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この花は咲かないが、薬にはなる。  作者: sirosugi
ストラ 12歳 学園編

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86 獣人は薬師を語る。

ソフィア・ルーサーこと、ソフィーちゃん視点のストラとリットン君の話。

 獣人にとって、大事なのは見た目ではなく力です。厳しい砂漠地帯を故郷とする獣人たちにとって、大事なことは生き残り、家族を養う力や知識こそが正義です。砂漠に潜む魔物を倒す力と少ない糧を活かす知識。それらを求めて獣人たちは世界を旅し、優秀な血は積極的に取り入れてきました。

 だからこそ、私や兄のように同じ両親から生まれても見た目は似てない。兄であるマルクスはオオカミ、妹である私には、ヒョウの因子が強く発現しているらしいです。これは獣人の中でも珍しい因子らしく、魔法や身体的な才能は一族でも随一です。その上で王族として幼いころから厳しい訓練と教育を乗り越えてきた、私たちは同世代では負けない。そう思っていた時期がありました。

 最初に敗北を知ったのは、入学試験の実技試験でいした。魔法を的に撃ちこむだけの簡単なテスト。遠くの的に当てるのが精いっぱいだった同級生のレベルの低さにこんなものかと思っていた私たち兄妹の前で、爆音と共に的を破壊したのは、ビー様でした。

「あああ、すいません、力み過ぎましたー。」

 撃った後で、慌てる本人だが、周囲の混乱はそれ以上だった。試験用に交換が可能な的だとはいえ、10数個あるそれらをまともに吹き飛ばす魔法。そんなものは初めて見ました。

 炎ならば、燃え上がることはあっても衝撃波はでない。風魔法なら吹き飛ばすことはあっても、あんな瞬発力はでない。

「ああ、もう。なんで空気爆破をだしちゃうかなー。」

 そんな中、唯一平然としていたのは、左右の肩にフクロウとハチを乗せた学生でした。従魔を示す飾りはしてあっても、あの存在感は動物ではなく、精霊であることは見る人が見れば分かること。

「はいはい、みんな、スポットお願い。」

 突然、存在感を出した彼女に一同が驚くなか、その人は周囲に集まったハチたちに指示を出して的が置いてあった場所へ飛ばします。

「ポイント、座標ヨシ。」

「じじじ(マーカーヨシ。)」

「ふるるる(任せろー。)」

 次の瞬間には風魔法で的破片が集まり、同時に小さな火柱が上がりまマス。

「分解、再構成、焼成。これでよし。」

 パチンと指が鳴らされると同時に、火が消え、あとに残っていのは、何事もなかったかのようにならでいる的の数々でした。

「お、お嬢ありがとうございます。」

「いやー、だからさ、複合系を使うまでもないっていったじゃん。」

「でも、僕のできる最大威力って。」

「それがやりすぎだってのよ。」

「あいた。ごめんなさい。」

 これは、後で聞いたことなのですが、訓練場の的は土魔法で作られた簡易的なもので、壊れるたびに担当の人が直していたそうです。指定されたポイントに一つずつ、歩いて設置する方法で・・・。

 目立つ爆発に気を取られてた多くの人達は、そのインパクトからビー様の存在に注目していました。それと比べると地味な再生劇。土魔法と精霊のおかげと皆が思っていましたが、いくつもの魔法を組み合わせる、お義姉様、ストラ・ハッサム様の発想力と魔力の高さは驚愕の一言でしたわ。

「ああ、あれはな、あらかじめ土魔法で変質させた空気を圧縮した状態で火をつけるんだよ。パターン化して記憶しておけば、誰でも使えるよ。」

 そして、尋ねたらあっさりと教えてくれる懐の深さ。いや、この人にとってはなんでもない技術であると気づいたとき、世界の広さと自分の未熟さを嫌というほど知りました。

 魔法というのは火、水、雷、風、土といった基本属性と、回復魔法や身体強化などの強化系。何もないところから水や火を生み出す魔法は砂漠では必須技能ですけれぼ、それらを組み合わせる発想、そしてそれを可能にする魔力というのは獣人、少なくとも私にはありませんでした。

「ああ、魔力なら、使い切って回復するを繰り返せばいんですよ。」

「なんて?」

 話に聞いたことはありました。ですが、魔力を使い切るというのは砂漠では命の危機です。万が一のために魔力は温存するという考えが基本だった獣人にとって驚きでした。

「魔力回復にはハチミツがいいですよ。ああ、これ、ハチミツアメです、よかったらどうぞ。」

 そんな貴重な物を?

 ニコニコと私にそれを手渡すビー様には、善意しかなく、大変可愛らしかったです。

「この恩は忘れません。」

「いえ、みちづ、訓練友達ができるのはうれしいので。」

 訓練友達、まあ、それもいいでしょう。ビー様もその主であるストラ様も、私が質問すれば丁寧に教えてくれるし、ハチミツアメやエナジードリンクなどの貴重なものをたくさん融通してくれた。もちろん対価は払っていましたわよ。お友達価格ということで、だいぶお安かったのですけど。

 交流をもって数日のことである。警戒心とかないんですかこの人達?と思いました。

 ストラ様の知識と強さ、気づけば「お義姉様」と呼んで尊敬したストラ様は、大変忙しい日々を過ごしており、教えてくれたり、訓練に付き合ってくれたりしたのは、ビー様でした。

「僕はもともと、庶民だったんです。魔法も使えませんでした。」

「そうなんですか?」

一緒にいる時間も続けば、おのずと相手のこともわかるわけで。

「うん、お嬢の話だと、ハッサム村の近くは魔力が豊富だから、鍛えたら鍛えただけ強くなるってね。色々鍛えられたよ。」

 その時、懐かしそうに、それでいて遠くを見る目には、並々ならぬ日々が溶け込んでいるようでした。おそらく、とんでもない努力をして、この人はこの場所にいる。そう思ったときにはときめいていました。

「ビー様、お慕いしていますわ。」

「ええっと、ありがとうございます。」

 同じ訓練ように訓練したり、勉強したりし日々で、学園内でもかなりビー様と距離が近い存在になったと思います。ですが、

「じゃあ、今日もがんばりましょう。」

 その距離感か、ビー様の謙虚さゆえか、私の思いは友人としてのそれと勘違いされてしまいました。

「ああ、リットン君ってそういう経験ゼロだからねー。もういっそ押し倒しちゃいな。」

「お義姉様、そんな破廉恥な事できませんわ。」

 なんか、ストラ様は、私とビー様の関係は応援してくださるんですよねー。

「いや、うん。ソフィア様なら大丈夫かなって思ったので。」

 何が、お義姉様の琴線に触れたのかはわかりません。ですが、私がビー様にアプローチする分には何も言いません、なんならそれとなく二人きりにしてくれたりなど応援してくれるんです。

「ストラ・ハッサム、貴公に決闘を申し込む。」

「いやです。」

 じゃあ、なんで兄とは、あんななのか?それは兄が悪いです。ビー様やストラ様の返事を聞かずにビー様やお義姉様をスカウトしようとした上に、思い込みから暴走してますから。

「まあ、獣人ってそういうもんだから。」

 違います、アレ(兄)は特別馬鹿なだけです。獣人の名誉に誓ってそんなことはないんです。

「ソフィア様も大変ですね。王族の事情ってよくわからないけど、僕にできることがあったら、いつでも相談してくださいね。」

 おかげで、ビー様と仲が進展しない。あの兄、早くなんとかしないと。


マルクス王子「私の扱い雑すぎない?」

 頑張れ王子。

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