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この花は咲かないが、薬にはなる。  作者: sirosugi
ストラ 12歳 学園編

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63 魔法勝負を挑まれる。

 出る杭は打たれる?能ある鷹は爪を隠す? 

 そんな日常の一幕です。

 この世界は、ゲームの世界?いや、ゲームに似た世界という認識だ。出会った人物や世界観はゲームのそれをなぞっているが、まず主人公の私が、ヒロインしていない。幼少期から意欲的に色々やらかしてフラグをへし折っているし、趣味が貯金で将来の夢が田舎で引き篭もりで快適なスローライフ。まあ金儲け以上に設備投資しているからトントンぐらいだけど・・・。

 ともあれ主人公でヒロインな私と、ヒロイン以上にヒロインで聖女な悪役令嬢ことメイナ様のおかげもあってすでにゲームのシナリオとはだいぶ違う世界になっている。なっているのすが・・・

「ストラ・ハッサム。お前に決闘を挑む。」

 おお、なつかしい。

「え、いやですけど。」

「はっ?」

 ゲームで何度か聞くセリフとやりとり、ときどき不意打ちのようにぶっこんでくるだよねーこの世界。

「ふ、ふざけるな。貴様に貴族としてのプライドはないのか?」

 そんな感じに激高していうのは、オレンジ色の髪を逆立てて起こるイケメン(?)だった。

 プレール・マギナ、特徴的な髪色とイケメンフェイス、やや釣り目がちな目つきが特徴的なキャラデザは攻略対象に共通している特徴。(キャラデザの担当者が一緒なだけ」)坊主にしたら区別がつかないんじゃないかって不安になるけど、逆にそれで区別ができるんだよね。

 じゃなくて、このプレール君は、魔法使い系の攻略対象で、入学試験のミニゲームで魔法コースを選択できるとフラグが立つ。魔法に関して自信とプライドの高い彼は、成績上位な主人公に嫉妬して決闘を申し込み、そこから交流を深めていく。

 彼のルートに入らない場合は、決闘を受けないか、決闘でぼこぼこにするかのどちらかである。だが、そうなると、ことあるごとに先ほどのセリフとともに決闘イベントが発生するので、プレイヤーの間では「決闘君」とか「ダメリスト」なんて言われている愛されるバカキャラである。

「いや、決闘とか意味わかんないですから。そちらこそ、魔法教室の生徒でもない一般生徒相手に決闘を挑むなんて、正気ですか?」

「うっ?」

 ああ、ゲームでこうやって突き放したかったなー。別キャラ攻略中の「決闘君」のうざさはホントあれだった。

「いやいや、騙されんぞ。精霊を連れまわし、訓練場を阿鼻叫喚にしたという新入生はお前だろ、ストラ・ハッサム。」

 うん?どういうこと?

「この学園で、精霊であるハチを連れまわすのは聖女と名高いメイナ嬢、そしてその親友であり、恩人であるストラ・ハッサムというのは、お前が入学する前から学園では有名な話だ。」

「先輩、それちょっと詳しく聞かせてもらえますか?」

 なんか知らない事態になってない?

「んん?知らないのか、メイナ嬢が何かあるごとに、自分より優秀な友人と話題に上げているのはストラ・ハッサム。それはお前のことだろ?」

「確かに、私はストラ・ハッサムです。ですが、ただの田舎者ですよ。」

「くだらん出自で人を判断する愚か者と一緒にするな。辺境伯夫人を苦しめていた難病を治療し、グレイモンキーの大発生を予期して、犠牲を出さずに殲滅したとか。」

「それは、じっちゃん、おじい様の功績ですよ。私は代理として現場にいただけです。」

「そ、そうなのか。たしかに。いやでも「薬師様の弟子」といのは事実なんだろ。」

 くっ、メイナ様、いったいどんな話をばら撒いているんですか、これでは私のひっそり日陰者な快適スクールライフが。

「それに先日、モープのド阿呆に空気弾をぶち込んでたろ。」

「はっそんなこと知りませんよ。」

 っち、見えるところにいたのか、こんな特徴的な髪色に気づかないとか馬鹿か私は・・・。

「あの魔法の手際を見て、噂やメイナ嬢の話が真実だと俺は確信した。だからこそ、優れた魔法使いであるお前に決闘を申し込む。」

「いや、私は魔法使いではないので。」

「いやいや、あれだけの技量で?」

「はい、あくまで薬師なので。」

 魔法使いというのは職業であり称号である。実戦レベルの攻撃魔法を使いこなし、特定の講習と試験を突破してもらえる免許制の職業だ。前世で言うところの運転免許証みたいなもの、だからとりあえずで資格を取ろうとする人間もいれば、私のように興味がないなら取らない人もいる。

