61 ストラ、魔法の現状を知る。
なんやかんやあって学園生活編スタート
学園での勉強は、大学の講義に近い。入学時に自分の学びたい学問を選び、それぞれの教室で行われる授業で学び、数か月ほとに実施される試験に合格することで単位を取得する。
軍事学や魔法学などの人気講義を希望する場合や、各講義でより専門的なものを学ぶためには特定の授業の単位を得る必要がある。
一般教養学などはその最たるもので、新入生のほとんどが一般教養学を受講して、数か月から長くて1年は勉強の基礎から学んでいく。一年の時点で他の教室で学びを許されるのは、優秀さの証明である。たとえ一般教養学と並行して通うことになったとしてもだ。
まあ、レベルとしては前世の中学入学手前ぐらいの読み書きと四則演算、雑学ってレベルだけどねー。
「だから、言ったじゃん、一般教養学なんて必要なかったって。」
「そうですが。」
「君はもう少し、自分の能力を知るべきだぞ、リットン君。」
という感想がもれたのは、一般教養学の第一回目の授業を終えた直後、レベルの低さに驚いているリットン君に対してだ。
「まさか、九九の仕組みとか割り算の原理からはじまるとは、思ってなくて、あれって食材の在庫管理とか、役割分担で必須なものですよねー。」
「そうだね、一つ一つなんて数えてられないよねー。」
ハッサム村では、どんなものでも12個単位でまとめるように私が指導していた。おのずと12の倍数をともなる掛け算と、割り算については暗記レベルで教えていた。
「〇を並べた図を囲いながら数えるって。」
「理屈は最低限で、実践に勝るものはないってことだよねー。」
学園の授業は、前世の小学校でもあった九九や割り算の理論であった。3×4の意味とか、12÷3の意味だね。それを図を使って丁寧に説明している。掛け算ってさあ一応ルールがあるんだよね。
例えば、3×4は、3の塊が4つあるって意味。界王拳三番は、戦力を3倍にするという意味だ。だから文章題とかで、掛け算を逆にすると意味が変わって✖になる。数字をただ並べるだけでは無意味ということ。
まあ、そんな理屈よりも九九をいかにして覚えて、計算の習熟度を上げるか。社会に出たときに役立つのはそっちだ。計算機なんて便利なものがないこの世界において、計算ができるというのは一つのステータスであり、トムソンやその息子のリットン君はそれだけでエリートと言える。
「だからさあ、最初から経済学へ行ってダイジョブだったのに。」
「だ、だけど。僕何がいきなり。それこそお嬢だってそうじゃないですか、授業のほとんど寝てましたよね。」
「聞いてはいたよ、くそつまらなかったけど。」
ちゃんと不意うちの問題にも答えたしね。ちなみに私が一般教養学を受講したのは、リットン君へ付き合っているのと、この世界のレベルを知るためだった。まあ、お察しレベルだけど魔法というファクタのおかげで理に叶ったものとなっているというのが評価。
「あっ、お嬢、丁度魔法学の実習をしているみたいですよ。」
「へえ、今日だったけ?」
「そんなこといって、メイナ様に誘われてたじゃないですか。」
ぐっ、だんだんと賢くなって小賢しいなリットン君。
さて、私はこの世界をゲームの世界と思っている要素筆頭、魔法である。
身体を清潔で健康に保つ浄化魔法や回復魔法。
きれいな水を出したり、植物の生長を促進したりするできる生活魔法。
魔法のランタンとかコンロとかの魔道具は、前世でいうところの家電枠。
これらの魔法は、一般に普及しており、一般庶民でもなんだかんだがんばれば、使える。 ちょっとしたDIYとかパソコンとかスマホを使いこなすのと同じレベル。
電気代がかからない分コスパいいかもしれない。
魔法学とは、そういったものからより実践的で難度の高い魔法。
うん、ぶっちゃけると攻撃魔法の習熟と運用研究をする教室である。
「焼き尽くせ、ファイヤーボール。」
「切り裂け、ウインドカッター。」
校内にいくつか作れた訓練場。そこで繰り広げられていたのは、1年生たちによる魔法の実演だった。20メートルぐらい離れた場所から段々と置かれた的を次々と撃ちぬいていく。数ある訓練場の中でも子の場所は、一般生徒も見学許可されているけど。
