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この花は咲かないが、薬にはなる。  作者: sirosugi
ストラ 13歳 王国騒乱編

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89 思った以上に平和だとしても油断できないストラさん

ストラ的世界の解釈

 帝国の精鋭部隊が山脈を超えられなくて撤退した。

 エセ宗教国家の神官が王国から駆逐された。

Q 世界を揺るがしかねない大ニュース、それを両方とも知った一般学生はどうすればいいんですか?

A 何もしない。聞かなかったことにする。 

 いやだってさあ、私は田舎出身のちょっと賢いだけの女学生よ、まだ13歳にもなってないのよ。病人とか青春拗らせている子どもをどうにかするならまだしも、国単位の問題はさすがに知らんて。

「黒幕で元凶が何を言ってるのかしら。」

「いやいや、メイナ様、それは言いすぎですよ。」

 帝国の侵略を蹴散らしたのは愉快な精霊さんたちだし、エセ宗教の連中は自業自得ですよねー。

「精霊様たちが協力したこと、何より一か所に集まっていたのはあなたのハッサム村でしょ?」

 ニコニコとお茶を飲みながらメイナ様の目が笑ってない。

「それに、お母さまの治療をきっかけに、貴族たちの生活習慣を改善させたのはアナタでしょ。スラート王子とガルーダ王子の仲を取り持って、創生教のくだらない思想が入り込む余地がなくなったのはあなたの功績でしてよ。」

「いやー、そんなことないですよー。」

 思えばメイナ様に助言して、スラート王子との仲を取り持ったかもしれない?ガルーダ王子にハチミツアメをあげたら、なんかなつかれて、それをきっかけに王子2人の仲が良くなったんだよねー。

 ゲームでは、この二人の不和に創生教がつけこんだ。人類至上主義な宗教の考え方は、エリートゆえに孤独なスラート王子を侵食し、ひどい差別主義者になった。それでその差別を真っ向から受けたガルーダ王子は偏屈な性悪になった。そうして次代をめぐる争いは陰険で根深い物となりそれによって国政に隙ができてしまう。

 それに拍車をかけるのが、母親を失って不安定になったメイナ様とそれを溺愛して荒れる辺境伯様だった。差別と八つ当たりをする娘と辺境伯家。それによって獣人たちラジーバとの関係は壊滅的となり、優秀な人材はスベンへと流れてしまった。

 そんな危うい状態の中で国家そっちのけでヒロイン争奪戦をする攻略対象達。帝国が山脈を超えるのと、創生教が本性を現すのはこのタイミングだった。

「ああ、危なかった。」

 メイサ様とスラート王子の関係が良好だったから、油断していたが、この二つのイベントは対応を誤ればバッドエンド直行の厄ネタだった。なんかあっさり解決しているように見えるけど、帝国の侵略はハッサム村が火の海になるし、宗教国家の暗躍で主人公は魔女狩りにあう。

「そうですわ、私やストラのことを魔女といって害をなそうとした者もいたらしいです。学園は安全ですけど、あなたも気をつけなさい。」

「あっそっちは大丈夫ですよ。」

 危なかった発言を勘違いしたメイナ様に私はけらけらと笑う。

「ハルちゃんたちの警戒網を抜けて、メイナ様に悪意をもった存在がたどり着けるわけないじゃないですか?」

「じじじじ(我らは風にして、空気。我らに察知できぬことなどありません。)」

「あらあら、それは頼もしいですわ。」

 私の言葉に対応してビシッとポーズを決めるハチさん達。養蜂箱のおかげで着実に勢力図を広げるハチさんは最近、アサギリ村にも拠点を作ることになり、学園の防衛にも力を貸すようになった。私やメイナ様とつるんでいるハルちゃんにも姪っ子が増えた。

 そんなわけで、私の下に集まる情報の量も質もちょっとおかしなことになっている。

「でもまあ、私が魔女ですか。」

 不本意な事として、その情報の中には、貴族病の治療法を提案したじいちゃんと私のことを、帝国や創生教の人間がそう評価して、警戒していることだ。

 この世界に置いて魔法を使う生き物を精霊と呼ぶ。その中でも邪悪なものを魔物と呼ばれる。そんな精霊と意志疎通が可能な私やメイナ様は聖女と称される一方で、魔物と通じる魔女と恐れる二面性がある。これは光(メイナ様)が強い反動だろう。

 辺境伯家の娘であり将来の国母。その凛とした佇まいは見る者の目を奪う。それでいて知的で穏やか、行使する回復魔法は、一般人や創生教の専門家でも足元に及ばないくらい強い。スラート王子と共に慈善活動にも熱心な彼女は国民にも顔が知られており、人気も高い。「聖女様」という評価がゆるぎないものとなっていた。

 一方で私はといえば、学園へ入学するまでは、社交界に顔を出すこともない引きこもり。それでいて、精霊を使った戦術を提案してグレイエイプを殲滅し、貴族たちにとっての生命線である貴族病の予防薬と二日酔いの薬を提供している辺境の賢者の孫。そこに、ガルーダ王子が宣伝したハチミツアメとエナジードリンクと、各地に広がった養蜂事業の提唱者という無視できない功績の数々。

 気づけば辺境伯家の人間を顎で使っていたなんて噂も広がり、魔物と通じて国に害をなそうとしている魔女という評判が生まれてしまったらしい。

 関係者は私の実態を知っているので、その噂には深く関わらなかった。曖昧にした方が目立たないだろうという気遣いもあったのだろう。メイナ様の評判がいじりづらい分、私の評判は色々と1人歩きしているらしい。

 特に帝国と宗教国ではひどいらしい。

 曰く、魔物を操り山脈を封鎖し、大陸を分断しようとしている。

 曰く、嘘の薬で王国を掌握し、支配しようとしている。

 曰く、昨年の冷害は、魔女の魔法によるもの。

 曰く、皇帝陛下が乱心したのは、

 などなど、もう何か悪い事は全部、魔女の所為ということになっている。やりすぎて、逆に信用がないっていうレベルになっているらしい。

「まったく、私の友人を魔女だなんて。」

 一部に限っては間違ってないですけどね。少なくとも、創生教からすると、私は怨敵認定されてそう。

 

ここにきて、ストラの蒔いてきた種がフラグとなって押し寄せる。

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