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この花は咲かないが、薬にはなる。  作者: sirosugi
ストラ 13歳 王国騒乱編

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91 ストラ、一般兵士に怯えられる。

ストラ―さんがカチコミに来たわけではありません。

 ボルド将軍、あるいはボルド大将。という人物について私は知らない。ゲームに置いて戦闘は、方針を決定した上でのオート戦闘で、大規模戦闘はテキストのみだった。戦争とか軍隊なんてものも絵物語の姿しか知らない。ただ知識として、そのやばさは知っている。

 なので、私はフル装備で向かうことにした。

 鞄には、学年園から拝借した各種薬草をこれでもかと入れ、大型トランクにはハチミツや酒を詰め込んでおく。両肩にはハルちゃんとサンちゃん、もう一つの鞄にはステラがスタンバイ。周囲に兵隊ハチたちが巡回する中、クマ吉には特注のベルトでトランクを固定。保存がきく食材や素材ばかりだけど、兵站も戦力も充分だ。

 それらの装備を持ったうえで、新品の白衣を着て、クマにまたがり目的地へと爆走する。それによって道中の街や村の混乱はもはや気にしない。

 王都からクマ吉を爆走させること一週間。それなりの騒ぎになりながら、私はボルド大将の陣営に到着した。

「これって、もはや街だな―。」

 行軍のための一時基地として作られた場所と聞いていた陣営は、壁こそ即席のものであったが、その向こうにはたくさんの兵隊さん達がせわしなく動き回るにぎやかな場所だった。

「と、とまれー。とまってくださいー。」

 ゆっくりと近づく(さすがに爆速で近づけさせるほど馬鹿なことはしない。)と、門番らしき兵隊さん達(多め)が大声をあげながら近づいてきた。

「この先は、ボルド大将の設営された国軍の陣だ。そのようなば、。」

「ぐるるるる(はっ?)」

「精霊殿でも、許可がなければ通すことはできません。」

 言いながらも腰が引けている様子にちょっと申し訳ない気持ちになるけど、こういうのは初手のインパクトが大事だ。舐められる前に出鼻をくじいていく必要がある。

 あえて語らずに私はクマ吉の上からそんな様子を見下ろしていた。いや降りたら怖いし。

「ま、まて、巨大なクマに白衣。あれって噂の薬師じゃないのか?」

「まじか、ハチミツの?」

「グレイエイプを殲滅した?」

 そして改めて思うけど、私の評判ってなんなんだろう。

「し、失礼ながら、ストラ・ハッサム嬢でよろしいでしょうか。」

「はい、国王の勅命および、ボルド将軍の要請により出向しました。」

 おずおずと尋ねてくる門番さんに、例の書状(王家の印つき)を掲げてみせる。

「し、失礼しました。ただちに連絡いたしますので、しばしお待ちを。」 

 それを見て事態の重さを知ったのか、大慌てでかけていく。王家の印をもっている人間の立場は重い、門番が簡単に対応していい相手ではないのだけれど。

「私放置って・・・。」

「じじじ(これだけ威嚇しておいて、今更じゃない。)」

 まあ、下手な椅子よりもクマ吉の毛皮の方が居心地がいいからいいけど。


 その後、慌ててやってきた、士官(本人は大佐と名乗っていた。)に案内されて私は、陣営の最奥にあるボルド将軍の天幕まですぐ案内された。

「し、失礼ながらクマ様は。」

「わかってます。陣の外で待機させます。いいよね?」

「ぐるるるる(了解。食事になったら呼んで)。」

 クマ吉は陣の外で待機、あの巨体から降りたせいで、思った以上に小さいなってリアクションをされたが、私はまだ13歳の小娘だ。そこはしょうがない。

「ボルド閣下。薬師殿をお連れしました。」

「うむ。お入りいただきなさい。」

 天幕の前で士官さんは大きな声を上げて、天幕を上げる。

「どうぞ、お入りください。」

「どうも。」

 リュックも鞄もそのままに私は天幕の中に入る。

「これはこれは、薬師度の、王都よりご苦労様です。」

 天幕の中は、テントは思えないほどしっかりとした作りだった。支柱となる柱は即席のものなはずなのに天井は濃い緑色で、足元にはすのこの板。調度品や家具も豪華なものでホテルの一室と見まがうものだった。

「どうも。ストラ・ハッサムです。」

「これはご丁寧に、ボルド・オーラル。この陣営の管理を陛下から任されている大将であります。」

 丁寧に頭を下げる私に対して、びしっと敬礼を返したボルド将軍とその側近(護衛かもしれない)らしき人たち。

 ちなみにこれは間違いでない。王家の印をもつ私は、要件が済むまでは国家の使者となり、この場では最高権力となる。

「ストラ・ハッサム。国王の勅命より、閣下の指揮下に入らせていただきます。」

 敬礼はせず頭を下げる。あくまで軍属ではない子どもとしての振る舞いに、ボルド閣下も腕をおろす。

「突然のことでおどろかれたと思う。しかし、薬師殿のお孫様で、薬師殿が一人前と認めるストラさんのお力をお借りしたかったのだ。」

「それは光栄です。微力を尽くさせていただきます。」

 これで立場は使者から客人に代わる。テーブルに案内されお茶をだされる。

「どこまで状況は聞いているのかな?」

 妙に子どもっぽいクッキーとカップに顔をしかめていてたら、さっそくとばかりにボルド将軍は話しかけてきた。

「ええっと、北伐でしたっけ?閣下が北の2国へのけん制も兼ねた侵略行為を画策しているとか。」

「はは、間違ってはいないが、中央ではそういうことになっているのか。」

「というのは建前で、きな臭い2国の状況に先手を打ってスベン付近に防衛線を構築することが目的。というのがスラート王子の意見でした。」

 苦笑が凍り付き、側近の1人が剣呑な目で立ち上がる。

「控えろ。」

 そして、即座にボルド将軍に制されて席に戻る。

「いやはや、小娘と思っていたがなかなかどうして。」

 人の良いおじさんといった雰囲気から、どう猛な肉食獣、それも巣に天敵と遭遇した時のような迫力、これが将軍の本性?。

「ずいぶんと素敵なお顔ですね。」

 申し訳ないけど、これなら薬をくすねたのがばれたときのじいちゃんや、戦闘モードの精霊さん達の方が怖い。

「私は出兵前の兵士さん達の健康診断と聞いていましたけど。そんな顔をされたらうちの子たちが怯えてしまいますわ。」

「じじじ(やる、やっちゃう?)」

「ふるるる(なかなかに強そうだけど、敵じゃないな。)」

 やるなら、やるぞ。(ハチとフクロウが)

「ははは、これは傑作だ。自慢の配下たちが一歩とも動けないとは。これが辺境の魔女にして、薬師の弟子か。実に面白い。」

 わりと本気の威嚇を返したら将軍だけはなんかご満悦だった。

 そして、「辺境の魔女」ってなんですか?また、なんか新しいあだ名がでてきたんですけど。




ストラ「なめられたらあかんのよ。」

兵士たち「やばいやつだー。」

ボルド「さすがはあの人たちのお孫様。」

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