 なお、

「なっ、それはそうだが。」

「魔法免許は学園でも取得できますが、私はそれを取る予定はありません。となると決闘をするのは。」

「いや、学園内では、安全に考慮して教員が立ち会う場合に限り魔法の使用と模擬戦は許可されているぞ。」

 っち、原作の魔法馬鹿設定はどこへ行ったんだ。

「あっちなみに、昨日の魔法に関しては気にするな。空気弾は生活魔法扱いされる場合もあるし、あくまで警告的な意味合いでの使用になっているから罪にならない。」

「そうですか。」

「ああ、細かく魔法を言い出していたらキリがないからな。よほど悪質な場合か、被害が大きい場合に限っては違うが、先日の一件はあのアホの自爆だ。本人も空気弾をぶつけられたことに気づいてないしな。」

「それは、また。」

 そもそも、何もしていない生徒にダル絡みしようとしていた件

 それがメイナ様という超VIPの知り合いだった件

 そして魔法訓練中に騒ぎを起こした件

 そこに、魔法攻撃に気づいていないという、とんでもない地雷案件。

 あの態度から察するに、魔法系に自信があったようだけど、自身に向けられた魔法に気づいていない。この事実は魔法使いを目指すなら、もう致命傷じゃね?

「いやいや、待ってください。プレール先輩。」

「うん、俺の名前を知っているのか、感心だな。」

 いや、そんな髪の色なら知っとるわー。

「今って、私の攻撃魔法を交渉材料する場面では?ばらされたくなったら戦えって。」

「いや、そんなことしてもしょうがないだろ。そもそも君に落ち度はないんだし。」

 この子、いい子だわ。

「だが、魔法を極めんとするものとして、あのような技量を見せられたなら挑まずにはいられない。そもそもメイナ嬢が、自分以上というストラ嬢の実力を知りたかっただけだし。」

 こんなキャラだったか?「決闘君」の印象が強すぎて攻略したときのシナリオとか覚えてないし。

「しかし、魔法使いでないというならば、決闘も挑めない。一体どうすれば。」

 いい子だ、しかも話せばわかるタイプのおバカだ。

「あれ、しかしオカシイ。メイナ嬢から話はつけておくと、聞いていたが?」

「うん?いえ、まだは話は聞いてないけど、恐らくは昨日の騒ぎで・・・。」

「ぐーー、許せん。あの野郎余計なことを。」

 まって、メイナ様、何を企んでいるんですか?


「あら、プレール先輩と会ったのね、あの人魔法大好きだから、私もよく絡まれたわ。」

「そうだな、俺の婚約者だというのに、なれなれしいんだ。」

「プレール先輩は、魔法を競える相手を常に探してますから、スラート様にも絡んできたのよ。」

「そうだな、だから、あいつの場合は一度は相手をしてやった方がいい。満足したら必要以上に絡んでくることはないから。」

 あとで問い合わせたら、メイナ様とスラート様にこのように話をされた。

 つまり。

「プレール先輩は、この学園の生徒の中ではトップクラスの魔法使いだわ。私は的当て勝負ではどうにかなったけど。

「いや、メイナ相手に模擬戦などさせられないだろ。万が一ケガでもしたら。」

「あら、簡単なケガなら私が治しますわ。」

「それでもな、君が傷つくかもと思うだけで僕の心は引き裂かれそうになる。」

 隙あらばいちゃつくよね、この人たち。

「というわけで、ストラ嬢。すまないとは思うが、プレールと模擬戦をしてほしい。」

「一回すれば、満足すると思うわ。」

 つまりはそういうことらしい。

「なんで?」

 私、お二人に攻撃魔法を見せたことはないけど。

「「入学試験の結果を見た限りでは問題ないから」」

 なぜ知っている?と聞くのは藪蛇となるだろうからやめておく。


 やってやろうじゃないかこの野郎。

ストラ「魔法使いの希望の星(笑)」

スラート「まあ、勝負にはなるんじゃない?」

メイナ「ストラも大変ねー。」

プレール「わくわく。」

 ストラの意思に関係なく決闘は決まっていた。


 馬鹿にしつつ努力するタイプは嫌いになれないストラちゃん。

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