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この花は咲かないが、薬にはなる。  作者: sirosugi
ストラ 12歳 学園編

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69 エルフは食で釣れるらしい。

新キャラ登場? カレーが織りなす人間関係

 久しぶりのカレーを食べたからだろうか。それとも思った以上に反響が大きくて忙しかったからだろうか? 私は油断していた。

「お前は、魔女なのか、それとも聖女か?」

 真剣な様子で問いかけるイケメン。その浮世離れした雰囲気を目の当たりにする瞬間になって私は自分の迂闊さを呪っていた。


 ことのきっかけは数日前に起きたカレー作りだ。私からすると前世の記憶を頼りに思い出の味を再現したに過ぎないのだが、その味や調理法は産業革命レベルのインパクトがあったようだ。

 虫よけ、獣よけ程度にしか使われて来なかったカレーの材料、もとい香辛料の数々はスラート王子とガルーダ王子のお墨付きをもらった上で、フォルクス先輩を中心に研究チームが作られた、のはもう話したか。そういった流れの中で、卵焼きや揚げ物といった私好みの料理をゲストハウスや食堂の料理人に教えたら本職の彼らはすぐに覚えた。更には塩の代わりにスパイスを使うことでどこかエスニック?な料理を次々に発案していった。

「まあ、卵焼きや蒸留が流行った時点であれかー。」

「じじじ(卵焼きスキー)」

「ふるるるる(ブランデーはいいものだ。)」

 昼食にハーブと薬草を使った鶏肉の香草焼きのサンドイッチを食べているとき、私はまだこの状況に対して冷静だった。それこそ

「お、お嬢。このパンすごいですね、こんなふかふかのパン初めてです。」

「そうだねー、王子様に感謝しないとだねー。」

 リットン君や動物さん達が感動しているのは肉の味よりもパンの柔らかさだった。それもそのはず、昨日のお礼にとスラート王子の部下からパンのタネを分けてもらって作った発酵パンだからだ。

 いわゆる白パンと言われるパンの製法は、ある種の奥義とされておりパン種は、一部の上流階級で高値で取引されているすごいものだ。

 まあ、これも作ろうと思えば作れたんだけどねー。米がしっかりと存在するからそちらまで気が回らなかった。酒が作れる時点で、酵母も確保していたわけだし。

「お嬢様は、やはりすごいです。これも薬師の知恵というやつですか?」

「どうかな、視点としては間違ってないけど。」

 カレーにしろ、蒸留にしろ薬学にしろ、ちょっとした気づきであり、私はそれを指摘したにすぎない。

「リットン君も常に疑問を持ち続けることだよ。」

「は、はあ。難しいです。」

 偉そうに言ってみるが、リットン君の反応がこの世界では一般的で、私は異端と言える。

 魔法という便利ツールに豊かな自然、ご都合主義なこの世界は衣食住が満たされてしまっている。だからこそ、社会全体を通して何かに執着して追求するという発想が希薄なのだ。

 誰に言っても信じてもらえないだろうが、私には前世の知識というチートがある。だからこそ気づけた。違和感。さながら鎖国中の日本人や中世の魔女狩りである。

 衣食住が満たされているからこそ、今ある安定を壊したくなくて未知へと踏み出すことができない。安全が保証されれば取り入れれるし、自分の立場が怪しくなると思えば攻撃的になる。職場にパソコンが導入され電子化が進んでいたときもそうだ。わからない、壊したらまずいと新人の私にセットアップとか研修を任せ、なんかうまくいきそうな気配になってから自分たちも使うと言い出したベテランども・・・。

 

 そんなどうでもいい考えに思考を巡らせながら今日も元気に、学校の菜園を物色していた私は迂闊だったと言える。

「お前は、魔女なのか、それとも聖女か?」

 その言葉が降ってきたときは、空間が隔離されていた。

「魔法?」

 真っ先に感じた違和感は、ハチさんたちがいないこと。メイナ様やリットン君のところに行っていることはあっても菜園を歩くときは、誰かしらがついてくるのに、気づいたら、誰もいない。

「魔法といえば、魔法だな。スキルと言ったものだ。」

「スキル・・・ですか。」

 「魔法」が努力次第では何とでもなる素敵パワーだとしたら、「スキル」は個人の才能や種族的な特性に依存する不思議パワーである。ゲームでは各キャラにスキルが存在していた。例えばスラート王子には「王のカリスマ」というスキルを持っており、発動すると周囲の敵ユニットにデバフを掛けるなどだ。

 と現実逃避をしている場合ではない。動物さん達は気まぐれと思えなくもないが、畑にいたはずの他の学生や、あのダメエルフな先生の気配がしないのはおかしい。

「スキル「障壁」。どうしても話をしたくてな。危害を加えるつもりはないから安心してくれ。今はまだ。」

 いかにもなスキル名「障壁」。エルフ特有のとんがり耳と整いすぎて人形のような能面。

「やべえ。」

 堂々とスキルを使って人をさらう行動力に、なんとなく話を聞かない雰囲気。それを見て私の記憶は即座に、ある危険人物を連想させた。

 ボルド・カークス。イケメンエルフと看板を背負っていたが、御年うん百歳とい定番のイケメン詐欺な爺様である。その年齢やエルフの特性もあり、加入時点からどのステータスも高い万能型。器用貧乏とも言われるが、魔法も近接もこなせるだけでなく内政能力もくそ高いので、どこにでも使える便利キャラ。

 味方にすれば便利かつ頼りになるキャラクターなのだけれど、彼の場合は、ある特殊な条件でフラグを立てて上で彼との会話イベントでランダムな条件をクリアしないと即座に敵対するという地雷キャラでもある。

(いや、何の準備もなし、強制心理テストはあかんって。)

 そう「強制心理テスト」、ゲーム制作陣が無駄に力を込めたランダム性とテキストによるボルトとの出会いイベントは、ゲームの鬼門の一つであった。


 おかしい、このイケメンエルフは、攻略以前に出現のフラグ管理がくそ大変だったはず。攻略サイトを見ながらプレイして、直前にセーブをしてなんどもリセットを繰り返す。あれだよ何百種類もいるモンスターを掴めるゲームの色違い、あれくらいにはレアだったはずなんだけど。


 あと、なんで片手にサンドイッチをもっているのかな?カレーの匂いがぷんぷんしている。

「カレーの女神よ、アナタを見極めたい。」

 うん、なんなんだ、今のは?

 スラート王子 王道王子

 ガルーダ王子 ひねくれ王子

 カイル先輩  ノウキン

 マーチン・ロゴス  インテリ眼鏡

 リットン君   ワンコ系幼馴染

 プレール・マギナ 魔法系ヒーロー

          エルフレア

なんだかんだ、ヒーローは出てくる。

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