と目が合ってしまった。大抵の人は自分に限らず目を離そうとするが、彼は笑顔をこちらへ向けてくれた。同性であるが思わず少しときめいてしまった……
「こういう飲み会とかはじめて?」
彼から声を掛けてくれた。そんな経験は当然ない訳で、少し戸惑ったが受け答えた。
「そ、そうだね……最近20歳になったばかりだからあんまりこういうの慣れてなくて……」
「そうなんだ〜。じゃあ、あんまりお酒とか飲めないよね…?無理して飲まなくて大丈夫だからね!」
ぎこち無い自分の返答にもしっかりと対応してくれている。同性ながら惚れてしまいそうだ……
なんて思っていたら全員が座り終わって、店員が注文を伺いに来た。
「ご注文はいかがなさいますか?」
「とりあえず生中人数分で!」
サークル長の台詞を聴いて自分は不安に駆られた。お酒は1回しか飲んだ事がなく、それも度数の低いジュースのようなお酒であったため、ビールは飲んだ事がない。そんな自分でも飲めるが不安になりつつも、とりあえずその生ビールが来るのを待った。
そしたらサークル内の1人がとある提案をした
「ねえねえ、とりあえずみんな自己紹介しない?」
「それいーね!」
周りのみんなが提案に賛同する。
(みんなの前で喋るのか……嫌だなぁ……)
そう思いながらも自己紹介が始まっていく。
最初は手前側の人達が自己紹介をし、その中で陽キャの人たちがネタに走り、みんなを笑わせてくる。
そして順番が徐々に迫っていき、遂に隣の友達の番になった。
「2年生の□□学部の井上桜春です!宜しくお願いします!」
有難いことに普通の自己紹介をしてくれたためハードルが低い状態で自己紹介をすることができる。
「ど、どうも……同じく2年生の✕✕学部の北川翡翠です……。宜しく お願いします……」
これにて女性陣の自己紹介が終わり男性陣側の自己紹介に移る。今度は奥から始まるので自分の目の前の彼から自己紹介が始まる。
「えー……自分も同じく2年生の✕✕学部の秋山楓です。 今日は宜しくお願いします。」
なんと自分と同じ学部だと判明した。大学の講義は普段一人で受講しているため特に気づかなかった。
(楓くんか、、女の子みたいな名前だなぁ……)
そう思いながら、ほかの人の自己紹介を聞いていった。
そして自己紹介が終わった頃に生ビールが届いた。
「じゃあ乾杯するよー!」
「えー。今年1年お疲れ様でした!乾杯!」
「かんぱ〜い!」
サークル長の音頭で飲み会が始まった。
(え、、、中ジョッキってこんな量多いの……?)
(飲み切れるかな……)
なんて不安になりながら、恐る恐るビールを口へ運ぶ。
ゴクッ……
口に入れて飲み込んだ瞬間、思わず直ぐにジョッキを置いてしまった。
(なにこれ……苦いし、美味しくないよ……)
(それにアルコール度数も高いし……最悪だ……)
※ビールのアルコール度数は4~7%程です。
自分以外の殆どはビールを一気に飲み干しているのを見て恐怖を覚えた。
「大丈夫?ビール苦手かな?」
ビールの不味さに閉口していた時、目の前の彼が心配してくれた。
「うん……初めてビール飲んだから、口に合わないかも……」
「とりあえず、飲んでないままだと目立っちゃうから俺飲んじゃうね。」
「ごめんね、、ありがとう……」
その後は気持ち悪さを紛らわせるためにお冷を飲んで何とか目立たないようにやり過ごしていた
(あー……気持ち悪い……)
(あの時ちゃんと断ればよかった……)
(それに、、アルコール回ってきてなんか眠くなってきた……)
(なんかぼーっする……)
そう思ううちに自然と眠りに着いてしまった……
今回もまた深夜テンションで書きました。
なんか今回は前回に比べて随分長くなってしまいました。
一応頭の中ではもう8話くらいは出来上がっているのですが、文字にするとなると中々上手くいきません。とりあえずまた気が向いたら執筆し始めます。