「じじじ(しょっぼいなー。)」
「ふるるる(意味あるかあれ?)」
「え、ええっと。」
「リットン君。声にはだすなよ。」
ピンポン玉程度の火の玉が、5メートルほどの的に当たってちょっとだけ燃えて消え、その横では、的が風にゆれていた。
「命中精度は及第点だ。ここから威力を上げていくように。」
なんともしょっぱいが、まだ一年生、魔法が発動できれば上出来で、かつ狙った場所に魔法を当てられたらな合格というゆるい基準の訓練だけど、これはしょぼい。
下手したら、村の子供たちが草刈りに使っている火魔法や風魔法のほうがすごいぞ。
「じじじ(イメージがない。実戦不足)」
「ふるるるる(風を読めていいない、才能ないな。)」,
ハルちゃん、サンちゃん。ファンタジーと魔法の塊のような2人やレッテと比べるのはあんまりだよ。
それに
「すごいな、俺らと同い年なのに攻撃魔法を発動させるなんて。」
「しかもあの精度。将来は最低でも大尉クラスなんだろ、上位コース確定の。」
ひそひそと聞こえる他の学生の声を聞く限り、あんなのでもそこそこのレベルということだ。嘴を挟む気はない。
「お嬢様。これって?」
「まあ、精霊さんとの付き合いのおかげだね。
「じじじ(私たち?)」
「うん、ほら、ハルちゃんたちを見ているから、リットン君もって感じ。」
「なるほど。」
ごめんね、ごまかすよ。
これは前世のゲームでの知識とこの世界での経験からの推測でしかないので、口外する気はないこと。
この世界に置いてレベルやステータス的な概念が存在するっぽい。
ステータスオープンなんてことは出来ないし、あくまで体幹的なものでしかないけれど、日々の勉強や農作業、鍛錬などの経験が一定値を超えると急に体力とか技術が上がる。そして、そこにはある程度の法則が存在していた。スコップで何回土を掘ったとか、木の実を何個拾ったとかだ。
成長というものには、個人差があるはず、それこそいくらやっても楽器の演奏が上達しない子がいたり、初見でもどんなスポーツもそれとなくこなしてしまう子がいたりと。
ただ、一般的な技能、そして魔法に置いては、才能の差というのがほぼないと言ってもいい。
ゲームでも攻撃魔法やスキルなどは使用回数によって熟練度があがり、威力が上がった。MP的な使用制限はキャラクターによって個人差があったけど、威力の上限に関しては変わらなかった。
ようは、どれだけ魔法を使ったかで魔法の練度は上がるということだ。ただ生活魔法と違って攻撃魔法は体力や魔力の消費が激しいので、剣や農業のように気軽に鍛えられるものではない。
「じじじ(魔法はイメージと親和性)」
「ふるるる(俺らはピーキー)」
しかし、精霊さんたちが居座るほど魔法的に居心地のいいハッサム村では魔力の回復も早い。それこそ、日常生活でバンバン魔法を使い、精霊さんの魔法を見ている私や、リットン君、ハッサム村の人達の魔法レベルは、王国内でも実はかなり高い。
(生活魔法の延長でしか使ってないから、実践レベルでできるのはドワーフとかケイ兄ちゃんとかの大人組の一部で、リットン君は実戦以前の問題だからねー。)
1年生のあとから、行われる先輩たちの威力重視の派手な演出にビビっっている時点で、リットン君は実戦向きじゃないだよねー。
もちろんだが、私も鉄火場や戦場に出るつもりはないし、将来はハッサム村で悠々自適なスローライフを送る予定だし。ゲームの世界の面倒な問題関係は、この優秀な先輩たちに頑張ってもらえばいい。
「やることが派手だねー。」
「じじじ(見かけだけ)」
「ふるるる(俺らなら、全部の的を一撃で)」
「やめてねー。」
一応、デモンストレーション的な意味で、学園でも優秀な先輩たちだったはずなのに・・・
ストラ「うわー、すごい魔法学ってかっこいいなー。」
ハル「じじじ(ストラ1人で無双できそう)」
サンちゃん「ふるるるる(姐さんなら、トップ取れますねー。)」
レッテ「ぴゅうーーー(私は部屋で寝てました)」